観光庁は、2019年度当初予算案に宿泊産業の振興に関係する施策を盛り込んだ。生産性向上や人材確保・育成、インバウンドやバリアフリーへの対応などに予算を計上した。
観光産業の生産性向上推進事業9900万円
宿泊施設の生産性向上推進事業と、AI(人工知能)などの導入による旅行・宿泊サービスの高度化事業の2種のモデル事業を実施し、優良事例を業界全体に普及する。
宿泊施設の生産性向上推進事業では、経営者のスキルアップや意識改革のためのワークショップを実施して個々の施設の生産性向上を支援する。また、複数の宿泊施設による社員の共同活用や滞在型体験プログラムの共同開発などのモデル事業を実施する。
AIなどの導入による旅行・宿泊サービスの高度化事業では、AIツールなどの活用でSNSやビッグデータなどを分析し、旅行者、宿泊者のニーズを把握する。国内の隠れた観光資源の発掘、高品質なサービスの開発や適正価格での提供などの在り方を検証するモデル事業を行う。
地域の観光産業を担う人材の育成・確保1億4400万円
政府が掲げる「観光先進国」の実現を目指し、観光産業を基幹産業とするための人材を育成、確保する。
新たな在留資格の創設などで宿泊業への就労拡大が見込まれる外国人材に関しては、受け入れ環境の整備のための調査やセミナーを実施するほか、外国人材と受け入れ宿泊施設の双方に必要な制度や教材に関する情報を発信するホームページを作成する。
宿泊業で女性やシニアに活躍してもらうためのモデル事業も実施する。採用に向けた旅館就業体験、働きやすいシフト制の導入などに地域で一体的に取り組む。
この他に観光産業の人材育成に向けて、複数の大学で社会人を対象とした教育プログラムなどを実施する。
訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業54億7400万円の一部
宿泊施設のインバウンド対応、バリアフリー対応を支援する。インバウンド対応では、Wi―Fiや決済端末の整備、館内表示や自社サイトの多言語化、ムスリム対応マニュアルの作成などが支援対象。バリアフリー対応では、手すりの設置、段差解消、トイレの改修などを支援する。
ユニバーサルツーリズム促進事業1600万円
複数地域の観光案内所で宿泊施設のバリアフリー情報発信のための相談窓口を開設する実証事業を行う。モデル地域を選定し、バリアフリー情報をデータベース化し、外国語を含めた情報を提供する。事業の成果を全国に普及する。
健全な民泊サービスの普及1億9300万円
住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊の届け出などに必要な民泊制度運営システム、問い合わせや苦情に対応するコールセンターを引き続き運営するとともに、違法民泊を排除するためのシステムを構築する。
違法民泊を排除するためのシステムのイメージは、民泊新法に無登録の海外仲介サイトに掲載されている物件情報を収集し、違法性が疑われる物件を抽出、一覧化して指導につなげる。19年度にシステムの設計、開発、テスト、20年度の運用開始を目指す。