三越がオリジナルバスツアー、ターゲットはシニア富裕層


左側にペアシートを配置した車内

左側にペアシートを配置した車内

 サロンや航空機のビジネスクラスのような豪華な内装のバスを利用し、ゆったりと良質な旅時間を過ごせるツアーが注目を浴びている。4月から大手百貨店の三越は、豪華バスツアーの販売を始めた。同店の上客を中心とした、シニア世代の富裕層の旅行需要の取り込みを狙ったものだ。 同社で旅行商品を取り扱う、三越トラベルセンターが発売したのは、オリジナルバス「三越プレミアムクルーザー」を利用したバスツアー。通常45人乗りのバスをベースに、ペアシートを5列配置、10人乗りの特別バスを用意。座席は革張りにし高級感を出したほか、シェルシートタイプの座席を採用、リクライニング席を倒しても前後の席に影響せず、プライベート感を保てるようにした。各座席には小型ディスプレイも搭載、映画などを楽しめる。高齢の顧客に配慮しAEDや広めのトイレなども配備。

 10人でバス1台を動かすことから環境効率が低いため、カーボンオフセットを導入。環境に配慮する旅行者に対応した。

 同社は、三越の上客を中心に2月下旬に全17コースを発売。発着が日本橋三越本店(東京都中央区)のため、伊豆や箱根など首都圏近郊の温泉地などへ行くコースをそろえた。例えば伊豆方面に桜を見に行くコースは、小田原城址などを見学、昨年オープンした高級温泉旅館「熱海ふふ」に宿泊する。旅行代金は2人1室利用で、1泊2日1人14万8千円。

 旅行代金は各コース12〜20万円と高額だが、現在販売している7月3日までの旅行商品は、「すでに定員の8割ほど予約が入っている」(同社)。

 夏以降は、1週間程度の滞在型ツアーなどの販売も視野に入れる。同社では、「ゆとりのある、大人の旅を楽しんでもらいたい」と話す。

 従来、バスツアーは安価に楽しめるものが多かったが、昨年来、バス内での快適性を高めたり、内容に趣向を凝らすなどして付加価値を高めたツアーを各社が次々に発売している。

 クラブツーリズムは昨年8月から、フットレストなどを備えた座席をゆったりと8列配置したバス「ロイヤルクルーザー」を利用したバス旅を同社の国内最高級旅行ブランド「四季の華」で販売する。現在宿泊、日帰り商品合わせて約30コースを販売。宿泊商品の旅行代金は3万8千〜28万5千円だが、「非常に好調」(同社総務部)。60〜70代の夫婦での参加が多いという。

 「バスハイク」ブランドで、日帰り・宿泊のバスツアーを企画、催行する西鉄旅行(福岡県福岡市)は、昨年12月にデラックス仕様のツアー「バスハイクゴールド」を発売した。通常の日帰りバスハイクが5千円ほどの価格なのに比べ、バスハイクゴールドは日帰りで1〜2万円と割高。しかし、予約状況は好調で、「日帰りコースはほとんどが満員での催行」と同社。隣県からの参加者もあるほか、リピーターも多いという。

 同社では、女性スタッフを中心とした検討委員会で準備を進め、60〜70歳代の女性にターゲットを絞った商品を造成。通常45人乗りのバスを30人でゆったりと利用し、ふぐやたけのこといった季節の味をレストランなどで楽しめるツアーにした。「旅慣れた人が多い世代をターゲットにしたので、食事時間をゆったりとったほか、見学場所も1、2カ所に絞ってゆっくり見るようにした。解散も早いので、帰ってから家事もできる」(同社バスハイクセンター、吉田久美氏)。

 バスツアー商品は、従来の格安ツアー一辺倒から、富裕層向けのこだわりの旅や日帰りで楽しめるリフレッシュのツアーまで、多様化が進む。金額が多少高くても、行ってみたいと消費者に思わせる付加価値付けが、今後さらに重要となってくるかもしれない。

左側にペアシートを配置した車内
左側にペアシートを配置した車内
 
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