日本観光振興協会(西田厚聰会長)は5月25日、観光関係17団体と共同で、「震災後の観光復活に向けた要望と提言」を溝畑宏・観光庁長官に提出した。要望と提言は、(1)被災地の復興(2)観光業界全体の復活(3)観光需要の復活に向けて(4)海外との双方向交流の復活に向けて──から成っており、多くの人が東北に出かけられるよう「政府として交通機関の運賃や料金を特定の期間、補てんすることも考えるべきだ」などと訴えている。
西田会長ほか、舩山龍二副会長、筒居博司・日本ナショナルトラスト理事長ら約10人が同日観光庁を訪れ、溝畑長官に提出するとともに、20分程度懇談した。
被災地の復興については、地域の正確な情報発信とそれに対する国の支援により、「風評被害を防ぐとともに、安心して旅ができる環境作りが必要」と指摘。地震や津波の被害を受けた宿泊施設や土産物店、旅行会社などの観光関連施設に対しては、金融支援や税制の配慮など「過去の枠組みを超え、状況に応じた対応」を強調した。
観光業全体の復活にも触れ、「被災地の復活同様、観光業の特性に応じた金融支援、融資条件の緩和、雇用調整助成金の間接被害者への適用などの支給要件緩和が必要」として、これらを一元的に相談できる政府窓口の設置を提言。また、夏の大規模停電回避に向けた電力需給対策では、観光関連施設ごとの特殊事情や輸送機関の役割、使命に十分配慮するよう求めた。
一時期の自粛ムードも薄れつつあるが、観光需要は活発とは言い難い。そのため、旅行に応じて得られるエコポイントのような「旅ポイント」の設定や旅行費用の税額控除、短期的な市場刺激策を検討すべきだとした。長期休暇実現のため、有給休暇の取得率アップに向けたインセンティブの検討も挙げた。
一方、訪日外客の回復については「政府が中心となり、あらゆる機会をとらえて海外に訴えかけることが大事」とした上で、「特に東京を中心とした首都圏の安全を強くアピールしてほしい」と要望。同時に、海外メディアと旅行会社に対しては「大規模な招待を継続的に実施すべきだ」としている。このほか、免税対象品目の拡大や姉妹都市の協力関係の活用、MICE再誘致を求めた。
関係者によると、西田会長は観光産業の重要性を改めて強調した上で、観光復興のため、2次補正で十分な予算を確保するよう訴えた。
溝畑長官(左)に「要望と提言」を手渡す西田会長(中央)と舩山副会長(右)