観光庁検討会、DMO改善で提言

  • 2019年5月10日

 「旧来の観光団体からの看板の掛け替え」などの問題点が一部に指摘される日本版DMO。そのレベルアップはどうあるべきか。観光庁の有識者会議「世界水準のDMOのあり方に関する検討会」(座長・矢ケ崎紀子東洋大学教授)はこのほど、昨年11月から今年3月までの議論を中間報告にまとめた。全国のDMOの「底上げに向けた改善の方向性」として役割、組織、財源などについて提言した。

はじめに(略)

1 DMOを巡る地域の現状と課題(略)

2 DMO全般の底上げに向けた改善の方向性について

Ⅰ DMOの目的・役割の明確化について

○各層DMOの地域における目的・役割について、以下の点に留意し、DMO・自治体をはじめ地域の関係者全体の役割分担および取り組み内容を明確化するべき。

ⅰ DMOの目的について

▽DMOの目的は、観光で地域が稼げる仕組みづくりやオーバーツーリズム対策を含めた環境整備をすることによって地域経済を成長させ活性化させること。このためには、地方創生に貢献する農林水産業、商工業、文化・環境等の幅広い分野と連携し、地域の総合政策として取り組む必要がある。

▽今後のDMOの取り組みは、「持続可能な観光地域づくり」、閑散期対策などの需要の平準化といった「観光地域全体のマネジメント」の観点にも留意すること。

▽地域は、自治体を含む観光振興に関わる地域全体の体制に関する議論を行った上で、DMOの目的と役割を整理し明確にすること。

ⅱ DMOの役割について

▽国、JNTO、各層DMO、自治体の取り組みが重複することなく、効率的に実施されるよう、各主体の既存の取り組みで活用可能なものを最大限活用することを前提として、役割および取り組み内容を精査すること。

▽各層DMOの既存の業務について、棚卸しを行い、DMOが上記の役割分担で明確化された本来の機能を発揮できるよう、取り組みの選択と集中を行うこと。

▽各層DMOは、地域における役割分担に基づき、地域の観光資源の磨き上げや2次交通を含む交通アクセスの整備、多言語表記等の受け入れ環境の整備等の着地整備を、最優先に取り組むこと。

▽各層DMOの海外への情報発信は、上記の役割分担に基づき、DMOが着地整備の取り組みを行った上で、JNTOの海外ネットワークやデジタルマーケティング等のマーケティングツールを最大限活用し、効果的・効率的に実施すること。DMOとJNTOの連携においては、DMOは写真・動画等対外的な発信のための素材やツールの作成を行い、JNTOはそれらを活用して一元的に対外的な情報発信を行う。

※JNTOはデスティネーション・マーケティングに欠かせないデジタルマーケティングを本格的に導入しており、JNTOウェブサイトやスマホアプリ等の訪問者データを収集・蓄積し、そのデータ分析からユーザーの属性や興味関心等を的確に把握し、各種プロモーションに活用している。JNTOの活用によって、DMOは、より精度の高い分析データの提供を受けて観光地域づくりを効果的・効率的に進めていくことができる。DMOがJNTOを活用すればするほど、JNTOが有する収集・蓄積データの最大化が図られるとともに、DMOに提供される分析データの精度がさらに向上する好循環を生み出すことができる。また、ターゲット市場での認知度が十分でないDMOにとっては、観光分野ではわが国最大であるJNTOの対外的な発信力を活用することによって、少ない費用でも効果的に認知度や評価を高め、より多くの潜在的訪問者にアピールすることができる。さらに、海外のユーザー視点からも、統一的なナショナルブランドの下でシームレスで混乱を生じさせないようなメッセージを発信することが重要である。

▽各層DMOによる海外への現地訪問・直接接触等に際してのJNTOとの連携については、例えば、事前に、海外事務所を各地に有し、訪問先に対する高い知見を有するJNTOから訪問先の状況を踏まえた適切な助言(適切なアプローチ方法とタイミング、複数の自治体・DMOからの往訪が集中する場合の交通整理等)を受けるなど、JNTOを最大限活用すること。

▽データ分析・調査に関しては、JNTOの機能や成果を最大限活用した上で、来訪者の属性・来訪理由等の現状評価、雇用・収入等の経済貢献度に関する評価等を行うこと。

▽2次交通を含む交通アクセスの整備については、増大する個人旅行形態の訪日旅行者の地方への誘客、滞在に必要不可欠な要素であることから、旅行者目線の観点から地域の関係者とも協働で取り組みを強化すること。

