新春 外資OTAトップ座談会 Expedia × Booking.com × Trip.com

  • 2022年1月3日

左からダイクス氏、竹村氏、勝瀬氏

世界のテクノロジー フル活用 現地化で国内需要を開拓

写真=左から、マイケル・ダイクス氏(エクスペディアホールディングス 代表取締役 マーケットマネジメント 北東アジア統括)、竹村章美氏(ブッキング・ドットコム ジャパン 北アジア統括リージョナル・ディレクター)、勝瀬博則氏(トリップ・ドットコムグループ日本 代表取締役社長)

 

 長期化する新型コロナ禍。国境をまたぐ移動が制限を受ける中、世界三大OTAは各地の域内需要を取り込む方向にシフトしている。ブッキング・ドットコムの北アジア地区統括リージョナルディレクターとトリップ・ドットコムの日本代表に初めて日本人が就任。エクスペディアの北アジア統括は従来から日米ハーフだ。各社の戦略を聞いた。司会は本社企画推進部長江口英一。(12月1日・ロイヤルパークホテルで)

21年の業況を振り返って

 ――2021年はどんな年だったか。簡単な自己紹介と合わせて話してほしい。まず、外資OTAトップ座談会皆勤賞のダイクスさんから。

 ダイクス エクスペディアのマイケル・ダイクスです。2016年新年号の第1回から本座談会に出席させていただいている。私は日本生まれ、米国育ちの日米ハーフ。20年前から日本で仕事をしている。マイクロソフト、サンマイクロシステムズなどのIT企業で働いていたのだが、6年前にエクスペディア・グループに誘われ、入社した。その時から日本の代表を務めている。

 21年は、力を温存させて打突の好機を見極める1年だった。20年は、需要の乱高下に一喜一憂するような状態だったが、21年は自制心を持って、腰を据え、真にリターンの見込めるところに投資をした。

 1点目だが、旅行業が復活するためには、旅行者の安心安全を思って、全世界のワクチン接種を推し進めないといけない。そのため、発展途上国のワクチン接種率を向上させるための取り組みを9月から始めた。先進国の接種率が70~80%を超えていても、発展途上国の接種率が10%未満では変異株の温床になってしまう可能性がある。エクスペディア・グループの「エクスペディア」「ホテルズドットコム」「バーボ」のアプリからお客さまが旅行予約をされるたびに、その一部を寄付金として積み立てている。最低1千万米ドルをユニセフに寄付し、途上国のワクチン接種費用に充てていただく。

 2点目は、旅行者の価値観の変化に対応すること。具体的には、ダイバーシティ&インクルージョンの強化だ。「LGBTQ+(性的マイノリティ)」に配慮のある国内宿泊施設を、25年の大阪・関西万博の需要獲得に向けて、世界のLGBTQ+旅行者に対してマーケティングを始めている。

 3点目はサステナビリティ、つまり環境への配慮。弊社の調査では、日本人旅行者の48%が環境に配慮した旅行には追加代金を払っても良いと回答している。タイ、ユネスコ、エクスペディア・グループの3者間で、19年にサステイナブルツーリズムの誓約に署名。その後、フランス、スペイン、スコットランドの各観光局も参加し、観光業界全体で環境問題に取り組みましょうという流れができつつある。20年以降、参加しているパートナー宿泊施設は、当サイトで「ユネスコのサステイナブルツーリズムの誓約」のバッジが付けられている。

ダイクス氏

 

 ――ブッキング・ドットコムの竹村さんは。

 竹村 21年の7月にブッキング・ドットコム北アジア地区(日本、韓国、香港&マカオ、台湾)統括リージョナル・ディレクターに就任した竹村章美(あきみ)です。その前の約5年間は旅行会社にGDSを提供するアマデウスジャパンの社長をしていた。その前はずっとアメリカン・エキスプレスにいた。うち最後の6年間は、業務渡航に特化したアメリカンエキスプレス・グローバルトラベル・日本旅行の社長を務めていた。10年に帰国するまではずっとニューヨークとパリで勤務していたので、海外勤務の期間の方が長い。

