
ふるさと回帰支援センター理事長 高橋公氏
これまで20年間にわたり移住相談の窓口となり、移住希望者と地域とをつないできたふるさと回帰支援センター。地域活性化の機運が高まり、移住という選択肢が身近になる中、移住を巡る状況にどのような変化が起こっているのか。支援センターの高橋理事長に聞いた。
――2年連続で相談者が過去最高となった。相談者の特徴などに変化は出ているか。
2022年(1~12月)相談件数は5万2312件であり、過去最高であった前年を上回った。移住の広がりが全国化したことの現れだと思う。
相談者の年齢は、40歳代以下で全体の7割を占める。こうした傾向に大きな変化はない。
一方、移住希望地については「地方都市」(64.9%→73.6%)と「農村」(19.7%→23.8%)を希望する人が前年よりも増え、「その他(希望地未定)」(11.4%↓3.8%)が減っている。また、移住時期が「今すぐ(1年未満)」(31.0%→36.1%)が増えた。
つまり、22年は子育て世代を中心に本気度の高い相談者が増えたということだ。
ただ、今年に入り逆に希望が明確ではない「漠然相談」が増える傾向が出てきた。今年1~3月の漠然相談を前年の4~12月で比べると1.8倍に増加している。コロナ禍が落ち着きつつある中、漠然と移住を考えている人がセンターを訪れ始めている。地方移住が特別なことではなくなり、住生活の選択肢の一つとして認知され、その底辺が広がりつつあるということだと思う。
――地域活性化の動きが加速しているが、自治体の取り組みに変化を感じているか。
移住への関心が高まる中、しっかりと取り組みを進める自治体と、そうではない自治体の二極化が進んでいると感じている。
支援センターでは毎年、移住希望地ランキングを公表しているが、取り組みがしっかりしている自治体ほど上位に入っている。22年の窓口相談者で1位となった静岡県は対面を基本にオンラインも併用しながら、市町村と連携してフェアやセミナー、支援センター相談員と自治体担当者による窓口相談会などを数多く開催した。また、セミナー参加者で1位となった広島県は窓口での相談内容や傾向を把握し、移住希望者のニーズに即したセミナーを県庁担当者自らが企画し、年間30回実施した。
直近の5月の相談状況をみると、複数の県で過去最高の相談件数となった。北海道、宮城県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県、和歌山県、広島県、熊本県であり、これらは取り組みに力を入れている自治体だ。
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