観光庁、旅館再生へ枠組み提示

  • 2020年8月19日

地域に投資呼び込む

 投資の停滞、施設の老朽化、サービス・客単価の低下という「負のスパイラル」に陥った旅館をいかに再生するか―。観光庁はこのほど、地域における旅館の面的な再生、旅館産業の新陳代謝を促進する施策について報告書をまとめた。有識者などを含めた検討会で、債務の整理、所有と経営の分離、地域全体の生産性向上などの課題を議論。経営難にある複数の旅館を一括賃借するプラットフォーム(PF)を創設し、リノベーションを行った上で、地域の有力旅館などに転貸して運営を任せるなど、地域の旅館に投資を呼び込む枠組みを提示した。

 報告書をまとめたのは、観光庁が設置した「旅館への投資の活性化による『負のスパイラルの解消』に向けた支援のあり方に関する分科会」。東京女子大教授の矢ケ崎紀子氏を座長に、金融機関、旅館業、自治体、関係省庁から委員を集め、2020年5~6月に3回にわたる会合で議論した。

 宿泊施設の「負のスパイラル」は、政府の観光戦略実行推進会議の中で指摘された課題。旅館の一部は、投資の停滞やマーケティングの欠如で経営が厳しく、さらに新型コロナウイルスの影響が懸念される。個々の事業者の問題にとどまらず、地域経済へも影響が及ぶことから、地域で再生を後押しする仕組みが必要と指摘されている。

 報告書について観光庁は、「地域の中心となる旅館が、経営困難な旅館群をリードし、地域全体に投資を呼び込むことが地域旅館の再編、生産性向上には重要。今後、関係機関と連携し、地域旅館へのさらなる支援策を検討していく」としている。

 報告書では次のような枠組みが提示された。

■旅館統合PF

 地域の旅館産業の新陳代謝が停滞する要因の一つに、多額の債務が複数の金融機関に分散し、債務の解消が難しいことが挙げられる。過大債務の状況では新規資金の投入や新規事業者の参入が滞る。そこで金融調整機能を有する再生支援協議会などの支援、協力の下、複数の旅館を対象として所有と経営の分離を促す「地域旅館統合プラットフォーム(統合PF)」を創設する。

 (1)旅館群の一括借上げ

 生産性向上、高付加価値化への新規資金の投入、事業者による新規参入がしやすい環境を整備するため、事業承継・廃業予定の旅館群について、統合PFとの連携の下、再生支援協議会などが事業計画を策定するとともに、債務や金融機関の利害関係などを調整し、旅館群の不動産を統合PFが一括して賃借する。

 (2)所有と経営の分離

 事業計画の下、統合PFが金融機関やファンドによる投融資を原資としてリノベーションを行った上で、地域全体の発展をけん引する有力旅館や新規参入事業者に対し、当該不動産を転貸する。リノベーションは転貸先と連携して取り組む。

 (3)地域有力旅館などによる旅館群の運営

 地域の有力旅館や新規参入事業者などは、行政による補助金などの支援策、金融機関による融資を原資に、生産性向上、高付加価値化を進め、当該旅館群を運営する。運営では、地域の人材確保の観点も踏まえ、事業承継・廃業予定の旅館群の経営者の処遇や従業員の雇用の維持にも留意する。

■共通機能PF

 共同仕入れなど地域の旅館に共通する機能を一体的に担う「地域旅館共通機能プラットフォーム(共通機能PF)」を統合PFの内部、または別会社として立ち上げる。地域全体の旅館産業の業務効率化を推進し、生産性向上、高付加価値化につながる事業を担う。

 共通機能PFが担う事業は、(1)共同仕入れ・搬入(食材、アメニティ、リネン・クリーニングなど)(2)セントラルキッチン・セントラルダイニング(3)共同労務管理(人材共通化)(4)共同マーケティング・集客(5)2次交通の確保(6)その他(研修や内部資格制度、子育て支援、外国人労働者の受け入れなど)。

■支援制度の充実

 地域旅館の再生を推進するため、公的支援機関などが中心となり、モデルプロジェクトを立ち上げるとともに、その課題や成果を踏まえ、枠組みの改善を図りつつ、他地域に普及していく。マーケティングの欠如などに伴う経営難に加え、新型コロナの影響を受ける中、旅館の生産性向上、高付加価値化に向けて、官民協働で支援制度を充実させる必要がある。

 〈統合PFへの支援制度〉

 (1)観光遺産産業化ファンド=内閣府、観光庁などとの連携で、地域経済活性化支援機構が設立した「観光遺産産業化ファンド」を活用し、新型コロナ拡大後の新たな観光スタイルに対応した地域旅館産業のモデルづくりを進める。

 (2)中小企業庁の支援制度=中小企業庁の「経営資源引継ぎ補助金」を活用し、旅館統合などによる地域旅館再生に向けた取り組みを促進する。また、中小企業庁が所管する「中小企業経営力強化支援ファンド」をはじめ、地域旅館関係事業者が利用しやすく、地域旅館再生に有効な各ファンドの活用を促す。

 (3)観光産業等生産性向上資金=日本政策金融公庫の融資制度である「観光産業等生産性向上資金」は、現在はインバウンド対応の融資制度だが、地域旅館の活性化に当たっては、国内客の獲得にも留意すべき。新型コロナで疲弊した旅館の現状を踏まえ、政策金融による支援機能の強化として制度を拡充し、地域旅館産業向けの融資制度を充実させる。

 (4)新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金=3密を避けた新しい旅行スタイルに対応するため、施設改修を行う宿泊事業者に対し、自治体による「新型コロナウイルス感染症対応地方創生交付金」を活用した支援を充実させる。

 〈地域有力旅館などへの支援制度〉

 (1)観光遺産産業化ファンド

 (2)観光庁の支援制度=観光庁の既存の補助制度、「宿泊施設基本的ストレスフリー環境整備事業」「宿泊施設バリアフリー化促進事業」「宿泊施設アドバイザー派遣事業」の活用を促すとともに、事業者ニーズに即した形で制度を拡充する。

 (3)新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金

 (4)中小企業等経営強化法の事業分野別指針の改正=中小企業等経営強化法に基づく事業分野別指針を改正し、地域旅館が旅館統合などを通じた生産性向上、高付加価値化を図る際の支援を強化し、地域旅館の再生を促す。

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