 21年のブッキング・ドットコムには、いくつかのターニングポイントがあったように思う。私事で恐縮だが、北アジア地区の代表に初めて日本人が就いた。日本市場の重要性を再認識して、市場に合わせた組織を作っていくという決断を下した。コロナ禍でクロスボーダー市場は閉じてしまった。グローバルOTAとしては、展開先のドメスティック需要の獲得にシフトするしかない。

 もう1点は、ユーザー動向の変化。グローバルでのモバイル予約比率は全体の約3分の2にだった。第3四半期(7~9月)にはアプリの月間アクティブユーザー数が初めて1億人を突破した。

 21年の取り組みとして特に大切にしてきたことは、宿泊施設さまに寄り添うということ。旅館・ホテルに安全安心に滞在いただけるということを、ユーザーに対して宿泊施設の掲載ページで「見える化」し、需要を喚起する仕組みを提供させていただいている。また、旅行需要の回復の兆しが見えてきた時に、その需要に対してどのような準備をしておくと良いかの情報やアドバイスを「リカバリー・ツールキット」という形で提供している。

 

 ――トリップ・ドットコムの勝瀬さんは。

 勝瀬 21年の9月にトリップ・ドットコムの日本地区代表に就いた勝瀬です。元々は米国の製薬業界で15年間働いていた。2014年に帰国し、その後は日本にいる。当時の知人がブッキング・ドットコムのアムステルダム本社で人事責任者だったご縁で、ブッキング・ドットコムの日本代表を拝命した。これが観光業界との最初の出会いだった。17年にホテル客室備え付け無料スマートフォン「ハンディ」の日本法人「ハンディ・ジャパン」の設立に関わり、社長として事業を急拡大。その後、出資者だったソフトバンクの孫さんに誘われ、OYOの日本法人に移った。OYOホテルの方ではなく、賃貸住宅をホテルのように販売する事業の方の責任者を務め、600人を採用してこちらも急拡大したが、残念ながらその事業は売却された。成功だけでなく失敗からも多くを学んだ。この経験はトリップ・ドットコムでも生かせると思う。帰国してからの7年間は、まだ日本で小さいものを短期間に大きくすることをずっとやってきた。

 先ほど竹村さんからブッキング・ドットコムのモバイル予約比率が3分の2になったと伺ったが、私がいた当時は7%だった。隔世の感がある。当時の課題は、いかにして日本のユーザーを増やすかということだった。テレビCMも使って若い新規ユーザーを獲得していった。

 21年のトリップ・ドットコムは雌伏の年だった。大きく展開するというよりは、宿泊施設などのパートナーとユーザーをしっかりと守り、ビジネスの基礎を固める期間になった。中国の国内需要が堅調に回復し、第1四半期(1~3月)には黒字化を達成した。

 そして10~11月に大きくかじを切ったのが現地化だ。欧州、米国、日本の各地域の代表にそれぞれの現地出身者が就いた。英国人、米国人、日本人だ。今までは中国人の国内旅行、中国人のアウトバウンドを中心に据えて事業展開をしていたのだが、これからは各拠点の国内・域内需要獲得に注力していくという明確な意思表示だ。上海本社の経営陣からは、「チャイニーズカンパニーでもグローバルカンパニーでもなく、グローカルカンパニー」というメッセージが届いている。

勝瀬氏

 

22年の展望と具体的取り組み

 ――オミクロン株の出現もあり、先が見通しづらい状況下だが、22年の展望、取り組みについて教えてほしい。

 ダイクス 21年は東京五輪が無観客開催になった。いつ何が起こるか分からないので、22年も引き続き目先のことに一喜一憂せずに、着実な展開を図りたい。

 グローバルレベルで見ると、需要がそれほど回復していないのにも関わらず、徹底したコストダウンにより21年第3四半期(7~9月)の利益水準は、ほぼ19年同期比並みのレベルまで改善した。できるだけ資金を温存しながらも、将来の差別化につながるものに投資を行ってきた。22年もこの戦略を続ける。

 

 ――固定費はどのように絞ったのか。

 ダイクス 全てについて見直しを行った。例えば東京本社では、社員の勤務形態がテレワーク中心に移行したため、オフィスは大幅に縮小してサービスオフィスに移った。減らせるコストは徹底的に減らし、技術への投資に振り分ける。

