政府が昨年12月に設置した「MICE推進関係府省連絡会議」はこのほど、関係府省庁の意見、検討を踏まえ、MICEの誘致、開催に関する施策の強化に向けた行動計画「関係府省MICE支援アクションプラン」の中間とりまとめを公表した。今年度末までには最終的な行動計画を策定する。
行動計画の中間とりまとめの全文(文末に添付の「参考」部分除く)は次の通り。
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はじめに
政府は、2016年3月、「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定し、訪日外国人旅行者を2020年に4千万人、2030年に6千万人へ増加させ、質の高い観光交流を加速させることを目標として打ち出した。同ビジョンにおいて、MICEについては、その誘致促進に向け政府レベルで支援する体制を構築するため、関係府省連絡会議を16年中に新設し、(1)レセプションでの国立施設の使用許可、(2)ポスト・コンベンション/展示会向け施設の拡充、(3)グローバル企業のビジネス活動を支える会議施設等の整備への支援等について検討することが盛り込まれている。これを受け、本年5月に観光立国推進閣僚会議において策定された「観光ビジョン実現プログラム2017」および、本年6月に日本経済再生本部において策定された「未来投資戦略2017」においては、MICE誘致・開催を政府横断的に支援するため、「MICE推進関係府省連絡会議」において、政府横断的に支援するMICE案件についての支援策をまとめた「関係府省MICE支援アクションプラン」(仮称)を本年度中に策定し、具体的な取り組みの検討を進めることが位置づけられたところである。
今般、昨年12月に設置された「MICE推進関係府省連絡会議」における関係府省の意見を踏まえ、MICE誘致に関し府省連携が必要となる取り組みの方向性を、現時点のファーストステップとして、中間的にとりまとめた。
関係府省は今後、本中間とりまとめを踏まえMMICE推進策の実施及び検討を進め、本年度内に「関係府省MICE支援アクションプラン」としてとりまとめ、同プランに位置づけられた施策を関係府省が連携して実施するものである。
1 今後の取り組みの基本的考え方
本中間とりまとめは、以下の三つの考え方を元に策定している。
(1)TEAM JAPANによる総力を挙げた取り組み
国際会議の誘致・開催に際しては、国・都市レベルで関係者が一体となって取り組みに協力することが、海外との競争に勝つためにも極めて重要であり、国レベルにおける関係府省の連携を一層強化・深化させる。また、現在の関係府省連絡会議は国際会議の誘致を主眼に置いた府省の構成となっているところ、今後はMICE実施に当たっての課題の議論の場として、同会議の体制強化を進める必要がある。
(2)開催地としての魅力向上
開催地としての魅力向上支援 国際会議の開催プログラムにおいて参加者に特別な経験をもたらすユニークベニューについては、わが国でも利用可能施設の増加等そのメニューの充実に努めている一方、対象施設の開発および利用について必ずしも十分に進んでいない状況であることから、国レベルにおいても所有施設のユニークベニュー化および活用を積極的に進める。また、今後、M(企業内会議)、I(報奨旅行)の誘致を進めるためには、日本を選択してもらうために企業内会議や報奨旅行の実施地を決定する決定権者に訴求する魅力的なメニューの開発が必要である。
(3)誘致力のさらなる強化
わが国における国際会議の誘致は、研究者や学会等がその中心的役割を果たす案件が多いが、各々の属人的な取り組みによるところも大きく、研究者等への情報提供など、誘致活動のさらなる支援が必要である。
また、潜在的需要の掘り起こし等に向け、海外に対して業務展開をしている国の関係機関と連携する。
2 主要施策
(1)TEAM JAPANによる総力を挙げた誘致体制の構築
○国際会議の誘致に向けた円滑な支援体制の構築
・国際会議等の誘致に当たり、国によるバックアップ体制が構築されていることがアピールとなる場合がある。このため、各府省は関係する研究者・学会・団体に国際会議等誘致に向けた動きがある場合は、必要に応じて誘致に関係する団体等と調整した上で、観光庁に情報提供することとする。このうち、大臣による招請レターの発出や在外公館におけるレセプション等、関係各省による支援が誘致に効果的と考えられる案件については、当該国際会議等の誘致支援を希望する府省または観光庁は十分な時間的余裕を持って要請を行い、それに基づき、関係府省が連携し、支援を行う。観光庁は誘致の成否に関し、当該関係府省に通知する。
・各府省大臣・内閣総理大臣の招請レターは、会議誘致等を国として支援する姿勢と熱意を示す重要なツールであるが、開催される国際会議等の分野は多岐に渡るため、当該分野について、各府省内での所管部局が必ずしも明確でないこともあり得る。この場合においても、迅速・円滑な招請レター発出を確保するため、観光庁は関係府省の協力の下、招請レター発出に関し発出の可否の判断期限の設定等一定のルールを策定・関係者間で共有し、JNTO等を通じて誘致活動を行う各都市等の関係者にも周知する。
○MICE推進関係府省連絡会議の活用
MICE推進関係府省連絡会議を活用し、以下の取り組みを推進する。
(1)グローバルMICE都市・都市力強化対策本部(仮称)における課題の抽出・検討
