日本旅行「おもしろ旅企画ヒラタ屋」代表 平田進也氏に聞く

  • 2022年8月24日

平田進也氏

「カリスマ添乗員」が見た地方創生の好事例

地方の何気ない日常も都会人には非日常

 「浪速のカリスマ添乗員」の異名を持つ日本旅行「おもしろ旅企画ヒラタ屋」代表の平田進也氏。巧みな話術とユニークな演出で氏と行くツアーは毎回申し込みが殺到するなど関西を中心に絶大な人気を誇る。豊富な添乗経験を持つ平田氏に、全国各地の地方創生の取り組み事例や、地方における交流人口、定住人口拡大へのヒントを語ってもらった。

 ――地方創生の成功事例について。添乗で全国各地を回られた経験から、いくつか挙げてください。

 一つは兵庫県多可町。自然がたくさんあり、キツネやタヌキが徘徊(はいかい)するようなところ(笑い)。交通も鉄道がなく、中国自動車道を降りてしばらく走らなければ行けない。大阪からだと2時間少しかかる。

 その町の商工観光課の方がすごく熱心で、「平田さん、一度見てください」ということで現地に行かせていただきました。

 酒米で有名な山田錦発祥の地で、それを使ったおいしいお酒が造れる。西日本一というラベンダー園(ラベンダーパーク多可)が2008年にオープン。ラベンダー摘みの体験ができ、お客さんから人気を集めています。ただ、ほかにはこれといった産業がないようでした。

 私がツアーを催行する際、大事にするのが食事で、「地元で『これ』というものをお客さまにお出しできますか」と言うと、紹介されたのが「天船巻きずし」でした。

 地元の婦人団体の会が事業を興し、「マイスター工房八千代」というお店を作り、「私たちでもできる家庭料理を」と、作り始めたものです。

 普通の巻きずしと違い、かなり太い。半分に切ったキュウリや、だし巻き卵、どんこシイタケ、かんぴょうなどが入っていて、ご飯は少しですが、その巻き加減が絶妙。ふわっとした食べ心地で非常においしい。

 私が行ったときは、廃園になった幼稚園にテーブルを置いて、巻きずしのほかにも田舎料理を店長に頼んで作ってもらい、法事のときのように食べました。

 これも一つの観光の要素だと思い、ラベンダー園とともに、この巻きずしを現地で食べたり、買ったりできるツアーを仕立てたら、お客さんの満足度がすごく高かったんです。私のお客さまは料亭でぜいたくなものを食べているような人も多いのですが、非日常であったり、昔の時代に戻ったようだと非常に喜ばれました。

 巻きずしはヒット商品になり、節分などは1万8千本売れるそうです。売り上げにして1440万円。普通の日でも1500から2千本売れるといいます。大阪や京都から車で買いに来て、店の前が数珠つなぎになるほど。大阪などで催事をすると、10分間で完売になる。

 これといった産業がなかった山奥のまちで、自分たちが得意なことを利用して事業を興し、さらに株式会社化までした。

 「何もないまちでもこうしてお客さんを呼ぶことができました。私たちの何気ない日常も、都会の人たちにとっては非日常なのだということがよく分かりました」と、現地の人は言います。

 これがまさにまちおこしで、考え方次第でどこでもできると思うんです。

 「うちのまちには何もない」と嘆くことはありません。私のようなよそ者に見てもらうことがまず、大事だと思います。

 ――地方では、「わがまちには何もない」と言われることが確かに多いですね。

 ツアーの下見に行くとき、タクシーの運転手さんに「この辺りに何かおいしいものはありますか」と聞くと、「何もありません。大阪の方がうどんやお好み焼きがあるし、大阪城もあるからいいですね」と言われます。でも、実際見ると、びっくりするようなものがいっぱいあります。外国人なら余計にそう思うでしょう。地元の人がまひして気付いていない。

 日本に来る外国のお客さま、特にリピーターは、日本人の普通の生活を見たいんです。私は、日本のサービスレベルは世界一だと思っています。ビールを冷やすのはもちろん、グラスまで冷やして持ってきてくれる。コンビニではお客さんが持ちやすいように袋を渡してくれる。なぜ、このような文化が生まれたのか。みんな知りたいと思っているはずです。

