
そらの郷(徳島県)は教育民泊を通じて観光の受益を地域に波及させている。写真は、世界農業遺産に登録された傾斜地農耕システムの体験
これからの観光の成長の鍵を握るのが、地域の司令塔である観光地域づくり法人(DMO)。地域の稼ぐ力を引き出し、住民の暮らしを豊かにする持続可能な地域経営の視点が求められている。観光庁は、地域経営のヒントや先進事例を掲載した「DMOによる観光地経営ガイドブック」を公表した。観光による受益を地域全体に波及させる仕組み、旅行者と地域住民の間に好循環を生み出す持続可能な観光地域づくりなど、掲載事例から取り組みの一部を紹介する。
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観光庁はこれまでにもDMOの運営に関して、「『DMO』の形成・確立に係る手引き」や「観光地域づくり法人(DMO)による観光地域マーケティングガイドブック」などを作成してきたが、コロナ禍を経た観光に対する世界的な意識の変化、観光地域マネジメントの潮流を踏まえ、有識者の提言や国内のDMOに対する調査を基に、地域経営に関する新たなガイドブックを作成した。
■受益の経済波及
ガイドブックは、「観光による受益を広く地域に波及させる取り組み」について一つの章を割いている。人口減少や地場産業の停滞など地域の課題を踏まえ、「『住んでよし、訪れてよし』の観光地域づくりの実現には、観光による受益を地域内の多様な事業者、業種に波及させることが重要」と指摘している。
観光庁が2023年に国内のDMOを対象に実施したアンケート調査の結果では、多様な事業者・業種への観光による受益の波及について、「対象とする事業者の範囲設定が困難」28%、「波及を生み出すための方法が分からない」20%、「観光関連事業者以外の事業者を把握できない」17%―などの課題が挙がった。
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