北陸新幹線 金沢-敦賀開業 沿線旅館経営者「首都圏直結で誘客期待」


福井駅を出発する開業初日の北陸新幹線。手を振る客に運転士も応える

 北陸新幹線の金沢(石川県)―敦賀(福井県)間が16日に延伸開業した。延伸区間の各駅では記念のセレモニーやイベントが開かれ、終日多くの観光客、地元客らでにぎわった。沿線には著名な温泉地も多く、旅館・ホテル経営者は首都圏と直結したことによる誘客効果を期待した。

 開業したのは金沢―敦賀間の約125キロ。東京駅から敦賀駅まで最短で3時間8分、途中の福井駅まで同2時間51分と、従来から50分、36分のそれぞれ時間短縮となった。延伸区間は石川県内に小松、加賀温泉の2駅、福井県内に芦原温泉、福井、越前たけふ、敦賀の4駅が新設された。

●敦賀駅

 敦賀駅の新幹線ホームはビルの12階に相当する高さ約37メートルの3階に新設され、大阪、名古屋から福井、金沢方面に向かう乗客は1階の在来線ホームから乗り換えのために移動をすることになる。約8分の移動時間となるが、大阪―金沢間、名古屋―金沢間ともに新幹線の開業以降は20分前後の時間短縮となった。
駅前では敦賀市の観光をアピールする「観光つるがキャンペーン隊」が笑顔でお出迎え。「ようこそ!つるがへ」と書かれた横断幕を持ち、観光客らに応対していた。敦賀観光協会の池田裕太郎会長は「敦賀は歴史、文化、鉄道と港の町。開業日まで、できる限りのことをやってきた。お客さまにリピーターになってもらえるよう、これからもおもてなしをしっかり行いたい」と述べた。

●福井駅

 自称「恐竜王国」の福井県。日本国内で見つかった恐竜化石のうち、約8割が同県で発見されているという。同県勝山市には本物の骨を使った恐竜骨格や化石を展示する「県立恐竜博物館」があり、子供から大人まで幅広い層に人気だ。

 同県の玄関口、福井駅の駅頭には恐竜の実物大の動くモニュメントが設置され、新幹線の開業日も多くの観光客らがカメラやスマートフォンで興味深げに写真を撮っていた。

 福井市商工労働部観光文化局おもてなし観光推進課の今村知美副課長は「県民50年の願いがようやくかないうれしい。市の一押しは一乗谷朝倉氏遺跡。博物館もオープンしたので見ていただきたい」と同市の魅力をアピールした。

横断幕を手にする敦賀観光協会の池田会長(右端)と観光つるがキャンペーン隊

 

●芦原温泉駅

 あわら温泉の最寄り駅、芦原温泉駅も新幹線が開通し、駅とその周辺は歓迎ムード一色に。駅構内では「ようこそあわら温泉へ」と、同温泉女将の会のメンバーが着物姿で一列に並び、観光客ら一人一人に声を掛けていた。

 「開業が予定より1年遅れたが、逆にしっかりと準備を行え、同業者同士、地域の関係者、行政との連携もさらに強固になった」と語るのは、同温泉の旅館「グランディア芳泉」の山口高澄常務。

 同館の宿泊客は関西方面からが約3割と多く、関東方面からは約1割にとどまっていたが、「先行受注を見ると、関東からのお客さまが2割強と増え、今後もそれ以上に増えるのではと予測している」と新幹線の開業効果に手応えを感じている。

 関東からの顧客の宿泊単価が高いことから、新幹線開通後のマーケットの変化を見据えてリニューアルを実施。全室半露天風呂付きの「さくら亭スイート」を昨年3月にオープンしたほか、恐竜のモニュメントを置いたユニークな「恐竜ルーム」を2021年に開設。個室料亭も開設するなど館内の高付加価値化を図っている。

グランディア芳泉の山口常務

●加賀温泉駅

 石川県の四つの温泉地(山代温泉、山中温泉、片山津温泉、粟津温泉)の最寄り駅、加賀温泉駅。駅前で開業日とその翌日の2日間にわたり、「加賀未来市」と題したイベントが行われた。ステージでのアトラクションや出店のほか、能登半島地震の被災地支援の募金コーナーも。駅構内では「ようこそ石川・加賀温泉郷へ」と書かれた横断幕を手にした地元観光協会、旅館組合のメンバーが新幹線の乗降客に記念品を配布した。

 山代温泉の旅館「吉田屋山王閣」の吉田有志社長は「山代温泉は3割弱が関西からのお客さまで、首都圏からが2割強。今後は首都圏から来やすくなるのでそのニーズを取り込みたい。関西からは時間的には早くなったが列車が乗り継ぎとなった。どう、お客さまに今まで通りお越しいただくか」と今後の課題を語る。
同館も新幹線の開通を視野に、インバウンドの増加も見据えて館内のリニューアルを実施。露天風呂付き客室や個室の食事処を整備した。

 山代温泉は来年、開湯1300年の節目を迎える。「新幹線ができ、来年は大阪・関西万博もある。(記念事業について)何をどのぐらいの規模で行うか。現在、地域で話し合っているところだ」(吉田社長)。地震の大きな被害を受けた能登地域に対しては「”オール石川”で取り組まなければならないという意識がある」と、復興に向けた取り組みを全県挙げて行いたいとの思いを述べた。

吉田屋山王閣の吉田社長

 

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