新春 旅館経営者座談会 銀山温泉 銀山荘 × 芦ノ牧温泉 大川荘 × 五浦温泉 五浦観光ホテル × 草津温泉 㐂びの宿高松 × 磯部温泉 ホテル磯部ガーデン


座談会の様子

コロナを機に次のステージへ 現在と未来を見据える旅館経営

 コロナ禍にあっても、改革を推し進め、地域活性化に注力し、サービスと顧客満足のさらなる向上を目指す旅館・ホテルがある。厳しい誘客状況が続くが、現在、そしてコロナ禍後をどう捉えるのか。特色ある経営スタイルの旅館・ホテル経営者5氏にお集まりいただき、語ってもらった。司会は本社編集長の森田淳。(東京の観光経済新聞社で)

写真=左から、櫻井太作氏(群馬県磯部温泉 ホテル磯部ガーデン社長)、山本剛史氏(群馬県草津温泉 㐂びの宿高松社長 )、村田章氏(茨城県五浦温泉 五浦観光ホテル 社長)、渡邉幸嗣氏(福島県芦ノ牧温泉 大川荘社長)、小関健太郎氏(山形県銀山温泉 銀山荘社長)

 

 ――(司会)まず、自己紹介を兼ねてそれぞれの宿の特徴、経営の状況を伺いたい。

 

 小関 仙峡の宿 銀山荘と古勢起屋別館を経営している。客室数は銀山荘が40室、古勢起屋別館が15室で、いずれも山形県銀山温泉の中にある。古勢起屋別館は木造が特徴的で、部屋の中にバス、トイレもない古い建物で営業している。温泉の泉質は昨年、少し硫黄の強い古い源泉を一つ掘り起こしたので、また硫黄の文字が当温泉地に戻ってきた。非常に温かい温泉なので、冬の時期には多くのお客さまに喜んでいただける。

 銀山温泉はコロナ禍で、県内で最初に温泉街全体で2カ月ほど休業し、その後は地域集客を図った。バーもない小さい温泉街だが、みんなが元気になるよう組合一体となって対策に取り組んだ。

 宿泊でみると、銀山温泉全体のインバウンド比率は約10%で、インバウンド消失よりも関東からのお客さまが動かないことの影響が大きかった。現況はコロナが収まりつつあり、少しずつお客さまが増えていたが、第6波も懸念している。生き残るために使ってきた余力を、次にどう展開していけばよいか考えているところだ。

小関社長

 

 渡邉 会津芦ノ牧温泉は会津若松市から車で30分くらいのところにあり、同市内最南端に位置する温泉地で、温泉は硫酸塩泉。

 大川荘は客室数110室の団体旅館で、5年前に私が代表取締役に就任した。就任当初は、「旅館のデパート」と呼ばれていて、団体客から高価格層まで幅広い客層を受け入れていたことが利益率を圧迫する原因だった。この状況を変えるためにさまざまなシミュレーションを行った。しかし、大きな変革に反対する声も多く、「では少しずつ変えていこう」となった。

 ところがコロナ禍となり、団体客が消滅した結果、当初のシミュレーション通りの変革を遂行することができた。経営者が何人も変わり、増改築を繰り返したことで、館内動線が不便で、団体客、個人客のどちらを取るにしても中途半端だったが、コロナ禍で脱団体客依存が進んだ。8月は例年だと8千人ほどの利用があるが、20年については4千人の利用で利益を確保できた。これは季節ごとの繁忙、閑散期の誘客戦略の大きな指標となり得る。

 登山家、田部井淳子氏が経営していた「沼尻高原ロッジ」を経営難から復活させないかと声を掛けられ、私も山登りをすることから、地元のアーカイブとするべく引き継いだ。同施設はpH2.1の強酸性の温泉が特徴的で、付近に単一湯口の湧出量が日本一の源泉があり、この温泉を組み込んだアクティビティ要素を含む宿泊スタイルを企画している。

渡邉社長

 

 村田 福島県との県境付近の茨城県内に五浦海岸があり、岬に五浦観光ホテル2館を構えている。和風の本館は客室数30室、別館・大観荘は客室数70室で、両館とも都心から約180キロのところに位置している。

 五浦海岸は風光明媚な景勝地で、東京芸術大学(当時は東京美術学校)の初代学長で思想家の岡倉天心氏が、愛弟子で画家の横山大観氏らを連れて訪れ、絵の創作活動を行ったことで知られる。当館はこの五浦を「日本近代美術の聖地」として多くの方に訪れていただきたく日々営業している。