 一つ目はロイヤリティプログラムの刷新。エクスペディア、ホテルズドットコム、バーボなどは、それぞれ独自のロイヤリティプログラムを持っているのだが、特典やポイントの移動はできない。これを「ワンロイヤリティ」として、どのブランドでも同じロイヤリティプログラムでポイントがたまり、使えるという形に変える。22年度中に稼働する。全ブランド合わせて1億4500万人のロイヤル会員を宿泊施設にご紹介できる体制にする。

 二つ目は社内体制の刷新。対サプライヤーに接する組織が、宿泊施設、航空会社、グローバルホテルチェーン、アクティビティなどで分かれていたのだが、これを一つの組織にまとめる。すでにその恩恵が生まれつつある。例えば、これまでグローバルホテルチェーンだけに提供していた技術を、横展開できるようになった。「オプティマイズド・ディストリビューション(流通の最適化)」と言って、ホールセール(卸売)在庫の流通を効率化する技術的なソリューションだ。ホールセールレートの客室が宿泊施設側の望まない販路で販売されていたり、身に覚えのない価格で表示されていたりすることがある。これは、中小の独立系施設だけでなく、マリオット・インターナショナル内でも問題になった。2年前にマリオット向けにカスタム技術を開発して提供。現在、望まぬ販路、料金での表示は80%減ったそうだ。この技術を他の宿泊施設にもお使いいただける汎用ソリューションとして提供する。

 三つ目は、宿泊施設に対する最新の需要予測ツールの提供。どこの国から、いつ、どの宿泊日でどれくらい需要が戻ってきているかを可視化した「マーケット分析」、将来の需要予測と周辺宿泊施設の販売価格を確認できる「REV+(レブプラス)」は、コロナ禍中でも常に改良を重ねてきた。これらのツールの利用率はアジアでは日本が一番高い。

 

 ――ブッキング・ドットコムの22年の展望、取り組みはどうか。

 竹村 22年以降の旅行はコロナ前の旅行とはタイプが変わってくると予測しており、その変化やトレンドに対応した戦略を取っていきたい。

 弊社では、31カ国・地域の2万4千人以上の旅行者に22年の旅行に関する調査を行い、過去25年間の独自データと合わせて考察して、「22年の七つの旅行トレンド予測」を21年11月に発表した。その内容は(1)セルフケアとしての旅行(2)旅先では「仕事ゼロ」であることがポイントに(3)初めて旅に行くような感覚を楽しむ傾向に(4)旅先でのコミュニティへの配慮(5)旅先での新しい出会いへの期待の高まり(6)計画なしに旅先での滞在を楽しむ傾向に(7)旅行業界におけるテクノロジーの利用増加―だった。

 (5)の内容を補足すると、21年は新型コロナ禍の影響で多くの人がどこに行くわけでもなく家族や同居人と長時間を過ごした。それとは反対に22年には旅に出かけ、新たな人と出会う機会が増えると予測している。日本の旅行者の46%が「旅行中に新しい人と出会いたい」と回答しており、旅が交友関係を広げるための手段の一つになると捉えていることが伺える。また同66%は「旅先で出会った人との交流が楽しみである」と回答している。

 コロナ前は、「数カ国の有名観光地を回りたい」というニーズも多く、詰め込み型のパッケージツアーの人気が高かったのだが、「現地の人と出会いたい」旅行者が増加するなど、旅行に求める優先事項が変化したことが調査を通じて判明した。また、旅先やそこで暮らす人々へ良い影響をもたらすように努めたいという旅行者も増え、サステナブルな取り組みを行っている宿泊施設を滞在先に選ぶ傾向は、世界そして、日本でも強まってきている。当社では、そのような地域でのインパクトが高いサステナブルな取り組みを行っている宿泊施設に対して「サステナブル・トラベル」バッジの発行と掲載を始めている。

 (7)のテクノロジーの部分では、「コネクテッド・トリップ」機能の整備を進めている。ワンストップ、つまりシームレスな導線のユーザー・インターフェ―ス(画面)で、宿泊、航空、レンタカーなどの手配が完了するカスタマーエクスペリエンスだ。欧州、豪州では開始している。日本でも22年以降にローンチできるようにしたい。

 

 ――トリップ・ドットコムの22年はどうか。

 勝瀬 世界の観光業界にとってコロナ禍のインパクトはとてつもなく大きかった。不測の事態はいつでも起こり得るということを常に考慮しながら、10年後、20年後に向けての布石を打つことが大切だと思っている。

