中国駐東京観光代表処は、中国国内への日本人客誘致へPRを強化している。アピールする一つがシルクロードの旅。西安を起点に中央アジア、西アジア、遠くヨーロッパまでを結ぶこの道は、さまざまな物資を運ぶ交易路として紀元前から栄え、当時をしのばせる史跡が今も数多い。今回、その一部を紹介する。
【西安】13王朝が都を置く
かつて長安と称された現在の陝西省の省都で、中国西北地区最大の都市でもある。紀元前11世紀から秦、漢、唐の中国史上で最も盛んな三つの王朝を含む13の王朝が都を置き、東西側文明をつなぐシルクロードはここから西へと延びていった。
●秦の始皇帝陵兵馬俑博物館
館内に1、2、3号の三つの兵馬俑坑があり、共同で膨大な軍陣を構成している。三つの坑は「品」という文字の形で配置され、総面積は2万2780平方メートル。坑内に実物大の陶俑と陶馬が約7400余体、戦車130余台が置かれている。
展示される秦の兵馬俑は大きく、きめ細かに作られている。秦俑は秦の始皇帝の近衛兵をモデルとして作られたものといわれ、秦代職人の丹念な制作を経て、顔容と表情がそれぞれ違いいきいきとしている。
西安を代表する観光地、秦の始皇帝陵兵馬俑博物館
●大慈恩寺と大雁塔
大慈恩寺は唐の貞観22年(648年)、太子の李治が母の文徳皇后をしのぶために建てられた、唐代の長安城内で最も有名で壮観な仏教寺院。
大雁塔は大慈恩寺境内にあり、唐の永徽3年(652年)に唐代の高僧玄奘がインドから持って帰った梵文経典と仏像舎利を祭り、保存するため築造されたもの。7重あり、高さ64メートル。
●西安碑林博物館
漢代以来の石碑3千余点が残り、中国で最も多く保存されている。
博物館は敷地面積3万1900平方メートル。主に孔廟、碑林、石刻芸術室の三つの部分からなり、収蔵される文化財は1万1千余点。石碑のほか文物、写真、図面、模型を使って周、秦、漢、隋、唐の各代の政治、経済、文化、社会など各方面の概況を紹介している。
●陝西歴史博物館
常設陳列、臨時陳列、特別陳列の三つの部分に分かれ、展示室の総面積は1万1千平方メートル。
陳列される文物は3千余点。陝西省で出土した数十万点の文物の中から精選されたもの。特に唐代陵墓の壁画真品は色彩がきらびやかな美しい芸術品。
●鼓楼
昔、楼の上に大きな太鼓が一つあり、夕方に太鼓を打って時を知らせていたことから鼓楼と呼ばれるようになった。明の洪武13年(1380年)に建てられ、2回にわたり修繕されている。
【敦煌】西域文化が花開く
甘粛省西部、河西回廊の最西端に位置する敦煌は、前漢の武帝が西域に置いた河西4郡(武威、張掖、酒泉、敦煌)の一つ。中国、インド、ギリシャ、イスラムの文化がここで交わり、華やかな西域文化が生まれた。
●莫高窟
世界遺産で中国三大石窟の一つ。前秦時代の366年に掘削が開始され、その後約千年にわたり芸術的にも優れた塑像や壁画を擁する石窟が造られていった。
石窟は南北約1600メートル、上下5層からなり、現存する洞窟は492カ所。莫高窟で最も大きな塑像と雄大な壁画が有名な第96窟など、傑作が観賞できる。
敦煌の莫高窟
●鳴砂山・月牙泉
5色の粒状の砂が堆積してできた砂山・鳴砂山と、麓にある三日月型の青く澄んだ泉・月牙泉。キャメル(ラクダ)ライディングやサンドスキー、サンドバイクなどのアクティビティーを楽しめる。
●玉門関
敦煌北西の郊外にある古代シルクロードの重要な関所。ホータンから玉が運ばれるとき、この関を通ったことからその名が付いたという。
【蘭州】河西回廊の入り口
甘粛省の省都でシルクロードの河西回廊の入り口。チベット方面へ向かう青海の道との分岐点でもある。前漢時代に西域に対する守りの地として、金城と呼ばれた黄河沿いの街。
●炳霊寺石窟
川岸の切り立った崖に掘られた180を超える石窟に、仏像や壁画が当時のまま残されている。2014年に「シルクロード:長安=天山回廊の交易路網」の一部として世界文化遺産に登録された。
●甘粛省博物館
省内の文化財や化石を収蔵、展示する総合博物館。彩陶、竹簡の文書、織物、金銀の仏舎利棺、仏教芸術品など約10万点の収蔵物があり、特に古生物の化石類は必見。
●白塔山公園
蘭州の街と黄河の雄大な流れを一望する公園。頂上に元代の白塔がそびえ、蘭州碑林と呼ばれる400メートルに及ぶ石碑の回廊、東屋など、歴史・文化的価値の高い建造物がある。
白塔山公園
●五泉山公園
甘露、掬月、摸子、惠、蒙の五つの泉があることからその名が付いたという。皋蘭山の北麓に位置する標高1600メートル以上、敷地面積26万7千平方メートルの山間に、明・清時代を中心とした古代建築物群十数カ所が広がっている。