日本旅館協会「旅館の持続化計画」セミナー、雇用 地域観光の好事例紹介


 日本旅館協会は2月17日、東京都江東区の東京ビッグサイトで「旅館の持続化計画」と題したセミナーを開催し、雇用や地域観光に関する取り組みをアンケート結果や各館での実践事例を交えて紹介した。

安定雇用のためにできること

 第1部のテーマは「安定した雇用」。宿泊施設のSDGsに関するアンケート結果や人手不足解消を図る取り組みを発表した。

 SDGsに関するアンケート結果は、あぶらや燈千(長野県湯田中温泉)の湯本孝之社長が発表した。(1)宿泊施設の経営者(2)宿泊施設の従業員(3)宿泊施設への就業希望者(4)宿泊施設の利用者―を対象にアンケートを実施し、SDGsに対する意識などを比較した。同アンケートでは、「就職先の宿泊施設のSDGs対応が就職活動に影響するか」について約48%の学生が、「宿泊施設のSDGs対応が宿泊先選定に影響するか」について約41%の利用者が「影響する」と回答するなど、宿泊業就業者以外からもSDGsへの関心が高まりつつあることが明らかになった。

 経営者、従業員、就職希望者が対象の「宿泊業界の人手不足の原因として、影響が大きいと思われるものを三つ挙げる」質問では、「労働時間(拘束時間)が長い」「休日や時間が不規則(シフト制)」「給与や賞与に不満」の3項目がいずれの回答対象でも高かった=図1。従業員、就職希望者が対象の「就職時に優先した事項を三つ挙げる」質問については、従業員では「寮または住宅補助がある(34.2%)」「仕事(職場)が好き(楽しい)(26.6%)」、就職希望者では「給与や賞与が適当(49.5%)」「人間関係が良好(47.3%)」の回答率が高かった=図2。湯本社長は「職場環境を改善していくとともに、仕事のやりがいを創出していく必要もある」と分析し、「宿泊業界全体として労働生産性を高めることが人材確保のために大事だ」と結んだ。

 一つ目の事例紹介では、山水荘(福島県土湯温泉)の渡邉利生常務が、自館での労働生産性の向上、収益力強化を図る取り組みを発表した。就業規則や賃金規定を見直し、業務シフト編成を再構築したほか、食事処の改修による料理提供体制の改良などの事例を示した。

 二つ目は、萬波(和歌山県和歌浦温泉)の坂口宗徳社長が、個性心理学に基づく組織づくりの取り組みを発表した。坂口社長は「スタッフの個性、長所や短所を知ることで適材適所な配置が可能になり、近3年間の新入社員の離職率は0%という好結果につながっている」と成果を説明した。

 三つ目は、新井旅館(静岡県修善寺温泉)の相原昌一郎社長が、日本旅館協会会員施設の労働環境改善に係る取り組み事例を発表した。ピークの分散化、従業員の資格取得支援、中抜けシフトを逆手に取った従業員シフトの柔軟化、食事提供時間のコントロールなど、各施設の実情に即した好事例が多数紹介された。

 

地域や環境を思い、生かす

 第2部のテーマは「地域観光の存続」。各地域の特性を生かした取り組み事例を発表した。

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