▽災害等の非常時の訪日外国人旅行者の安全・安心対策を含め、「旅ナカ」の旅行者への情報発信を強化すること。

▽地域の各関係者が協働して観光地域づくりの取り組みを進めるに当たって、その司令塔となるDMOには、協働の現場を効率的に動かしていくため、取り組みの企画立案、関係者への合意形成、資金等の必要な資源調達、予算執行管理、スケジュール管理、PDCAサイクルの実施等のプロジェクト・マネジメント機能が求められること。

○上記の点を踏まえ、DMOの形成・確立を通して実現しようとする目標、DMO・自治体をはじめ地域の関係者全体の役割分担・取り組み内容について改めて確認された際には、その内容を自治体が策定する観光振興計画等に反映させるべき。

○国は、各地域における役割分担の明確化が促進されるよう、上記の点に留意して国、JNTO、各層DMO、自治体の役割分担に関する方向性を示すべき。

Ⅱ DMOの組織・財源・人材(人材育成)のあり方について

○DMOの意思決定は、地域の関係者が中心となって行うこと。その観点から、DMOの組織(意思決定の仕組み)には、文化財、国立公園、農泊、アクティビティー、農林水産業、商工業の関係者等、デスティネーションの関係者の主体的な参画を確保するべき。また、地域連携・地域DMOにおいては、DMOの役員の過半以上が地域の関係者で占められていることが望ましい。

○DMOのガバナンスについて、行政の下請けとしてではなく、DMO自身が主体的かつ自立的に運営できるよう制度的な裏付けについても検討がなされるべき。

○地域は、DMOの財源について、安定的かつ多様な財源の確保を目指すべき。その観点から、国が一律の方針を示すのではなく、地域の実情を踏まえ、条例による特定財源(宿泊税、入湯税等)の確保を目指すことが望ましい。DMOは、受益者負担の観点等から各財源の特性を踏まえ、それらの地域の多様な財源をマネジメントし、活用することが重要。

○出向職員を中心とした組織体制から脱却し、組織全体の専門性を維持・向上することが可能となるよう、プロパー職員の確保・育成と、即戦力となる外部人材の登用の両面について取り組みを実施するべき。その際、マネジメントスキルを客観的に測定する外部指標の活用等も検討すべき。

○国は、DMOにおける人材確保・育成を支援するため、国際観光旅客税の活用も視野に入れつつ、人材育成プログラムの創設、人材採用バンクの活用等を検討するべき。

Ⅲ 上記方針の周知等について

○国は、1・2に記載された方針を踏まえ、全ての地域やDMOにとって分かりやすい表現に留意したガイドラインを策定し、周知徹底を図るとともに、2・Ⅰ・ⅱにある各層DMOの取り組みにJNTOが対応できるような環境整備を進めるべき。

○DMO間の横の連携を高め、地域で抱える課題の共有・優良事例の横展開等を図るため、国は、全国的な研修会や会議の開催等について検討を行うべき。

3 世界水準のDMOに関する次年度の具体的検討の方向性について

Ⅰ 世界水準のDMOに関する基準について

○「DMO全般の底上げに向けた改善の方向性」や海外の事例を踏まえた内容にするべき。

○インバウンドの誘客に対応した先駆的なDMOであることを前提として、全国一律の定量的な基準ではなく、地域の特色やターゲット等に応じた柔軟な選定が可能なものとするべき。

○「持続可能な観光地域づくり」の観点からは、GTSC―D(※)等の国際基準も参考にしながら、地域としての具体的な取り組み姿勢を明確にすべき。

※「グローバルサステイナブルツーリズム協議会(GSTC)」が策定した基準「GSTC―D=Global Sustainable Tourism Criteria for Destination」

Ⅱ 世界水準のDMOの選定プロセスについて

○世界水準のDMOは、第三者である有識者によって選定されることとし、世界水準のDMOへ選定された後の取り組みについても、当初の書面審査後は地域任せとするだけではなく、有識者委員による継続的な取り組みのモニタリングを行う等により国と有識者によって継続的にフォローアップし、国と地域が一体となってPDCAサイクルを回していくべき。

 4 次年度以降の取り組みについて(略)

〈2019年3月29日〉

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