・12年度より、観光庁が、コンベンションビューロー(以下「CB」)の機能高度化支援等を行ってきたグローバルMICE都市(12都市)が蓄積している高度な知見・経験や実施している先進的取り組み、直面している課題等を国・地方を挙げた関係者間で情報共有を図り、連携を深化させるため、グローバルMICE都市と、観光庁・経済産業省・JNTO・MICE有識者等で構成される会議を設置するグローバルMICE都市・都市力強化対策本部(仮称)を設置することとし、そこで明らかになった国際会議等の誘致に係る課題のうち国の規制によるものがある場合は、当該規制の趣旨を損なわないよう留意しつつ、運用上の工夫、制度的改善その他の課題解決を可能とする方策について検討を行う。
(2)MICE誘致活動実施者が利用可能な補助・支援制度(CBによるものを含む)のリスト化
・観光庁は、国際会議誘致に取り組む団体等が会議誘致・開催に向けて利用可能な関係府省の補助制度や支援制度についてリスト化し、公表する。その際、国が有する制度のみならず、地方自治体やCB等の利用可能な制度についても盛り込むものとする。
(3)国関係団体所属のキーパーソンのリスト化及び関係組織への情報提供
・観光庁は関係府省の協力も得ながら、国際会議誘致のための有力な研究者・学会等をリスト化し、JNTOおよび各CBなど誘致推進組織に提供する。
(4)文化財および国立施設のユニークベニュー化拡充等
・関係府省の協力の下、観光庁はユニークベニューに利用可能な文化財および国立施設等をリストアップした「ユニークベニュー施設リスト」を作成し、関係府省は連携してPRを行う。
(5)国際会議開催時の課題の議論
・現在の関係府省連絡会議は国際会議の誘致を主眼に置いた府省の構成となっているところ、今後は同会議を会議開催時の課題を議論する場として活用することを視野に入れ、観光庁をはじめとする関係府省は同会議の体制強化について検討する。
(2)開催地としての魅力向上
○国が開催に関わる会議におけるユニークベニューの積極的活用
・観光庁においてリストアップした「ユニークベニュー施設リスト」について、各府省に対して情報共有を徹底するとともに、各府省が開催に関わる国際会議において、ユニークベニューの積極的な活用を促進する。
・観光庁は、各府省が主催する国際会議におけるユニークベニュー利用実績をまとめ、活用の事例として収集し、収集結果を関係府省および各CB等に共有することで、ユニークベニュー活用の気運を高める。
○国立施設の円滑な利用に向けた取り組み
・国立施設の利用について、利用者、国立施設双方の業務を円滑にするため、観光庁・関係府省・JNTOは、利用申請フロー等運用基準の策定に向け検討する。
○魅力的で多様なMICE(特にM・I)商品開発に向けてのニーズ調査
・観光庁は、各地域の観光資源・特色を活かしたMICE商品の造成に関するニーズや素材の調査を行う。調査の結果を踏まえ、観光庁をはじめとする関係府省は、協働して、民間における商品造成の促進のための取り組みを検討する。
(3)誘致力のさらなる強化
○JNTO・JETRO・在外公館等の連携による海外広報強化
・MICEの誘致に向け、観光庁・経済産業省・外務省・JNTO等が連携し、JETROや在外公館等海外に拠点を持つ関係機関を通じ、海外企業等に対し、日本での社内会議開催や報奨旅行の実施、日本開催の展示会への出展をPRする。その際、円滑な誘致活動を可能とするためのツールキットを整備する。
○国際会議誘致に対する意識向上の促進
・国際会議誘致に対する意識向上を促進するため、国際会議誘致に成功した研究者・学会等の好事例の紹介の在り方について、内閣府・文部科学省・観光庁をはじめとする関係府省において検討を行う。
○国際会議の誘致支援に向けた日本学術会議との連携
・研究者による国際会議の誘致活動について、日本学術会議とJNTOの連携を強化し、日本学術会議の有する人的ネットワークを十分に活用して誘致に関する支援を推進する。
○留学生OB人材へのアプローチの強化
・関係府省の協力の下、観光庁と日本学生支援機構やJICA等、海外からの日本への留学生等の受け入れ支援を実施している機関は連携して、過去の日本留学等経験者に対して、日本での社内会議開催や報奨旅行の実施、日本開催の展示会への出展をPRする。その際、円滑な誘致活動を可能とするためのツールキットを整備する。
3 その他個別施策
(1)MICE施設の運営等におけるコンセッション方式の導入促進
・PPP/PFI推進アクションプラン(17年改定版)(17年6月9日民間資金等活用事業推進会議決定)において、MICE施設については17年度から19年度までを集中強化期間として、6件のコンセッション事業の具体化を目標としている。このため、観光庁は、内閣府・経済産業省・国土交通省と連携して、コンセッション方式の先行事例の進捗状況、地方公共団体によるMICE施設の新設・改良状況、導入に向けて利用可能な支援制度、コンセッション方式のメリット等に係る情報を他の地方公共団体に対し積極的に提供し、施設の新設・増設のみならず、既存施設も含め、同方式の導入を促していく。
(2)大型スポーツイベントの日本開催を契機としたスポーツMICEへの取り組み
・19年のラグビーワールドカップ、20年の東京オリンピック・パラリンピック、21年のワールドマスターゲームズ等の日本開催を契機に、観光庁とスポーツ庁は連携して国際競技大会や国際会議等のスポーツMICEの積極的な招致、開催を支援することにより、国際的地位の向上および地域スポーツ・経済の活性化を推進する。
(3)展示会分野でのインバウンド促進
・関係府省協力の下経済産業省は、日本の各種展示会への海外のバイヤーの招致の促進および海外での展示会への出展企業に対する日本の展示会への出展誘致を促進するため、受け入れ体制の整備及び海外向けPR活動の方策等について検討する。
以上