全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連、佐藤信幸会長=山形県・日本の宿古窯)は7日、東京のホテルオークラ東京で全国の旅館・ホテル組合員約800人を集めて第89回全国大会を開いた。東日本大震災の影響で開催の是非が検討されたが、「ひとりでも多くの組合員に立ち直ってもらいたい」と「元気になろう観光日本、がんばれ東日本」をテーマに敢行した。式典の終わりは例年の万歳三唱に代え、参加者全員で「がんばろう」コールを行い、震災からの早期の復興を誓った。
佐藤会長は「被災地はもちろん、全国各地で旅行、外出が自粛され、外国人観光客もすべてキャンセルになった。我が業界が(震災の)最大の被害を受けたといっても過言ではない」と述べるとともに、「人道的見地から我々は直ちに行動を起こし、被災者の受け入れに奔走した。この国難といえる重大事に、国の役に立つことができたと思っている」と、災害救助法に基づく被災者の受け入れで業界の存在意義を示したことを強調した。
佐藤会長はさらに、福島第1原発事故について「今後も国内外のお客さまの旅行行動に大きく影響してくる」と、国と東京電力に補償を強く求めていく考えを示した。金融問題では、このほど政府が新設した「東日本大震災復興緊急保証」の利用対象者に「主に宿泊業、旅行業を想定」と明記されたことに「全旅連で努力した成果が少しずつ出てきている」とした。
来賓からは6氏があいさつ。自民党の大島理森副総裁、観光産業振興議員連盟の細田博之会長、生活衛生議員連盟の伊吹文明会長ほか、関係省庁から厚生労働省健康局生活衛生課の堀江裕課長、観光庁の溝畑宏長官、開催地の東京都から佐藤広副知事があいさつした。
表彰式では、第14回人に優しい地域の宿づくり賞で全旅連会長賞を受賞した静岡県ホテル旅館生活衛生同業組合女性部あけぼの会、観光経済新聞社社長賞を受賞した千葉県旅館ホテル生活衛生同業組合千葉県菜の花女将会などに佐藤会長、江口恒明本社社長から表彰状を授与。
式典の後半は野口秀夫副会長が「同業同士団結の絆を強め、困難に立ち向かう」とする大会宣言、上月敬一郎副会長が「被災組合員施設の早期復興を期す」など12項目からなる決議文を読み上げ、拍手で採択。全旅連青年部の音頭で、会場一体で「がんばろう」のシュプレヒコールを上げた。
式典前の第1部では日本政策投資銀行の藻谷浩介参事役が「震災後日本と観光の再生」をテーマに講演した。
ベストセラー「デフレの正体」の作者で、現役世代の人口減少が日本経済に大きな影響を与えているとする藻谷氏は「宿泊施設が提供する旧来型サービスの市場規模は限界が来ている。泊まって食べるだけでない、連泊や日中の時間消費メニューを新商品として提供する必要がある」と説いた。
式典後は分科会を開催。経営研究委員会担当の「危機を機会と捉える」では、調理場の運営にかかわるパネルディスカッションと様々な助成金に関する専門家の講演、女性経営者の会担当の「消すな、燃やし続けろ宿屋の火」では、旅館経営者親子4組による事業継承に関するパネルディスカッションを行った。
5年ぶりとなった東京での全国大会