入り江を貸し切る 体験型ハイエンドリゾート「COVA」、三重県志摩半島に23年4月オープン

  • 2022年9月26日

現在の伴田浦(写真中央の入り江)

 真珠養殖発祥の地、三重県志摩半島南部の英虞湾。1946年に戦後初の国立公園に指定された伊勢志摩国立公園の中心で、複雑に入り組んだリアス式海岸に大小60の島々と数多くの真珠養殖筏(いかだ)が浮かぶ。その風光明媚な里海は、2016年5月に開催された「G7伊勢志摩サミット」を契機に世界各国に知られるようになった。

現在の伴田浦(写真中央の入り江

 

 真珠の養殖・加工販売事業の覚田真珠(三重県伊勢市)は1932年創業の老舗。現社長の覚田譲治社長は3代目経営者だ。創業社長の祖父、覚田嘉蔵社長は英虞湾の片田伴田浦での真珠養殖に加えて、熊本県天草にもアコヤ真珠貝の養殖場を開設。同社はその後、オーストラリア、インドネシアでの養殖にも進出し、主に海外販路の拡大で事業を拡大してきた。1999年にはJRと近鉄の伊勢市駅前に全100室のビジネスホテル「伊勢パールピアホテル」を開業。宿泊業にも進出した。伊勢神宮の外宮まで徒歩15分の好立地。大浴場やサウナも備えたビジネスホテルで、観光客だけでなく、出張の定宿として利用するビジネスマンも多い。伊勢神宮内宮前の「おはらい町」にある覚田真珠直営店「カクダパールズ」の商品をフロントロビーのショーケースに展示し、小売販売も行っている。

覚田真珠の覚田譲治社長

 

 コロナ禍は観光業界を直撃したが、その影響は真珠業界にも及んでいる。国内外から伊勢志摩を訪れる観光客の減少は、真珠の国内販売にも打撃を与えた。加えて、2019年夏ごろにアコヤ貝の原因不明の大量死が発生。真珠の国内生産量は2年連続で前年比1割減となった。ただ、品質の高い真珠の価格は逆に1~2割高騰。「コロナ禍で真珠・真珠宝飾品の商談のための海外出張がゼロになりましたが、海外の主要取引先とは長年の信頼関係が出来上がっており、輸出は順調。年間数千万円の出張経費が削減となった上、真珠価格の値上がりで、当社の業績は好調です」(覚田社長)という。

直営店「カクダパールズ」

 

 それでも安閑としてもいられない。覚田社長は「私が子供の頃の英虞湾は、見渡す限りが真珠養殖の筏で埋まっていましたが、今では目視で数えられるレベルにまで激減しています」と話す。覚田真珠の国内養殖場もいまは天草のみだ。

 「私にとって英虞湾は、子供の頃からの楽しい思い出が詰まった最高の“遊び場”であり“成長の場”でした。大人になってからは、自然と共生の中で人が生き抜くことの厳しさを知った“仕事場”であり、今は里海の大切さを教えてくれる“学びの場”でもあります」。そう語る覚田社長。「心の原風景を取り戻し、“未来の里海”を描きたい」と思い、保有する片田伴田浦の真珠養殖場の工場(こうば)跡地を富裕層向けプライベートリゾートとして再生させることを決めた。伴田浦は完全な入り江で、その全体が全盛期には100人以上の人が働く“覚田の工場”だった。

1950年代の覚田の工場(カクダのコーバ)

 

 リゾート施設の名称は「COVA」。工場をフルリノベーションし、宿泊棟、レセプション・レストラン棟、サウナ棟、体験棟などを配置。23年4月の開業を目指して建設工事中だ。

 全4棟の宿泊棟は、全室がオーシャンビューのプライベートヴィラ形式。国立公園内のため建築物の新築が禁止されているハンデを逆手に取り、天井の木製の梁など趣のある工場の躯体をそのまま残して活用している。70平方メートル超のスイートにプライベートサウナ、プライベート水風呂も備える。

 レセプション・レストラン棟のダイニングで提供する食事は、伊勢海老(えび)、ヒオウギ貝、アコヤ貝、あおさのり、ワタリガニ、シマアジなどの地産地消。和食の料理長が志摩半島の魚介を軸とした「イノベーティブ・フュージョン料理」で国内外から訪れるハイエンド客の舌をもてなす。

 サウナ棟は、備長炭の「サウナSPA」。志摩半島のローカルウッドであるウバメガシを計画伐採して、備長炭に加工し、サウナに使う。

レセプション・レストラン棟の内部(イメージ)

レセプション・レストラン棟の外観(イメージ)

 

 さまざまなアクティビティもオールインクルーシブで提供する。敷地内での真珠養殖を復活させ、真珠の挿核体験や珠出し体験を実施。近隣漁業者らの協力も得て、伊勢海老漁の網外し体験、アオサ収穫体験、ヒオウギ貝養殖体験も行う。隣接する畑や果樹園でのオリーブ、レモン、ハーブなどの農業体験。また、てこね寿司(すし)、きんこ芋、伊勢海老汁などの地元料理ワークショップも提供する計画だ。

体験棟の外観(イメージ)

 

 「春と秋は、地元の特産品・食材の収穫体験や料理教室、バーベキュー、海釣りやシュノーケリングやダイビング、そして特定地域の景観めぐりを、夏には加えてカヌー、カヤック、スタンドアップパドルボート(SUP)、そして冬には真珠の収穫を楽しんでいただきます。ポンツーンボートでのサンセットクルーズ、サンライズクルーズ、スタークルーズ、近隣の島のプライベートビーチもご用意しています」と覚田社長。

宿泊棟の内部(イメージ)

 

 想定宿泊単価は2名以上(最大4名)のオールインクルーシブ(1泊2食、ドリンク、備長炭サウナ、各種アクティビティが全て込み)で1人11万円から。

 「英虞湾の美しさの核心はその美しい自然の中にある人と自然の営みです。半ば放置されていた覚田の工場を人気(ひとけ)のある高級リゾートとして再生し、SDGsが提唱されるずっと以前から連綿と続いてきた里海の持続可能なサイクルを取り戻したいのです」。覚田社長はCOVAプロジェクトに対する思いをこう語った。

備長炭のサウナ棟(イメージ)

 
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