日本観光振興協会（日観振、山西健一郎会長＝三菱電機シニアアドバイザー）は15日、「ワクチン・検査パッケージ」の活用を通じたＧｏ Ｔｏトラベル事業の早期再開などを求める要望書「ワクチン接種の進展に伴う観光再起動に向けた緊急要望」を斉藤鉄夫国土交通相に提出した。観光産業、地域経済のコロナ禍によるダメージは大きいと訴え、来年度も含めた長期的、継続的な観光支援策の実施も要請した。
日本観光振興協会「ワクチン接種の進展に伴う観光再起動に向けた緊急要望」（10月15日）
新型コロナウイルスとの闘いが長期化するなか、わが国におけるワクチンの2回目接種率が6割を超えました。この間の行政、医療をはじめとする関係者の皆さまのご尽力に深く感謝を申し上げます。現在、新規感染者数は減少傾向に転じているものの、大きな影響の続く日常生活・地域経済を取り戻すために、今後は感染拡大防止と社会経済の両立に向けて国におかれましては力強い政策を講じていただくようお願い申し上げます。
コロナ禍における度重なる緊急事態宣言によって観光需要は消失し、観光消費額（4～6月）も1兆8091億円（前々年同期比69.8％減）と大きく落ち込んでおり、観光産業はもとより、地域経済や雇用にも深刻な影響を与えております。また、諸外国においては、感染防止策を講じながら社会経済活動の正常化を進めており、大きな成果が上がっていると承知しておりますが、わが国ではワクチン接種率が世界のトップレベルとなっているにもかかわらず、いまだ観光をはじめとする個人消費は低い水準で推移し、そのため日本経済、特に地域経済を停滞させています。
先般、政府の「ワクチン接種が進む中における日常生活回復に向けた考え方」（9月9日）および「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」（9月28日）において、行動制限を段階的に緩和する方向が示されました。観光産業としても、必要な感染防止策を十分に講じた上で、この方針に沿って旅行を順次回復させ、地域経済の活性化に努めてまいりますので、ご支援、ご協力をお願いするとともに、以下の通り要望いたします。
（1）「ワクチン・検査パッケージ」の活用による人流の正常化へ
度重なる緊急事態宣言下の移動自粛等により、旅行マインドは著しく低下している状況です。
政府の提唱する「ワクチン・検査パッケージ」を活用することで、旅行者や受け入れ側がより安心できる環境を整え、広く関係者が連携して旅行の「機運醸成」を図ってまいります。国においては、国民にとって分かりやすく使い勝手の良い「ワクチン・検査パッケージ」を早急に実施していただくようにお願いいたします。
（2）経済回復に向けた旅行需要喚起策を
移動の自粛に伴い旅行や宿泊の中止・キャンセルが相次いだため、事業者の経営基盤は大きく棄損されており、コロナ後のインバウンド回復期の受け入れ体制も危惧されます。昨年秋のＧｏ Ｔｏトラベル事業により事業者が救済され、地域経済には回復の兆しが見られました。昨年度第3四半期（2020年10～12月）でＧＤＰが大きく伸びたのは個人消費の回復によるものであり、その中心はＧｏ Ｔｏトラベル事業でありました。地域経済には裾野の広い観光分野の活性化が大いに寄与することは十分に実証されており、観光産業や地方自治体のみならず広く経済界からも期待されているところです。
今後の感染状況、ワクチン接種の進捗（しんちょく）を十分に踏まえつつ、できる限り速やかに、「ワクチン・検査パッケージ」を活用して、いわゆる県民割の近隣県・エリアへの拡大や必要に応じて改善されたＧｏ Ｔｏトラベル事業の再開を強く要望いたします。事業の再開にあたっては、利用者に分かりやすく使いやすい制度にしていただきますようお願いします。さらに、観光産業や地域経済の疲弊は大きいため、来年度も含め長期にわたって継続的な旅行需要喚起策の実施および観光産業への支援について特段のご配慮をお願いいたします。
（3）国際交流の円滑化に向けて
ワクチン接種の進展している諸外国においては、ワクチン接種証明を活用した国際交流を通じて幅広い経済活動が回復しつつあり、観光分野においてもＥＵなどが人流を回復してきております。わが国も、諸外国に遅れることなく人的交流を回復していかなければなりません。
わが国の水際対策は厳しいレベルが求められていることから、国際往来や経済活動の状況が国際的にも遅れております。国が認めるワクチン接種者や検査での陰性者に関しては、待機期間の撤廃等のさらなる緩和を図っていただくことを要望いたします。
