東京電力による原発事故の賠償請求の受け付け開始に伴い、日本観光旅館連盟と国際観光旅館連盟は11日、全会員にファクスを送付し、賠償請求への対応を具体的に検討するよう促した。会員旅館・ホテルは、観光業界が東電に賠償基準などの見直しを求める動きを見据えつつ、東京電力が示す基準や様式に従って請求するか、独自に損害を立証する方法で請求するかなど、慎重な検討を求められることになる。
日観連、国観連は東電に対し、全会員に賠償請求に関する観光業向けの資料を送付するよう手配した。会員への通知は資料の到着に合わせ、請求への対応に検討を促すもの。法的な対応などが必要となるため、両団体本部は会員の請求をとりまとめることはなく、手続きは個別の対応となる。
通知は東電の請求書類に沿って請求するか、弁護士などに相談しながら損害額を立証するといった独自の方法で請求するかなどの検討を求めている。政府の審査会が中間指針に定めた賠償範囲以外でも、損害を立証できれば請求が不可能ではないことも付け加えている。
日観連の中村義宗専務理事は「請求にかかる労力や経費、賠償金支払いまでにかかる時間など、経営の状況に応じて請求方法を検討する必要がある。ただ、東電の基準、様式に当てはまらないからと言って泣き寝入りせず、損害を立証して請求するあらゆる方法を検討してほしい」と呼びかけている。
別の請求方法も検討するよう促す背景には、東電が発表した賠償基準や賠償額の算定方法では補償されない損害があるとみられるためだ。観光業界にも賠償基準の見直しを要望する動きが出ている。例えば、東電は福島など4県の観光業の減収のうち2割は原発事故以外の要因として賠償の対象外としたが、2割の根拠には疑問の声が上がっている。
他の宿泊団体の動きでは、日本ホテル協会が東電の基準や算定方法では実際に受けた損害を計上できないとして、協会独自の算定方法、請求様式を作成し、会員ホテルにモデルを示している。会員ホテルの請求は、同協会の弁護士チームを通じて一団であたるという。
日観連、国観連は、独自の方法で請求する場合について、「弁護士に相談するなど法律的にしっかりとした請求にすることが重要になる。弁護士費用と補償額の費用対効果の検討も必要」と指摘。東電と合意できない場合には、公的な第三者機関「原子力損害賠償紛争解決センター」に仲介を申し立てる方法があることなども説明している。