高まる人材育成気運、大学の観光教育は新たな局面に


 立教大学のホテル講座開設に始まる日本の大学の観光分野教育は、現在、新たな局面を迎えている。05年に山口大、琉球大が観光を学べる学科を設置したのをはじめ、今年度和歌山大学は国立大学では初めて観光学部を創設。来年度には愛媛大学が観光まちづくりコースをつくる。これら地方大学の動きは、地元に密着した人材育成とその活用を狙ったものだ。その一方で、卒業生の受け入れ態勢の充実も課題となりつつある。

 愛媛大は16日、09年度に法文学部に新設する「観光まちづくりコース」の概要を発表した。観光の現場でフィールドワークやインターンシップなどの実践教育を行い、観光振興の中心となれる人材を育て、まちづくりに生かしたい考えだ。

 新設するコースは、法文学部の総合政策学科と人文学科が共同で設置、学科を超えた特別コースとした。総合政策学科には観光政策系、人文学科には観光文化系を設ける。定員は各10人。各5人をAO(アドミッション・オフィス)入試で選抜し、他の各5人は、2年次のコース選択により選ぶ。

 愛媛大は「観光は21世紀のリーディング産業となる可能性があり、地域活性化のためにも地域の基幹産業として育てることが課題」ととらえる。愛媛県の観光産業の状況を「全国的に低位な状況」(同大)とも見ており、早急に観光に携わる地域のリーダー作りを進める必要があると判断した。

 09年度新設の認可を受けた学部・学科ではこのほか、神奈川県の松蔭大学が観光文化学部を設置する予定だ。同大学は「国際観光系」「観光振興系」「ホテル・トラベル系」の3系統を学部内に設置。サービス提供施設で実務に携われる人材を育てるだけでなく、宣伝や企画の知識やスキルを持ち、イベントプランナーや各観光協会職員として、地域観光や観光振興をけん引できる人材の育成を目指す。

 同大学現代経営学部の古賀学教授は、「箱根や小田原などが近いという利点を生かしたカリキュラムづくりを行い、産官学一体となった、地域密着型の教育ができれば」と話す。

エコツーリズム絡め環境保全を学ぶ
 観光を学べる大学が増える中、切り口を変えてアピールするところもある。首都大学東京は4月、都市環境学部都市環境学科に「自然・文化ツーリズムコース」、大学院の都市環境科学研究科に「観光科学専修」を創設。地理学や生態学などの観点から観光計画や観光まちづくりを学べるようにした。

 また同コースは東京都の自然環境保全を担う人材育成・認証制度「ECO−TOPプログラム」の第1号として認定。20年度からの入学者は、指定の科目を履修することで、卒業・修了と同時にプログラム修了者として東京都に登録される。

専門性生かせる受け入れ態勢を
 就職を視野に入れた教育を進める大学もあるが、地元に密着したカリキュラムを整備する大学が増えている。学生の進路については、「観光協会の財団法人化などで、今後人材の需要は増えるのでは」(古賀教授)との見方もある。しかし、地元をフィールドに学んだ学生が即戦力として地域で「生きる」体制は、まだ整っていない。

 観光関連学部、学科の増加で競争が激しくなりつつある中、産学官が連携して学生の生かし方を真剣に考えることは、少子化による大学全入時代に大学の強力なアピールポイントとなるかもしれない。

 
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