全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連、佐藤信幸会長=山形県・日本の宿古窯)は12日、山梨県甲府市湯村温泉の甲府富士屋ホテルと常磐ホテルで第91回全国大会を開いた。全国の旅館・ホテル組合員、来賓などおよそ千人が参加。「防災拠点となる、災害に強い宿づくりの実現を期す」「税制の見直しと融資制度の改善を期す」など10項目の決議文を採択したが、消費税の外税表示に関わる“緊急動議”が会場から出され、1項目を急きょ追加。「消費税の外税表示による確実な価格転嫁の実現を期す」とする決議文を併せて採択した。
約2時間に及ぶ式典の後半で、群馬県旅館ホテル生活衛生同業組合の市川捷次理事長が「大会宣言」、新潟県旅館ホテル生活衛生同業組合の野澤幸司理事長が「決議」を朗読したあと、全旅連女性経営者の会(JKK)の前会長で、旅館「大和屋本店」(大阪市)の石橋利栄さんが客席から発言。「私たち旅館業は消費税の価格転嫁が非常に困難な状況にある。このたびの消費税アップに伴い、全旅連が一致団結して外税表示を実施するよう、決議文書に盛り込むことを強く要望する」と述べた。
佐藤会長が会場に意見を求めたところ、全会一致で緊急動議に賛同。決議文を1項目追加することにした。
消費税の外税表示は、消費税転嫁対策特別措置法の成立により、今年10月1日から2017年3月31日まで可能になった。全旅連では約1万6千軒の組合員挙げて、宿泊料金などの外税表示を推進する方針だ。
佐藤会長は「今国会で消費税転嫁対策特別措置法が可決された。これにより期間限定だが、われわれも外税表示が認められることになった。税金は消費者が支払うものだが、総額表示が義務付けられた2004年から、お客さまとの交渉の中で『消費税分はサービスしてくれないか』という話が多くなった。消費税が8%、10%と上がっていけば、われわれの商売は大変なことになる。外税表示に皆さまのご協力をお願いしたい」と述べた。
佐藤会長はこのほか、旅館・ホテルの防災問題にも触れ、「南海トラフ巨大地震で950万人の避難民が出ると想定されている。われわれ組合員は全国で150万人の収容能力があり、避難民の約2割の受け入れが可能だ。被災者の命を守るため、組合員の皆さまはいざという時すぐに対応できるよう、各県、各市町村と防災協定を結ぶことをお願いしたい」と述べた。
式典ではこのほか、開催地の山梨県から山梨県旅館生活衛生同業組合の笹本森雄理事長(全国大会実行委員長)、甲府市の宮島雅展市長、政界から自民党の竹下亘・組織運動本部長、民主党の前田武志・企業団体対策委員長らがあいさつ。元皇族で、三笠宮崇仁さまの長女、近衛甯子さんも来賓で出席した。
表彰では、厚生労働省健康局長表彰、全国生活衛生同業組合中央会理事長感謝状などのほか、第16回「人に優しい地域の宿づくり賞」で厚生労働大臣賞を受賞した道後温泉旅館協同組合(愛媛県)を表彰した。「人に優しい」ではほかに、伊香保温泉観光振興協議会(群馬県)が観光経済新聞社社長賞を受賞した。
来年の全国大会は宮城県で開催。同県ホテル旅館生活衛生同業組合の佐藤勘三郎理事長は「宮城は間違いなく復興への道をたどっている。ぜひ、お越しいただき、ご自身の目でその状況を確認していただきたい」と述べた。
約1000人が参加した大会(甲府富士屋ホテルでの式典)