中国、団体旅行を解禁 3年半ぶり、韓・米含め78ヵ国・地域へ


外国人の買い物客でにぎわう東京・上野のアメ横商店街。中国人客の増加でにぎわいがさらに増しそうだ(13日)

巨大市場に宿泊業も期待 人手不足など対応に不安も

 中国政府が新型コロナウイルスの感染拡大を受けて停止していた中国人の日本向け団体旅行を10日に解禁した。コロナ禍前は日本へのインバウンド全体のおよそ3割を占めていた巨大市場だけに、旅館・ホテルなど国内の観光関係者の期待は大きい。一方、人手不足による対応の難しさやオーバーツーリズムの加速など、関係者の一部から不安の声も聞こえる。

 中国政府は新型コロナウイルスが感染拡大した2020年1月から、海外への団体旅行と、航空券とホテルのパッケージ商品の販売を禁止。海外旅行は一部の個人旅行などに限られていた。ただ、感染が収まるにつれて規制を緩和し、今年2月に20カ国、3月に40カ国への団体旅行を解禁。今回は日本、韓国、アメリカなど78カ国・地域への団体旅行を、およそ3年半ぶりに解禁した。

 日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2019年の年間訪日外客数は3118万人。このうち中国人は959万人と国・地域別のトップで、全体の31%。旅行消費額(観光庁統計)も年間1兆7704億円と、37%を占めていた。

 新型コロナの感染が落ち着いた昨年10月、日本は海外からの水際対策を緩和。以降、各国からの訪日客数が順調に増えたが、中国からは今年6月単月で21万人(推計値)と、コロナ禍前の2019年同月比で76%減。回復の遅れが目立っていた。

 中国からの団体旅行解禁の報を受けて、国内の旅館・ホテル関係者からは期待の声が高まっている。甲信越のA旅館は「大変ありがたい状況になるのではと期待するところ」。関東のB旅館は「ようやくといったところ。春からこれまでの客(の流れ)を見ると、中国以外の国からは以前より多いように思える。そこに中国からの団体客が加わると、コロナ前の人数を超えるのは間違いない」。

 九州のC旅館、D旅館も「インバウンドの回復に大いに貢献することと思う」「大規模、中規模旅館・ホテルは団体旅行が必要な館もある。そんな中での中国本土からの団体解禁はありがたい。地域として上手に受け入れをしていきたい」とそれぞれ期待感を示す。

 関東のE旅館は「秋に向けて訪日客が大きく伸びることと思う。しかし、コロナ以前と同じような消費行動ではなく、少し落ち着いたモノ、コト消費の動向になるだろう。特に食は中国国内では本物の日本食に接する機会は少ないので、大きな期待となるだろう」と展望する。

 一方、受け入れに不安を示す声も。前出のC旅館は「現在でも多くの地域と施設で人手不足になっている。対応には懸念事項が多い。食事を受けていない施設の周辺の飲食店の対応もかなり厳しいのではないかと危惧している。1泊2食対応の宿でもオーバーワークとなり、既存のお客さまへの十分な対応ができない施設も出るかと思う」。

 一部の地域で再燃しているオーバーツーリズムについて、加速するのではとの懸念も多い。「至る所で観光公害が発生している中、対策を各自治体がとっていかないと、混乱して観光が尻すぼみになってしまわないか心配」(A旅館)、「地域住民はもとより、訪れたあらゆるお客さまも不快な気持ちになってしまう。持続可能な観光地に向け、早急な対策も必要」(E旅館)と、行政などの対策の必要性を強調している。

 

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