新春インタビュー「観光復興の行方」 日本政府観光局 理事長 清野 智氏

  • 2022年1月2日

清野理事長

コロナ禍でも地域の魅力発信 サステナブル観光への対応課題

 ――コロナ禍の長期化で、インバウンドをとりまく環境は依然として厳しい。

 「先を見通すことが難しい状況だ。一時は政府が水際対策を緩和し、訪日旅行の再開に向けて2021年中にも団体旅行の実証事業を行う方針を示したことで、明るさが出てきたと感じたが、新たな変異株の出現で状況が変わった。状況は常に変わるが、日本の観光施設や公共交通の感染対策、医療体制などの情報は海外に発信し続けている。国内外での感染症の終息と国際的な往来の再開を願っている」

 ――インバウンド需要がなくなり、事業者や地域への影響も大きい。

 「JNTOの使命はインバウンドの振興だが、国際観光を再開できない状況下では、国内観光の活性化に力を入れなければならない。新たなGo Toトラベル事業などが検討されているが、コロナ禍も足かけ3年に及び、事業者や地域の状況は相当厳しい。訪日外国人旅行者が戻ってきた時に、国内の観光地に活気があるような状態にしておきたい」

 ――訪日観光客がいない中で、JNTOが注力した取り組みは。

 「各種調査でコロナ後の海外旅行先として日本は高い人気を維持しているが、競合国に比べて情報発信が少なければ、他の国・地域に旅行者を奪われてしまう。海外事務所などから継続的に日本の魅力を発信している。新たなプロモーションとしては、バーチャルライブツアーとEコマースを組み合わせた事業を中国市場向けに展開している。21年9月の九州を皮切りに、年度内に全国8地方で実施する。日本在住の中国人インフルエンサーに各地から観光情報を発信してもらうと同時に、その土地の産品を紹介してもらい、ライブ配信中に越境Eコマースの形で販売している。旅行消費に比べれば、小さい金額だが、地域経済に貢献していきたい」

 「自治体やDMOと連携した情報発信も強化している。『日本は皆さまをお待ちしています』というメッセージを伝え続けることが重要だ。自治体と連携した『Fun From Home』という事業では、地域の旬の魅力をJNTOのSNSなどを活用してライブ配信している。また、DMOなどから体験型の観光コンテンツを集めて発信する『Experiences in Japan』という事業も継続している。これらの事業では、海外事務所によるマーケティングのコンサルティングなどを通じて、地域との関係が強化できたと考えている」

 ――コロナ後の訪日客のニーズや行動はどう変わっていくか。

 「JNTOの調査などで、国際観光が再開した時にどのような点を重視するかを聞くと、混雑を避けたい、といった回答が多い。こうしたニーズへの対応が必要で、例えば、すでに導入している地域や事業者も多いが、混雑回避に向けた時間制や定員制、予約制などの工夫が求められる。混雑状況をリアルタイムに発信する事例もある。コロナ前と同じ受け入れ態勢でよいのかどうか、検討しておく必要がある」

 ――混雑を避けたいというニーズは、地方誘客に好機となりそうだ。

 「コロナ後は、混雑を避け、自然豊かなところに行きたいという意向を持つ人が増えそうだ。そうすると地方への関心が高まることになる。自然、アクティビティ、文化体験で構成されるアドベンチャー・ツーリズムも注目だ。コロナ後のニーズに対応し、地方の観光資源を磨き上げていく必要がある。JNTOとしても、外国人目線のコンサルティングや海外へのプロモーションを通じて地方誘客に努めていく」

 「もう一つの流れは、環境、文化、地域社会などを持続可能にする観光の在り方、サステナブル・ツーリズムへの意識の高まりだ。欧州などを中心に『サステナビリティのためなら旅費が高くなっても構わない』という考えを持つ人が増えている。環境や気候変動への関心の高まりで世界的な動きになる可能性が高く、観光分野における対応を検討すべきだ」

 ――訪日客を受け入れる地域の住民意識の変化も考慮する必要がある。

 「コロナ前には観光客の急激な増加に伴いオーバーツーリズムということが一部で言われ、住民生活や自然環境への影響が問題視された。訪日旅行が再開された時、以前と同じような状態ではいけない。サステナブル・ツーリズム、SDGs(持続可能な開発目標)などの観点から、JNTOとしても地域や観光庁と連携して取り組みたい」

――国際会議などMICEの復活も課題だ。

 「国際会議はコロナ禍でオンライン開催へのシフトが顕著だが、学術関係者などに聞いても、充実した議論にはリアルな会議が必要だと言う。もちろんリアルな開催でなければ、地域での旅行消費は生まれない。コロナの収束後もオンラインを併用したハイブリッド型の開催が残ると思うが、先を見据えた誘致に取り組んでいる」

 ――インバウンドの復活に向けて事業者や地域にメッセージを。

 「人には、知らない土地を旅したいという欲求が備わっている。だから必ず旅行者は戻ってくる。インバウンドというのは、旅行消費などの経済的な面だけでなく、言語や文化が異なる人と人とが交流することで、互いを理解し、国家間の平和にもつながるという大切な側面がある。そうした重要な意義のある産業だ。インバウンドが再開され、再び交流が活発になった時、あの苦しい時を我慢して良かったと言い合えるように皆さんとがんばっていきたい」

【聞き手・向野悟】


清野理理事長

 
 
 
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