 鳥取県の智頭町などに「森のようちえん」という保育施設があります。ピュアな空気と自然の中で子どもたちに遊んでもらう施設で、すごくはやっている。地元の人にとって当たり前にある自然を生かしたものですが、私たち都会にいる者とすればすごく魅力的に映ります。

 奈良県の十津川村は、都会の人を受け入れる民泊プログラムがあります。畑を耕したり、野菜の収穫をしたりと、おばあちゃんの仕事を2泊3日で手伝う。コンビニ弁当ではなく、おばあちゃんが作った料理を食べる。で、別れるときに都会から来た若者たちが泣いてしまう。おばあちゃんの姿を見て、「これが本来の人間の生き方なんだ」と。一度来た人がリピーターになったり、いずれは移住をする人も出てくるでしょう。これも地域おこしの一つの事例かもしれません。

 島根県の隠岐諸島には県外の生徒を積極的に受け入れる隠岐島前高校があります。都会でいじめにあったり、内向的だったりした子どもを引き受けて、自分自身を見つめ直してもらおうと、祭りに参加したり、漁業をしたりと、島でいろいろな体験をしてもらう。表と裏がひっくり返るように、みんなポジティブになるといいます。

 隠岐も人口減少、高齢化が進んでいますが、このような取り組みで永住する人が出てきたり、その予備軍もいるわけで、これも地方創生の一つの形だと思います。

 生徒を呼び込む取り組みは長崎県五島列島の小値賀島も行っており、こちらは修学旅行を積極的に受け入れています。修学旅行を体験した生徒が実際に移住をするというケースもあるようです。

 京都府の向日市は、西日本一の小さい市。武将が戦った合戦の場以外、これというものがなく、お客さまを呼ぶためにどうすればよいか、商工会で話し合ったところ、ある人が「日本一辛いまちにしたらどうか」と言い出しました。周りも同調し、「辛い物をいろいろ集めて出そう」ということになりました。たこ焼き、うどん、中華など、街中の店が協力し、辛い物のメニューを考案したり、イベントを開催したりしました。辛い物に挑戦しようという人がいっぱい来たり、イベントには何万人も訪れたりしました。電気屋さんも自分の店を辛くしようと、「値引きは一切いたしません」と宣言したところ、「あそこは辛口の店だ」と言われ、それでも以前より売り上げが上がったそうです(笑い)。

 ――ネタはいろいろあるようですね。

 要は、事を起こすこと。事業を興してアドバルーンを上げる。意外性が話題を呼び、メディアが取り上げ、人を集めるのだと思います。

 移住のきっかけも、まずはその土地を知ること。次は見る、そして住む、という段取りがあると思います。知らなければ行くことはない。地方から都会に情報を送らなければいけません。

 ――コロナ禍で観光業界が相変わらず厳しい状況です。激励のメッセージをお願いします。

 今は暗い時代ですが、いずれコロナが収束して、明るい出口が見えてくる。それまでもうちょっと、我慢して頑張りましょう。

 観光は字のごとく、国の光を観(み)ること。われわれの光を見せましょう。みんなを笑顔にする産業が私たち観光業。微力だが皆さんとともに頑張って、多くのお客さまを笑顔にしたい。

 最後に一つ提案。地方での「婚活」を勧めたい。

 少子化でどこも困っている。労働人口が減って、日本全体が破滅しそうです。

 結婚するもしないも自由ですが、あなたが生まれたのはお父ちゃんとお母ちゃんがいるから。家族という文化を継承していかねばなりません。

 昔はおせっかいな近所のおばちゃんがいたりしましたが、今は少なくなっている。その代わりではありませんが、私は婚活ツアーというものを今まで何回も手掛けてきました。

 大阪の女性を鳥取まで連れていき、地元の男性とパーティーをしてもらい、最後に告白タイム。これで結ばれたカップルが何組もあります。住む人が増えたと、地方の人からすごく喜ばれました。

 ――地方への移住も増えて、まさに地方創生ですね。

 ツアーに補助金を出すなど、行政に後押しをしてもらいたい。国も少子化対策をしているが、まだ生ぬるい。国の防衛になるし、防衛費を削ってでも(笑い)、そこにお金を使うべきではないでしょうか。

【聞き手・森田淳】

平田進也氏

 

 
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