旅館の活用など求める
農林水産省の食文化振興小委員会(座長、佐藤洋一郎・京都府立大特別専任教授)はこのほど、「和食文化のさらなる価値創造に向けて」と題する提言をまとめ、野上浩太郎農水相に答申した。同省は今後、文部科学省や外務省などと連携し、具体化に向けて取り組む。
農水省は、日本の食文化の海外普及や国内における和食文化の保護、継承の在り方について専門的な意見を聴くため、昨年9月に食料・農業・農村政策審議会企画部会に小委を設置、検討していた。
提言は、国内、海外向けに課題や施策の方向性を整理するとともに、新型コロナウイルス禍の影響も加味した内容となっている。
和食はユネスコの無形文化遺産に登録され、世界における日本食レストラン数も年々増加、2019年では約15万6千店ある。訪日の目的の一つに日本食を挙げる外国人旅行者も少なくない。
和食は世界から注目を集めているが、一方で食に関する価値観やライフスタイルが多様化し、食の外部化や簡便化志向が進んでいる。食文化の継承の機会も失われつつあるという。
小委は地域、家庭、学校の三つの場でどう施策を展開すべきかを議論。地域については、「『地域の力』が今後の食文化継承の鍵を握る」とし、議論の視点として「地方の旅館など、観光の力の活用と連携強化」を強調。対応方針として、地域の食文化活動を支えるネットワークの形成を求め、その一つとしてDMOの活用を挙げた。
また、政府のインバウンド目標(30年に訪日外国人旅行者数6千万人)達成のため新たな政策の方向性を検討すべきとし、(1)重点海外普及先進国の選定(2)丁寧な食文化の説明(3)インフルエンサーとの協働(4)国際会議・機関との連携強化・発信―などを示した。