 東日本大震災では施設の一部にダメージを受け、地域の象徴だった六角堂も波に流されてしまったが、10年の時を経て震災から受けた損失は回復しつつある。創業当初、施設の建設に当たり私の祖父が横山大観先生とお付き合いがあり、別館には大観荘という名称を付けた。湯量が豊富な源泉掛け流し温泉を持っている。

 このコロナ禍では他の宿泊施設と同様、当館も厳しい状況にあり、雇用調整助成金を活用しながら従業員の雇用を維持している。10月から県内割引が始まっており、令和3年度の売り上げはコロナ前比で7割程度まで回復するだろう、と期待している。

 

 山本 当館は長野県の県境の群馬県内に位置する草津温泉にあり、上野駅から特急で約2時間半、そこからバスで30分ほど掛かる。最近はバスタ新宿から直通バス「上州ゆめぐり号」が出て、長くても4時間半ほどで草津に到着する。

 㐂びの宿 高松は客室数104室の大型旅館で鉄筋コンクリート造り。団体が中心だが個人の割合も増加し、割合的に大きくはないがインバウンドの取り込みにも注力している。東日本大震災を機に、比較的揺れやすい鉄骨部分を取り除き、館全体で20室ほど減らしたが客室単価は上がった。20年10月に開業した和える宿 高松は鉄筋コンクリート造りで客室数は23室。コロナ禍だったが開業を決意し開業直後はGo To事業の効果もあり好調な入り込みで、近隣でのゴルフ大会開催時には青木功氏が宿泊したこともあったが、年明けから予約が鈍くなり、まだ通常時の営業状況を把握できていない。10月に県内割引が始まり客足が戻りつつあり、11月はコロナ禍前比8割ほどまで回復した。

 人材の確保が難しいエリアだが外国人スタッフが頑張ってくれている。国籍関係なく実力のある人には大きな役割を任せていきたい。

 

 櫻井 磯部温泉は群馬県内の草津や伊香保など、他の温泉地と比べ小規模だが、温泉マーク発祥の地としてアピールしている。

 もともと大型旅館として客室数110室の磯部ガーデンを経営し、その後買い取った21室の磯部館、30室の桜や作右衛門を経営している。前保有者から桜や作右衛門を買い取って営業し始めた時は、富岡製糸場が世界遺産に認定された影響でバブル状態だったこともあり、3館いずれも1泊2食付きでフル稼働だったが、現在は桜や作右衛門は素泊まりのみで、休日と休前日のみの稼働となっていることもあり、今後はビジネス旅館への転換も検討している。

 コロナ前の磯部ガーデンの団体客割合は約75%で、これはいずれ減っていくと予想していた。OTAを含む各旅行エージェントにも積極的にアピールし、評価点数が向上して個人客が占める割合も上がってきたが、依然として日~木曜日の団体の集客が課題だ。

 コロナ禍以降の現状については、毎年なじみだった団体顧客の利用が大きく減り、館内の大型会議室の出番もなく、耐震工事済みの館内施設を持て余している。さまざまな補助金を活用して経営を維持し、コロナ後を見据えた準備を進めた。今後も「平日は団体、週末は個人」を軸に、客室単価、評価点数ともに上昇させていきたい。アフターコロナを見据えて頑張っているが、地元の取引先が撤退していくのが非常に辛いところだ。

 

■     ■

 

 ――力を入れている取り組みと、その成果について。

 

 小関 温泉街全部で軒数だと12~13軒、客室数140室ぐらいの小さな温泉街なので、地域としての観光地力をどう高めるかを常に考え、注力してきた。温泉街が位置する尾花沢市は人口より牛のほうが多いようなところで、コロナ禍で市民には4千円、牛には2万円配られる、そんな市で(笑い)。観光予算があまりないので、個人型の温泉地だが地域で一体となって自分たちの存在や取り組みを国に対してアピールしてきた。

 当社については、稼働は良かったが利益率がさほど良くなく、工事資材が全て手運び必須など立地上工事費が高額になるので、どうしても収益を高める必要があり、自社比率や単価を上げるための取り組みを継続してきた。

 現在、有形文化財に登録されることを前提にして、銀山温泉内にある昔の狭い間取りの客室数14室の旅館を1軒工事している。地域の力として、銀山温泉内の昭和初期に建てられた木造建築群を生かし、重要伝統的建造物群保存地区に指定されることを目指している。文化的に保護、保存されていないので、火災や水害などで破損した場合に直せなくなってしまうため、これを事前に防ぐために重伝建指定を目指している。地元の温泉街の町並みはしっかり残していきたい。

