訪日実証事業を準備
世界的なコロナ禍の影響を踏まえ、東京オリンピック・パラリンピック大会における海外からの一般観客の受け入れ断念が決まった。国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)、東京都、東京2020組織委員会、国の五者協議で3月20日に決定した。訪日を見込んでいた観光関連産業への影響は大きく、インバウンドの回復には痛手だが、観光庁では、海外観客の有無にかかわらず日本の魅力を発信する好機にしたい考えだ。
五者の協議では、国内外の感染状況は変異株の出現などで厳しい状況が続いており、国際的な往来についても日本を含めて大幅に制限されている状況にあると指摘。現状において、今年夏に海外から日本への自由な入国を保証することは困難と判断して、海外からの一般観客の受け入れ断念が決定された。
受け入れ断念の決定に先立つ19日の会見で観光庁の蒲生篤実長官は、「海外の観客の受け入れいかんにかかわらず、日本各地の魅力を海外にPRする機会として利用していく」との考えを示した。ウェブサイトなどを通じて日本各地の観光情報、魅力を紹介するプロモーション動画を発信。将来の訪日旅行につながるよう取り組む。
海外観客の受け入れは見送られたが、観光庁では、インバウンドの段階的な再開に向け、2020年度第3次補正予算を活用した小規模分散型パッケージツアーの実証事業を実施する。感染状況が落ち着いている国・地域から、ビジネストラックに準じた防疫措置を徹底した管理型の訪日ツアーを試行する方針。
蒲生長官は「実証事業は、インバウンド再開の突破口になるとの期待が大きい。実施時期は未定だが、専門家の意見を聞きながら、現在停止中のビジネストラックの状況などを踏まえ、関係省庁といろいろと検討している。有益な実証事業となるよう取り組みたい」と述べた。
観光庁の蒲生長官