万博に向けた関西観光 近畿運輸局 局長 金井明彦氏に聞く


金井局長

地域をつなげて流動を活性化 経済復活へ「一体」で事業推進

 ――近畿運輸局長に就任し、約1年半となった。

 「コロナ前には観光庁の審議官、その後、国交省で公共交通に携わり、まさにコロナ禍で公共交通をどう支援するかを議論していた。関西にはコロナ禍で来たが、関西は、観光、特にインバウンドがこれまで経済を支えていた。日本のGDPに対する関西の割合は15.2%(2018年度)であったところ、訪日外国人旅行消費額の全国に対する関西の割合は28.8%(19年度)とインバウンドの効果は絶大だ。オーバーツーリズムの議論もあったが、コロナ禍でこの消費がゼロとなり、国内の観光需要も半減した。ほぼ全ての観光、交通事業者が影響を受け、特に地方への影響は甚大。コロナの支援策を講じながら、観光需要、交通を維持し、戻していくため、就任後は観光と交通政策を一体的に強力に推進してきた」

 ――25年には大阪・関西万博が開催される。

 「万博は明確な目標。感染対策をしながら、観光・インバウンド需要を含めてどう取り込むか。その中で交通政策をしっかり落とし込んでいく。昨年6月には、近畿地方整備局、関西観光本部と共に万博に向けた関西観光アクションプランを発表し、12月には改定も行った。『住んでよし、訪れてよし』という観光地域づくりを目指す理念のもと、(1)テーマとストーリーで地域を『つなげる』(2)人材で地域を『つなげる』(3)情報で地域を『つなげる』―の三つの視点で地域をつなげていく。万博の開催に向けては、従来、大阪や京都に集中していた人流を広域に流動させるため、関西全体(2府8県)をパビリオン化するというコンセプトのもと、各地域のコンテンツ造成や観光の高付加価値化の取り組みを推進しながら、関西周遊を促進していく」

 ――全国的にも人材不足は課題となっている。

 「コロナで業界の足腰が弱くなった。DMOを中心に人材をもっと強化しなければならず、ネットワーク化することも考えている」

 ――情報はどうつなぐのか。

 「城崎温泉で行われている豊岡観光DXなどもあるが、交通と観光を一体化するツールとして『関西MaaS』がある。ここに例えば『淀川における舟運を活かした賑(にぎ)わいづくり』といったプロジェクトをつなげる。プロジェクトを見える化することで、事例の横展開にもつながる。運輸局は地元のニーズを捉え、磨き上げることを支援し、観光庁に対しても意見をしっかり伝えていく」

 ――関西MaaSは金井局長の肝いりの事業だが。

 「21年12月に近畿運輸局主導で官民による会議体『関西MaaS推進連絡会議』を立ち上げ、スタートした。関西MaaSは、地域間のシームレスな移動を推進するとともに、観光コンテンツを充実させて関西全体の広域観光を促進するもの。経路検索、運行情報、予約・決済機能、観光情報・施設情報のほか、観光レコメンドや多言語などサポート機能も充実させていく予定。ポイントは関西全体をまたぐ本格的なMaaSであること。大手鉄道会社7社が参画していることも画期的だが、システムも一から構築している。世界にはMaaS先進国といわれるフィンランドでも既存のシステムを活用しており、複数の主体が参画した上で一から作るのは初めてのことだ。昨年11月8日には第2回推進連絡会議を開き、その中で、関西MaaSについて会員の拡大や外部事業者との連携を担うオープンな組織として『関西MaaS協議会』の設置が発表された。多くの人に参画してもらい、連携を生んでいきたい。アプリには鉄道のほかバス、タクシーも入れ、万博アプリとの連携によるTDMなどでの活用も期待したい」

 ――サービスの提供開始時期について。

 「今夏に第1弾としてのサービス提供を始める。われわれは旗を振っているが、経済界、自治体にも協力いただいており、今後はどこまで広げられるかだ」

 ――関西でのインバウンドの現状について。

 「水際対策の緩和後、韓国からの戻りが早く、関空はにぎわっている。一方、地域で濃淡はあるが、貸し切りバスやタクシーの運転手が不足している。2種免許取得支援制度などもあるが、中国からの観光客の本格的な回復に備えた対応も急務だ。DX化による観光産業の競争力強化なども含めて対応していく」

 ――東京との連携は。

 「観光政策は地域経済復活の鍵であり、連携というよりも一体で取り組まなければならない。万博に向けては、大阪のにぎわいを関西のにぎわいに、それを全国に広げるためにも、関西が先頭に立って観光立国を進める必要がある。観光庁と運輸局が一体となって進めたい」

 ――万博以降のロードマップについて。

 「観光は、奇麗な計画をつくるよりも、国、自治体、DMO、経済界が一体となって具体的なプロジェクトを積み重ねていくことが重要。万博は一つの通過点であり、関西MaaSも一つのレガシーとしてしっかり残し、今後につなげていく」

 

かない・あきひこ=群馬県出身。1989年に運輸省に入省。国土交通省鉄道局財務課長補佐、観光庁審議官などを経て、19年7月に国交省大臣官房審議官(公共交通・物流政策)に就任。21年7月から現職。【聞き手・長木利通】

 
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