 ゆるく地域全体を網羅している組織ではなく、データやお客さまの声を集めて分析し、しっかりと具体的に施策を講じて実行していけるような地域DMOを銀山温泉にも作りたい。補助金をもとに館内の設えを順次整備、改装しているが、基本的に宿泊業は対人のサービス業なので、どこまでをオートメーション化し、どこまでお客さまと接するべきなのか、その一方でどのように生産性を高めていけば良いのかなどについて、いろいろ考えることがある。古き良き銀山温泉の雰囲気を残す努力は今後も継続していきたい。

 

 渡邉 ご多分に漏れず「2代目の苦労」というものがあると思うが、就任当初私にとっては全く未知の場所だったので、最初は周りからの賛同を全く得られなかった。

 大川荘は産業再生機構が入り、歴代の経営がうまくいかず崩壊状態だった。どう立て直すかと考えながら財務諸表などを見て、頭を抱えたこともあった。「まず自分の働き方を見せ、理解してもらおう」の意識で、当時1日の就業時間内で4万歩ほど歩き、誰よりも動き、「自分が最も現場に触れ、現場を一番知っている」と自認し、その姿勢を他の社員に見せた。そんなことを3年間続け、各従業員の意識が大きく変わりつつあった矢先にコロナ禍がやって来た。

 就任当初の芦ノ牧温泉は町全体が疲弊していて、つぶれた旅館の廃墟が肝試しの場所になったりと、惨憺(さんたん)たる状況だった。この状況を改めるため、廃業した旅館を買い取って温泉付きの寮にして、社員食堂も兼ねた食堂を開業した。良好とはいえない生活環境にあった社員の生活、待遇の改善に加え、地元の唯一の食堂の事業を承継し、他の旅館にも当社の社員と同じ条件で食堂を利用できるようにするなど、多岐にわたり好影響を与えることができた。かつてインドを旅した自分の経験をもとにスパイスにこだわって作ったカレーを食堂で展開したり、山で採れた塩でつくる山塩プリンなどの商品開発も行った。

 個人的には泊食分離が理想だが、芦ノ牧には食堂がないので1泊2食付きが基本となる。駐車場が整備されておらず移動に時間が掛かり、館内では客室への荷物運びやお客さまへのお呈茶など、旅館業は非効率的な部分が大きい。コロナ禍で改革に向けた大義名分ができたので、荷物運びやお呈茶を廃止し、稼働を抑えることによって遠くの駐車場を使わないようにしたり、独自のチェックインシステムを導入するなど効率化を一気に進めた。地元のDMOに寄与できるシステムの開発も行っている。

 沼尻高原ロッジで展開している事業はアドベンチャーツーリズムの一環で、旅なかのアクティビティでの気づきや学びを求める高所得者層をターゲットとし、今後に向け高付加価値、高単価な商品を造成している。

 

 村田 従業員の雇用維持に力を入れている。10年前、震災の際も雇調金を申請し、厳しい状況の中でも従業員を解雇することなく経営を維持してきた。震災直後客足が戻らず厳しい時期も経験したものの、長年勤めてくれた社員の力があったからこそ難局を乗り切ることができたと考えている。そんな経験を経て、「雇用は絶対に維持する」という意識が今まで以上に強固になった。実際に従業員を一時解雇した施設は営業再開時にかなり苦労したとも聞いており、信頼できる従業員の雇用維持は大切だと考えている。

 コロナ禍での休館がきっかけとなり、今後も社員の休日を増やそうという考えに至った。また、専門職を抱え、余剰人員もない現状に鑑み、休館期間を利用して各社員のスキル向上に取り組んでいる。具体的には、予約・フロント間で相互に社内研修を行うなどマルチスキルの育成をテーマとしている。これにより、他部署の仕事内容や要点などを理解でき、各社員それぞれに気づきが生まれ、館全体でお客さまをお迎えする態勢をより高品質なものへと向上できた。これに伴い、マニュアルも従来よりも効率的なものへと改良でき、労働生産性の向上につなげることができた。

 休館中には改修工事も実施した。環境整備補助金により館内Wi―Fi環境を整備し、IT補助金によりクラウドを導入した。また、健康増進法の改正に伴う禁煙の流れを受け、受動喫煙に関する補助金で喫煙室を設け、館内全体では分煙、客室内では禁煙へと動いた。さまざまな取り組みによって、口コミやレビューが良くなるよう努力し、選ばれる宿になるよう頑張っている。

 

