ヘルスツーリズムなどの健康、長寿をテーマにした滞在型観光を考える「健康長寿観光フォーラム」が10日、東京都内のホテルで開かれた。国土交通省の国土施策創発調査に参加したモデル地域5市町村が主催。自治体や関係団体、企業など80人が参加、調査やモニターツアーの成果が発表された。健康と交流を軸にした新しい観光プログラムを確立するため、自治体、事業者、住民の協働による受け入れ態勢の整備が課題に挙げられたほか、需要を喚起する「健康休暇」運動の必要性が提言された。
今年度の創発調査の一環で「健康長寿社会の実現に向けた地域滞在型観光等の推進方策に関する調査」として実施された。北海道上士幌町、新潟県長岡市、長野県木島平村、広島県三原市、沖縄県宮古島市の5市町村がモデル事業としてモニターツアーなどに取り組んだ。
調査事業全体をまとめた検討委員会の佐藤博康委員長(松本大学総合経営学部観光ホスピタリティ学科長・教授)は、委員会報告で、地域活性化や健康長寿社会への貢献が期待される中で、「健康と交流をテーマとした新しい観光プログラムを通じて、旅行者と地域の間に生まれる心身の変化が重要だ」と指摘した。
医科学的根拠の捉え方、ビジネスモデルづくりなどを今後の課題として、「地域には信頼性と持続性のある取り組みが必要。自治体、事業者、住民の協働による受け皿づくりが求められる」と述べた。
さらに、健康をテーマにした地域滞在型観光の需要を喚起するために、健康休暇運動の推進を提言。企業などと連携した休暇取得制度の創設などを今後の検討テーマに挙げた。
モデル地区の取り組みでは、上士幌町について、同地区検討会の座長を務めた、北海道大学遺伝子病制御研究所の西村孝司教授が報告した。同町では今年1月、メタボリック症候群への対策などを学ぶモニターツアーを実施し、シニア層18人の参加者を集めた。
同町では自然や糠平温泉、地元の食などの地域素材を活用したツアーを実施した結果、参加者のほぼ全員が、健康、長寿に対する「意識が高まった」「関心を持つようになった」と回答した。
すでに上士幌町は、イムノロジー(免疫学)とリゾートを組み合わせた造語を用いた「イムノリゾート上士幌構想」を打ち出し、医科学的根拠に基づく受け入れ態勢を整え、「スギ花粉疎開ツアー」などを実施してきた。
西村教授は「受け入れ態勢やネットワークの整備の方向性は確認できている。健康観光へのニーズもある。しかし、参加者がなかなか集まらない。日本にはゆとりを持って健康観光を楽しむ文化が定着していない」と指摘。「国が始めるメタボ検診などを健康観光の普及、定着の契機とするべきだ」と訴えた。
モデル5地区が主催したフォーラム