訪日外国人向けの免税制度が改正され、1日からすべての品目が消費税免税の対象になった。都市部や全国チェーンの商業施設が免税への対応を強化する中、特産品などを販売する地方の事業者にも免税店に申請する動きが広がり、温泉地の旅館にも館内の売店で許可を取ったところがある。制度改正を外国人の誘客、消費の拡大に生かし、地方経済を活性化させることが期待される。
免税の対象品目は、家電製品やバッグなどに限られていたが、アジアの旅行者に人気の菓子類などをはじめ全品目が対象になった。免税店は今年4月1日時点で全国に5777店舗あるが、東京や大阪などの都市部に集中。地方への店舗拡大が課題となっている。
免税店が7店舗しかなかった和歌山県は、事業者向けの制度説明会を開催、個別訪問も実施して申請を支援した。観光交流課の調べでは、9月29日までに県内で新たに38店舗が免税店の許可を受けた。多くは地元の企業で物産センターや道の駅、菓子の製造小売業など。さらに14店舗が申請中という。
免税店の許可を取った事業者には旅館も。白浜町の旅館、紀州・白浜温泉むさしで、同社の沼田久博社長は「町の商工会が地域を挙げた申請を呼びかけてきた。当館の売店でも地元の菓子類を多く扱っており、許可を取った。外国人旅行者の受け入れに生かし、地元の特産品の販売を伸ばしたい」と話す。
温泉地の旅館が免税店に申請する試みは他の地域にも見られる。栃木県内の旅館で第1号となったのが、日光市・鬼怒川温泉の鬼怒川グランドホテル夢の季。地酒や地元の食品などを販売する館内の売店で免税の対応をスタートさせた。
夢の季の波木恵美社長は「温泉地や旅館業界に対応が広がれば、海外にアピールできる。申請はマニュアルなどを使えば難しくない。事務手続きや外貨両替などの課題はあるが、地域や事業者ごとに対応が違うと受け入れに影響するので、関係者を挙げて取り組む必要がある」と指摘する。
政府では地方に免税店を増やそうと、観光庁や経済産業省などが全国で制度改正の説明会を開催。地方自治体も独自に説明会を開催するなど、地域の事業者に免税店の申請を促してきた。政府は2020年に向けて免税店を1万店舗に増やす目標を掲げている。
免税制度には、さらに改正の動きがある。観光庁などは来年度の税制改正に向け、免税店が免税の事務手続きを第三者に委託できるように要望。テナント方式の集合商業施設、商店街などの免税店が個々に事務手続きを行わなくても、委託した窓口でまとめて対応できるようにし、中小事業者の事務負担を軽減したい考えだ。