群馬県観光物産国際協会 専務理事(改革担当) 江利川宗光氏に聞く


江利川専務理事

群馬「観光改革」への挑戦

内部を改革し「自律型組織」に 群馬らしい「GDMO」を確立

 ――7月1日に専務理事に就任したがきっかけは。

 「以前は日本航空(JAL)グループに所属し、最後にジャルパック(前代表取締役社長)で旅行業に携わっていたが、JAL卒業後の進むべき道として『地域創生』をキーワードにしたいと考えていた。日頃から、えちごトキめき鉄道の鳥塚亮社長や、元TBSプロデューサーで富山県氷見市の篠田伸二副市長、跡見学園女子大学の篠原靖准教授といった親父仲間と地域の今後について意見を交わし、関心も持っていた。そのような中、ふるさとである群馬県から群馬の観光改革への依頼の声が掛かった。依頼を受ける際には、山本一太知事からも群馬の観光の改革に向けて熱いエールをいただいた」

 ――現在の組織の業務をどう見ているか。

 「今は県から依頼された業務を遂行することが中心となっているが、協会らしさがまだ足りないと感じる。自律ある動きをしながら、県の戦略的パートナーとして、観光・物産・多文化共生等を通じ県の発展に寄与していかなければならない」

 ――最初に取り組むことは。

 「ビジネスモデルや事業領域を再構築する。利益追求型の組織ではないが、自律型組織へと変えていく。まずは、実現に向けて内部改革に取り組む。組織は、過去に五つの団体が一つとなった経緯もあり、縦割りとなる部分も多い。理想形は短期間で実現達成できるとは思っていないが、今年度は組織の内部を見直し、再構築への土台を築くことに注力する」

 ――外部に向けた活動はどうするのか。

 「群馬に43年ぶりに戻ったが、高校時代の友人に協会の名前を尋ねても知らないと答える人が多い。地道に行う仕事も大切だが、県民や県外の人に活動を認知、評価してもらうことも大事だ。そのために発信力も強化していく」

 ――在籍していたJALグループとの連携は。

 「インバウンド再開も見据え、JALに限らずANAやJRなど交通事業者との連携は必須だ。彼らからの提案を待つだけでなく、能動的に提案していく」

 ――インバウンドへの考え方は。

 「前にブラジルや中国に住んでいたことがある。これらの面積が大きな国から見れば、ゲートウェイとなる羽田や成田から群馬までの距離は何でもない。また、これまでの経験からも、海や空港がないことは必ずしもハンディにならない。外国人に認められる素材、適切な発信、受け入れ環境整備が大切であり、これを進めることが最終的には経済効果につながる。県はこれまでは東アジアとの関係性が強かったが、インバウンド再訪期に向けては、リトリートといった長期滞在型を強化する上で、欧米豪も視野に入れて働きかけを進めていきたい。誘客拡大に向けては、例えば、沖縄と群馬を結ぶ『超広域連携』という考え方もある。JALやANAの国際線で人流を生み、沖縄では海、群馬ではスキーや温泉を楽しんでもらう。欧米人から見れば、沖縄から群馬への移動はわずかな時間と距離にしか過ぎない。これはインバウンドだけでなく、ふだんから沖縄と群馬の県民が相互に交流するきっかけにもなるなど、国内対策にもつながる」

 ――群馬の魅力とは。

 「日本全国で海なし県はわずか8県。だが、群馬は広大な土地を持ち、多様な地域がある。観光としては温泉があり、山岳、高原、歴史もある。東京から新幹線でわずか1時間ちょっとで大自然を堪能できる。また、酪農をはじめ食の宝庫でもある。さらには、大泉町のように国際的で多文化共生モデルの町もある。このような魅力をグレードアップしながら、来訪者に高付加価値の旅を楽しんでもらえるようにしていく」

 ――今後の協会の運営について。

 「当面は内部改革への注力を進める。その中で、職員は協会で何を実現したいか、組織の5、10年後のビジョンについても明確にしていきたい。JALが経営破綻した際、再建に尽力された稲盛和夫さんからわれわれはそれらを問われた。職員が本気で協会を愛し、県、県民に貢献するという自己実現を達成するためには、全員の心を一つにするビジョンを自ら描かなければならない。事業運営においても、効率性の高い仕事、数字や結果への意識、データを駆使したマーケティング、人材育成、人事制度の整備など、やるべきことは多々ある」

 ――目指す組織の姿は。

 「群馬らしい地域づくり法人として、グローカル、グローイングアップ(成長)、ゴーファースト(率先)、ゴール(目標)指向、群馬オリジナルの五つのGを備えるGDMO(群馬モデルDMO)を確立したい。山本知事は、自ら考え、新しい領域で動きだす力を持つ人『始動人』を掲げている。われわれも、群馬オリジナルで勝負していく」

 ――最後に、個人が目指すものを伺いたい。

 「愛読書に群馬にゆかりのある内村鑑三さんの名著『後世への最大遺物』がある。限られた人生の時間を生きる中で、後世に何を残せるか。60歳を過ぎた私でも、故郷のため愚直に汗を流し、若い人に『こんな生き方もある』ということを伝えられればと思う。今はやりがいに満ちている」

えりかわ・むねみつ=群馬県出身。東京外国語大学卒、1985年日本航空入社。執行役員人事本部長、執行役員中国地区総代表など歴任。2018年6月からジャルパック代表取締役社長に就任。2022年7月から現職。

【聞き手・長木利通】

 
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