 山本 私が31歳のときに父が亡くなり、トップセールスをしていた父の人脈をいかに維持するかが、継いだ当初の私の課題だった。自分自身もトップセールスとして営業力強化を常に図っている。仕入れの一括管理など館内オペレーションの整備も進め、私が営業で獲得したお客さまをしっかり受け入れられる館内の態勢づくりに力を注いできた。

 間口を広げるという観点ではOTAもウェルカムで、とにかく一生懸命客室を埋めていきたい。地域のDMOのインバウンド部会長を仰せつかり、町の仲間を連れて一緒にプロモーションを行うなど、町全体で動くことが非常に大切だと感じる。

 草津は町自体の規模が小さく、みんなお酒が好きだし(笑い)。現在はコロナ禍で開催できないがイベントもみんな一緒にやっていたし、消防団も一緒で、とにかく「観光立町」なのでみんなが同じ方向を見ている。電気屋さんであっても、宿にお客さんが入ることでメンテナンスの仕事が発生する。だから意思決定から実行までが早く、町長も常に観光目線なので、非常に強力なバックアップをもらえる。

 

 櫻井 先ほどの話とやや重なるが、うちは団体7割、個人3割の入れ込み割合で、かつてはネットのレビューは(5.0のうち)3.7くらいだったので、個人客向けのサービスにも力を入れ、コンサルタントのリョケンさん主催の研修などに社員全員で出席するなどして、ネットレビューの点数を上げるための努力を社員一丸となって懸命に行った。その結果、「お客さまにしっかり尽くそう」という意識が高まり、効果がレビューの点数アップとなって表れ始め、実際に客室単価の上昇にもつながっていった。一度学んだことを忘れないよう、定期的に研修に参加するようにしている。

 研修によりサービス向上を意識する姿勢は本当に大切で、「常にお客さまの方を見て」の精神をしっかり維持でき、それがお客さまの目に留まり、高評価につながっているのだと思う。「とにかく館だけでなく、そこで働く自分たちも磨こう」という一心で頑張ってきたし、今後もこのスタンスでさらなる向上を目指す。お客さまと接する中でいろいろなお声を頂戴するが、「ここの旅館は社員が素晴らしい」と言ってもらえるとうれしいし、高単価旅館に向け大きな励みにもなる。

 

■     ■

 

 ――新しい時代に目指す旅館像、今後の取り組みや方針などについて。

 

 小関 銀山温泉は客室数10室以下の旅館が全体の半分で、うちは比較的大きな部類となる。当館と銀山温泉の関わり方という観点から、地域で自立し、開発、成長していけるよう努めたい。

 旅館と同時に飲食店2店舗を工事しており、当社自体も銀山温泉のために発展していきたい。コロナ禍前から旅行スタイルが多様化、個別化し、自由度が上がったと感じている。1泊2食付きは当然日本の旅館文化として守るべきものだと思うが、一方でお客さまの選択肢を増やして地域ににぎわいをもたらせるよう、飲食店運営に着目し、実行に移した。

 交通インフラ整備の観点から、地元にバス会社がないので遠方から路線バスの運行を開始し、地域の集客と人流を最適化した。今後もいろいろな角度から銀山温泉を活性化していきたい。

 

 渡邉 私も、地域が良くなってこそ温泉街が生きる、そのために旅館を含む観光業が大きな役目を果たせると考えている。

 地域にとって観光業は外貨を獲得するための重要な産業。稼いだ外貨をいかに地元にとどまらせて地域活性化につなげられるかが観光業の使命だ。旅館は、外貨獲得から地域活性化への好循環を啓蒙する存在であるべきだし、それを実践する必要がある。100%は難しいが可能な限り地元産の食材を使用し、地域のDMOとも積極的に連携していきたい。

 地域観光資源の価値を上げる必要性とともに、お客さまの滞在時間をいかに増やすかにおいて宿泊は必須で、旅館がそれについて深く関わっていくべきだ。お土産屋、観光施設とも足並みをそろえ、私自身も地域DMOの理事を務めるなどして信頼関係を築き、地域一丸で活性化に取り組んでいきたい。

 

 村田 コロナウイルスの感染がある程度まで収束し、一時的に団体のお客さまが戻ってくると思うが、コロナ禍でのニューノーマルの日々の中で若者を中心に趣味・嗜好が変わり、団体需要はコロナ前ほどには戻らないのでは、と考えている。国内企業の福利厚生なども変化し、かつてと比べ社員旅行もだいぶ少なくなった。やはり個人客へのシフトチェンジは必要だと思う。しかしながら、これまで低価格・大人数の団体客の取り込みを中心に収益を上げてきたため、本当に個人客へと軸を移せるか、正直不安はある。例えば、仕入れ価格が上昇し光熱費なども掛かる中、5~6名用の部屋を2~3名利用として利益をしっかり確保できるのか。そこで収益確保のために、高宿泊単価を実現させる必要がある。

