帝国データバンクはこのほど、昨年4月に発生した熊本地震後の被災地企業の景況感の変化と倒産動向調査を行った。地震直後の景況感は大きく悪化したものの、その後急速に回復。金融機関の積極的な金融支援や「九州ふっこう割」が企業活動の支えになったと同社。熊本地震関連倒産は12件判明している。
地震後の景気DI(0~100、50が判断の分かれ目)は、昨年5月は熊本県が36・8、大分県が37・8と、前月からそれぞれ6・8ポイント、2・2ポイント低下した。
ただ、その後は急速に回復。熊本県では6月が40・2、7月が48・2、8月が50・9。大分県も6月が40・0、7月が40・8、8月が43・0と、回復を続けている。
景気DIの都道府県別順位を見ると、昨年5月は熊本県が46位、大分県は42位と、前月の13位、35位から大きく落ち込んだ。ただ、翌6月は熊本県が25位、大分県が27位と上昇。7月以降は熊本県が3カ月連続で3位、6カ月連続で2位と、好調を維持している。
被災した中小企業の施設の復旧・整備、修繕に対する補助制度「グループ補助金」、「九州ふっこう割」による観光業へのサポート、日本銀行による貸し付け総額3千億円規模の「被災地金融機関支援オペ」などの支援策が功を奏した形だ。
被災直後は「熊本地震でキャンセルが続出している」(旅館、大分県)、「熊本地震にて手持ち工事が中断している」(土木建築サービス、熊本県)などの回答があった。ただその後は「インバウンド効果」(旅館、大分県)、「熊本地震の影響により建築業や土木業が忙しく、機械関係の燃料配達が多くなっている」(ガソリンスタンド、熊本県)などの声が上がった。
熊本地震を要因とする倒産は今年3月までに12件判明。地域別では熊本県が7件、鹿児島県が2件、群馬県、愛知県、長崎県が各1件。旅館「ホテル東洋館」(別会社で営業継続中)を運営していた東洋館(長崎県)は、熊本地震で利用客が減少、「九州ふっこう割」で一時的に回復を見せたものの、再建の見通しが立たなくなったと負債37億円で破産した。