 海外旅行の70%は、移動が4~6時間圏内だということがさまざまな統計データ上からも明らかになっている。日本と隣国の中国は、域内の旅行市場をシェアしている関係だ。日本人が旅行するところには中国人も行くし、中国人が旅行するところには日本人も行く。近隣国の旅行市場とはそういうものだ。エクスペディアだと米国とカナダの旅行市場、ブッキング・ドットコムだと欧州内の旅行市場は域内需要をお互いにシェアしていると捉えられる。

 日本と中国は同じブロックに入っている。コロナ禍で一時的に観光交流が止まってしまっているが、私たちの大きな役割である、中国やアジア各国のインバウンド客を日本にお連れするという歩みが止まることはない。特に全国の地方自治体と宿泊施設をはじめとするパートナーの皆さまとは、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えた連携を今後も着実に進めていく。

 日本の国内需要、つまり日本人の国内旅行の取り込みは、今まで以上にスピードアップしていく。トリップ・ドットコムは、ベース国となる中国国内では「シートリップ」ブランドで事業を展開している。ユーザー属性を見ると50%以上が30代以下のデジタルネイティブ世代。モバイルネイティブと言ってもよいかもしれない。ここで培ったさまざまなテクノロジー、いかにスマホの中で全ての旅行手配を完結させるかという技術、ノウハウの全てを日本語サイトにも注ぎ込む。私たちはレイトカマーとして日本にやってきた。既にじゃらん、楽天トラベルがいて、ポイントを中心としたロイヤリティプログラムでユーザーを囲い込んでいる。この日本市場に食い込んでいくために、日本のモバイルネイティブ世代にアピールできる旅行商品の見せ方、売り方を徹底的に研究していく。

 グローバルOTAというのは、本社マーケティングの意向が非常に強い。じゃらん、楽天は国内OTAなのでマーケティングを自分たちで決めることができるが、外資OTAには今までそれが難しかった。私たちは、ここの現地化を進めていく。日本語サイトのトップページデザインは日本人好みの配色、レイアウトに変え、販促キャンペーンも日本主導で行っていく。

 

プライベートでの過ごし方

 ――最後に皆さんの趣味などプライベートについて伺いたい。

 ダイクス 昨年のこの座談会では「もともとは自炊嫌いの外食派だったのだが、在宅勤務で家にいる時間が増えたので、電気圧力釜を買って料理を始めた」と話した。その後、料理の腕がわれながらだいぶ上がっている。今では、外食する時に「これくらいなら家で作れそうだ」と思うようになってしまった。外食する時には、とても自分では作れない料理を選んで食べに行くようになった。

 勝瀬 私の趣味は犬。「ひよた丸くん」という名前のチワワを飼っている。犬と生活してみて分かったのは、犬と一緒だと旅行に行きにくいということ。調べてみたところ、米国でも欧州でも80%くらいの場所は犬と旅行できて宿泊もできる。ところが日本では犬と宿泊できる宿はわずか2%。そこで、トリップ・ドットコムに入ることがまだ決まっていなかった21年の8月に「一般社団法人ドッグフレンドリーホテル協会」という組織を立ち上げた。約50施設が加盟していて、私がサポートをしている。

 竹村 私も最近チワワを飼い始めた。12年住んでいたパリでもチワワを飼っていた。欧州のレストランはたいてい犬の同伴はOK。ところが子供はNGだったりする。五つ星ホテルのラウンジにも百貨店にも普通に犬がいる。ブッキング・ドットコムに入社する少し前に久しぶりにニューヨークに滞在していたのだか、驚いたのは犬を飼う人が増えたこと。レストラン、スーパーマーケット、どこにでも犬がいる。日本でもペット同伴の旅行がしやすい環境づくりが必要だと感じている。

 私の最大の趣味は秘湯めぐり。全く無名な日本全国の秘湯を探し、月に1回は訪れている。4時間程度歩かないとたどり着かない温泉、自分で掘らないと入れない温泉などに行く。

 

 ――それらの秘湯には犬も入れるのか。

 竹村 山の中で、完全に野天で、脱衣所もなくて、混浴。まだ連れて行っていないが、おそらくどこもドッグフレンドリーな温泉だと思う。

 

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