日韓交流の低迷打開へ、ソウルでシンポジウム


日韓の観光関係者が一堂に会したシンポジウム(8月29日、ロッテホテルソウルで)

日韓の観光関係者が一堂に会したシンポジウム(8月29日、ロッテホテルソウルで)

 政治問題などをめぐって冷え込んでいる日韓関係。観光の相互交流も低迷している。現状を打開し、観光交流を拡大させようと、日韓両国の経済界、観光業界のトップらが一堂に会するシンポジウムが8月29日、韓国・ソウルで開かれた。日本側約200人を含む約350人が参加。来年の「日韓国交正常化50周年」を踏まえ、日韓双方から交流拡大への提言が相次いだ。経済界や観光業界が連携した観光需要の喚起はもとより、地方、スポーツ、青少年などをテーマにした交流施策の必要性で意見が一致した。

 活発なアジアの観光市場の中で日韓の観光交流は低調だ。今年上半期(1〜6月)は、韓国からの訪日旅行者が前年同期比3.3%減の128万人、日本からの訪韓旅行者が同13.1%減の116万人。特に日本からの訪韓旅行者は、2012年に年間352万人に達したが、13年には275万人に減少し、今年も落ち込みが続いている。

「歓迎」を前面に

 シンポジウムでは、経済界の代表が、日韓関係の現状を踏まえて観光交流の拡大の必要性を強調した。
 
 日本経団連の大塚陸毅副会長・観光委員長は、政治関係の停滞による日本人の訪韓旅行意欲の減退傾向、韓国での客船事故に伴う両国の旅行意欲の委縮に触れ、「こうした課題を乗り越えるのも観光の力。安全対策など消費者の信頼を回復し、お互いにお客さまを心から歓迎するというメッセージを前面に出すべきだ」と指摘した。

 韓国の全国経済人連合会(全経連)の朴三求副会長・観光委員長も「両国間の諸懸案とは切り離して民間交流を活発にすれば、疎遠になった両国の国民感情は回復し、ともに経済を活性化できる。韓国と日本は観光産業において重要な戦略的パートナーだ」と訴えた。

販売社員を派遣へ
 旅行業界からは、相互交流の目標700万人の達成などを念頭に具体的な打開策が提案された。

 日本旅行業協会の田川博己会長は、(1)旅行商品の販売意欲の向上を目的に、日本の旅行会社の販売担当社員を中心とする訪韓ファムトリップを年内に千人規模で実施(2)韓国での市民参加型交流イベントの開催(5千人規模で訪韓)(3)韓国での交流型スポーツイベントの開催(5千人規模で訪韓)—などを提案した。

 韓国旅行業協会の梁武承会長は、(1)全経連、経団連の協力により企業向けインセンティブツアーを日韓相互に推奨(2)日韓国交正常化50周年を記念した相互訪問キャンペーンの実施(3)2018年平昌冬季オリンピック(韓国)と20年東京オリンピック(日本)を契機とした外国人誘客への相互協力—などを挙げた。

地方・青少年交流を
 地方間や青少年間の交流活性化についても、日韓の観光関係者は重要視した。都市部に対し地方部の経済活性化は両国ともに喫緊の課題で、航空便の就航都市間、姉妹都市の交流強化などを提案。青少年交流では、日本政府観光局(JNTO)の松山良一理事長がドイツ・フランス間のエリゼ条約(1963年締結)に基づく持続的な交流を成功事例に挙げるなど、未来を担う世代の相互理解が不可欠として交流の活性化を提言した。

 意見交換を踏まえ、日本観光振興協会の山口範雄会長は「議論をいかに実践するかが重要。両国関係はきびしい側面をいくつか持っているが、観光交流の具体策づくりを積み重ねることで、必ず解決の糸口を見つけられる」と締めくくった。

 両国の政府からは、日本観光庁の久保成人長官、韓国文化体育観光部の金熙範次官が出席し、シンポジウムの成果に期待の言葉を送った。日本側からは、全国旅行業協会の川郫糺副会長をはじめ観光関係団体の幹部らが参加。東北観光推進機構の高橋宏明会長も参加し、原発事故に伴う放射能の問題に関し、食品などへの万全の監視体制を説明し、東北観光をPRした。

 シンポジウムを主催したのは、韓国の政府観光局である韓国観光公社。あいさつの中で同公社の卞秋錫社長は、当面の課題解決にとどまらず、「両国はそれぞれ外国人旅行者2千万人の誘致を目標にしている。世界の観光市場の中心はアジアにシフトしており、韓国、日本はその世界市場のリーダーとして、ともに発展できるように方策を模索すべきだ」と述べた。

 日韓の観光交流拡大をテーマとしたシンポジウムは、年内に日本側でも開かれる予定で、各施策の具体化を進める。

日韓の観光関係者が一堂に会したシンポジウム(8月29日、ロッテホテルソウルで)
日韓の観光関係者が一堂に会したシンポジウム(8月29日、ロッテホテルソウルで)
 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