宿泊業を魅力的な職場に 山梨県 観光文化スポーツ部部長 落合直樹氏に聞く


山梨県 観光文化スポーツ部部長 落合直樹氏

信玄公祭りが過去最高 宿泊施設DXで賃上げ支援

 ――コロナ禍明けを象徴するように、今年は全国各地で大規模なお祭りやイベントのリアル開催が再開された。山梨県では、第50回信玄公祭りが10月27日から29日の3日間行われた。

 「おかげさまで3日間の総観客動員数は過去最高の23万5千人を記録した。信玄公祭りは、県内最大の観光イベントで、世界一の武者行列を誇る。約450年前に宿敵上杉謙信と勝敗を決するため川中島の合戦へ出陣していった武田信玄公率いる甲州軍団の雄姿を再現している。2012年の第41回信玄公祭りでは、千人を超える『侍の最大集合記録』としてギネス世界一に認定された。今年は国内外から過去最多の約1300人の軍勢が結集し、勇壮華麗な行進が展開された。毎年、著名人に大将となる信玄公役と信玄公の軍師として知られる山本勘助役をお願いしている。今年は信玄公役を女性として初めて、モデル・俳優の冨永愛さんに、勘助役を都留市出身で俳優の白須慶子さんに務めていただいた」

 ――武者行列には外国人も参加したのか。

 「日本旅行業協会(JATA)関東支部山梨県地区委員会にもご協力いただき、『グローバル・サムライ隊』として外国人観光客が参加できる隊を設けた。65人の外国人が参加した。会場各所に通訳ガイドや多言語看板を配置。英語版ガイドブックも用意して外国人観光客の受け入れ環境を整えた。沿道には英語解説付きの特別観覧席も設けた。信玄公祭りは、外国人観光客も楽しめる『The World’s Largest Samurai Parade』として、今後も世界に向けて発信していく」

 ――山梨県の観光客数の現況はどうか。

 「2022年の観光入込客数調査の結果によると、観光入込客数は前年比49%増の2738万4千人、観光消費額は同14%増の3066億円、日帰り客数は同45%増の1924万6千人、宿泊客数は同59.3%増の813万8千人、県外客数は同66.7%増の2232万9千人だった。いずれの数値も前年比ではアップしており、コロナ禍で大きく打撃を受けた本県観光産業の回復がうかがえるような状況。ただ、コロナ前の水準と比較すると観光消費額では約7割までしか回復していない。国が発表した10月のインバウンド観光客の推計によると、単月でコロナ禍前の水準を初めて超え、本県でも富士山周辺地域を中心ににぎわいを見せていることから、引き続き観光消費額アップの施策を進めていく」

 ――宿泊需要は着実な回復基調にあるが、旅館・ホテルは人手不足などにあえいでいる。県の現状認識とサポート体制についてお伺いしたい。

 「宿泊事業者の状況については、随時、職員が現場に赴きお話を伺う機会を設けるよう努めているが、ご指摘のとおり人手不足は深刻で、販売客室数を抑制するなど何とかしのいでいる状況だと認識している。状況の改善に向けては、外国人労働者の活用などさまざまな処方箋があるが、根本的には従業員の賃上げや就業時間の見直しなど労働環境の改善を図っていくことが必要だと考えている。既に事業者の皆さまも給料を上げたり、休日の定期制を高めたりさまざまな工夫をされているので、県としてもそうした取り組みを応援することとしている。具体的には、今秋から従業員の生産性向上にDXを活用する事業をスタートさせた。この事業を通じ、DXを活用し、例えばチェックイン・チェックアウトを自動化すると同じ従業員数でどこまで多くの宿泊者に対応ができるようになるのかなど、具体的な事例に基づく知見を集積してまいりたい」

 ――最後に、目指す山梨県観光産業の将来像についてお伺いしたい。

 「本県にとって観光は最重要産業の一つ。訪れる人たちにとっても、働く人たちにとっても魅力的でなければならない。そのためには、足下の課題として、従業員の処遇の問題は避けては通れないと考えているが、中長期的には、風光明媚な自然、豊かな食、東京圏との近接性など山梨県の特性が100%活用され、観光産業に新たなチャレンジが次々と生まれ、県全体でそれを応援し、そうした姿を見て育った将来世代がまた新たな挑戦をする、そんな好循環が実現されている観光産業の将来像を目指し、努力していきたい」

 

 おちあい・なおき 1987年山梨県庁入庁。2018年山梨県観光部観光プロモーション課長、19年同観光企画課長、20年県民生活部理事(グリーン・ゾーン推進課長事務取扱)、21年山梨県リニア未来創造局理事、22年リニア未来創造局長などを経て、23年4月から現職。【聞き手・kankokeizai.com編集長 江口英一】

 

 
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