 旅館はもともと大きな固定経費を抱えた上で、利益率が把握しづらい宿泊サービスを提供している。まとまった売り上げが見通しやすい団体旅行が減り、分散的な個人客が増えていく中で、売り上げ至上主義から利益率重視への転換が求められる。常に損益分岐点を意識しながら経営に臨んでいきたい。

 また、少ない営業経費で集客率を高めるにはリピート率を高める取り組みも大切で、アプリでのポイント還元、クーポン券の配信などを検討している。SNSを活用した取り組みとして、人工物が一切ない太平洋の眺望を生かし、日の出・月の出とともに撮影できるフォトスポットを設け、インスタグラムにアップしてもらい、集まった画像でフォトコンテストを開催している。当館ならではの自然を生かした取り組みは今後も継続したい。

 さらに天心、大観にちなみ、五浦を「画家たちの村」としたい。天心の言葉を借りるなら「東洋のバルビゾン」。もとは画家たちが住んでいたフランスの小さな村だと聞いている。近くに県立美術館があるので、アトリエを作って、今後は画家の方々を招いて新たな創作活動の拠点となれるような試みを実施していきたい。各種美術団体を対象とした営業活動も積極的に行っていきたい。申請していた事業再構築補助金が採択されたので、ホテル独自の冷凍料理の通信販売にも着手する計画を進めている。コロナによって、改めて自館の強みを認識し、独自性を打ち出していく必要を感じた。今後は独自色を打ち出せる旅館が生き残っていけると考えている。

 ウェブマーケティング対策、インバウンド対策も引き続き重要となる。また、当館も含め人手不足を外国人従業員によって解消している宿泊施設は多いので、ビザの申請などに関するハードルは極力下げてほしい。

 宿泊業界をさらに魅力あるものにするため、業界の地位向上、待遇改善についても引き続き取り組み続けたい。それが従業員のホスピタリティマインドの向上にもつながっていくはずだ。

 

 山本 外国人を雇用しやすい体制づくりについては私もお願いしたい。費用も掛からず、煩雑な手続きを経ずに外国人を雇用できるようにしてほしい。

 個人的な草津の理想のビジョンとしては「スーパーリゾート」を掲げている。例えばハワイ。アクティビティが豊富で、何をやっても滞在していて楽しい、そしてリピートもしたくなる。それの山版とも言えるのがカナダのウィスラー。山なりにレストラン、お土産屋があってお客さんがいつもたくさんいて、条例によって景観が維持されている。草津としては温泉を生かした国際的なスーパーリゾートを目指したい。旅館についてはコンドミアム的な発想を提案したい。草津には新旧、大小いろいろな宿泊施設がある中で、和と洋を融合したシティホテル的な形態で、そこに大浴場や温泉がある、レストランが付随しているといったスタイルを想定している。

 このような新しい宿泊スタイルを提案できれば、中長期的にみて地域活性化につながっていくのではと期待している。万座、四万など群馬県内の近隣地域と広域連携しながらこれらの施策を進められれば、なお理想的だ。

 

 櫻井 磯部温泉は中山道が近くを通り、軽井沢にもつながっていて、草津からもほど近い。草津のような日本を代表する大観光地と比べ、うちは規模が小さく、食べ物もねぎとこんにゃくしかない(笑い)。あと、温泉マークと磯部せんべい。

 現在は交通インフラも整備され、ベッド需要も高まり、旅や宿泊の利便性が高まっているが、旅館に滞在した際には伝統的な「和」を感じたい、という声は依然として多い。地元の限られた観光資源を生かしながら、和風を感じられる滞在を引き続き提供したい。

 旅館は宿泊だけでなく、お客さまを地域の観光スポットへと誘う案内的な役割を果たしても良いのかもしれない。例えばDMOの代わりに案内を行い、観光施設の整備に一役買うなど、地元の拠点のような存在になるべきだと思う。地元の旅館組合などと協力しながら、観光資源のブラッシュアップなども進めていけるはず。他の有名な温泉地とは少し異なる形にはなるが、地の利を生かしながら地域の実情に即した取り組みを進め、地元の魅力を発信しながら和を感じられる滞在空間を、自信をもって今後も提供し続けたい。

 

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