静岡県の伊豆の国市観光ルネサンス事業基礎調査委員会(委員長・稲村浩宣伊豆の国観光協会副会長)は15~16日、メディアを対象にしたモニターツアーを実施した。国土交通省の「観光ルネサンス事業」の対象となるにはどんなまちづくりを行うべきか、外部の意見を聞くのが目的で、記者らは「下田街道」を中心に伊豆をめぐるコースを見学した。
伊豆の国市は05年4月、伊豆長岡町、韮山町、大仁町の3町合併で誕生。伊豆半島の付け根に位置、平氏との戦いに破れた源頼朝が流された土地で知られる。
ツアーは伊豆の国市と三島市を起点とし、歴史に彩られた旧街道筋と伊豆半島に張り巡らされた新たな道路を活用。これまであまりアピールされてこなかった伊豆半島の歴史遺産や自然を広域的に楽しむコースが柱。
出発地の三島市は伊豆一の宮・三嶋大社を抱え、古くは門前町、東海道などの街道が整備されてからは宿場町として栄えた。湧水の街としても知られ、6年前に整備された駅前バスプールには「湧水の街」をイメージさせる噴水もある。しかし、近年は都市化により湧水の地下水位が低下。現在、湧水を蘇らせ、町の観光資源として有効活用しようと、「街中がせせらぎ」事業を行っている。源兵衛川では、水とのふれあいを楽しめるように川の中に飛び石様の歩道を整備。夏には湧き水に涼を求めて多くの人が水辺に集まってくるという。
源兵衛川や三嶋大社を散策後、伊豆の国市の「江川邸」へ。江川邸は、幕末の世襲代官・江川太郎左衛門英龍の屋敷で重要文化財にも指定されている。英龍はお台場(砲台)や韮山反射炉の築造、日本初のパンの製造を手がけた人物。パン作りの釜や台場の設計図なども見ることができる。
伊豆長岡温泉の「楽山やすだ」では、観光関係者との意見交換会が行われた。内田隆久氏・伊豆の国観光協会副会長が「ひめの国、はなの国、伊豆の国」というキャッチコピーの狙いと観光ルネサンス事業参入に向けた取り組みについて述べ、楽山やすだの女将の安田昌代さんが伊豆の女将の集いである「THE OKAMI」のインバウンドへの取り組みについて説明した。
2日目は3コースに分かれ見学。「歴史文化コース」は蛭ヶ島や韮山反射炉、「雛のつるし飾り」など、「花の旅コース」は洋らんパーク、「富士山眺望自然景観コース」は葛城山パノラマパークをめぐった。
下田では日米和親条約締結の舞台となった了仙寺住職の松井大英・下田市観光協会副会長から、下田の観光について説明を受けた。その後、南伊豆町の菜の花と「みなみの桜」を見学した。
今回のツアーは「伊豆の道風景30選」の風景を実際に徒歩で、あるいは車中から味わうことができるコース内容だった。下田街道を中心に南北70キロの道程には、豊かな自然風景と歴史遺産が多く存在した。だが首都圏から150~200キロ圏内には、房総をはじめ多くの観光地がひしめいている。中伊豆の魅力をどのように集客に結びつけるかには、さらなる工夫が求められる。
雛祭りの風習「雛のつるし飾り」