新型コロナ感染拡大、訪日旅行に打撃


世界規模で移動に制限

JNTO 制約解除が「反転攻勢」の条件

 新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大を受けて、2020年2月の訪日外国人旅行者数は、前年同月比58.3%減と大幅に減少した。前年同月比の減少率は、東日本大震災直後の11年4月に記録した62.5%減に次ぐ水準だが、3月はさらに落ち込むと見られる。日本政府観光局(JNTO)は、世界的に人の移動制限が行われている現状は、過去の感染症流行時の事例とは異なる難しい事態と指摘した。ただ、感染症の終息を見据え、復興施策の準備は着々と進める考えだ。

国際観光に影響大

 感染症の流行は、国際観光への影響が大きい。成長が続いている世界全体の国際観光客数(統計・国連世界観光機関)が前年を下回った事例は、1995年以降、2度しかないが、いずれも感染症が主な要因だ。

 世界全体の国際観光客数は、SARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した2003年が前年比0.6%減だった。新型インフルエンザ流行時の09年は、前年の世界金融危機(リーマン・ショック)の影響が尾を引いたこともあり、前年比4.1%減だった。

訪日も過去に減少

 日本では、政府がビジット・ジャパン(訪日旅行促進)事業を開始した03年以降、訪日外国人旅行者数が一定期間にわたって市場を問わずに大幅に減少した主な事例は、SARS、世界金融危機(08~09年)、新型インフルエンザ、東日本大震災(11年)。

 SARSの流行では、日本では感染者が出なかったが、訪日旅行者数は03年4~7月にわたって前年同月の実績を下回った。最大の減少率は5月の34.2%減。世界保健機関(WHO)が03年7月に「封じ込め」を宣言して以降、アジアが増加に転じた。遠隔市場の欧米豪は8月から回復。8月の訪日旅行者数は13.5%増となった。

 09年の新型インフルエンザの場合、訪日旅行者数が世界金融危機の影響でマイナスが続いている最中、09年4月にメキシコで感染が発生し、5月に日本でも最初の感染者が出た。4月以降を新型インフルエンザの影響期間とすると、訪日旅行者数は09年4~10月にわたって前年同月の実績を下回った。

 新型インフルエンザの影響期間中、訪日旅行者数の最大の減少率は09年6月の37.7%減だった。11月には、世界金融危機の影響からの反動増はあるものの、前年同月比は2.1%増と増加に転じた。10年3月には厚生労働省が新型インフルエンザの流行第一波の鎮静化を発表した。

反転攻勢を準備

 JNTOの金子正志理事は「過去の感染症などの事例と違うのは、全世界が一斉にこれまでにない規模で越境の移動を規制し始めたこと。日本だけで対処できる状況ではなく、全世界的に制約が解除されないと元に戻らない」と説明した。

 JNTOでは、まずは国内の感染拡大を防止し、国内終息後の日本人の国内観光の復興が最優先課題と指摘した上で、インバウンドの「反転攻勢」に向けた準備も着々と進めていることを強調した。「終息時には、各国が同じように(国際観光の)マーケットの獲得に動き出す。そのため周到な準備の上で機を逃さずにできるだけ早く誘客をスタートさせる必要がある」(金子理事)。

 終息時の反転攻勢へのポイントとして、プロモーションの早期起動と即効性の確保▽プロモーションにおける航空会社や旅行会社との連携強化▽日本が安心して観光できる平常状態にあることの効果的な情報発信―を挙げた。

 
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