一部レジャー施設が営業再開、経済活動で復興後押し


 東日本大震災からまもなく1カ月。被災地では復旧・復興に向けた懸命な作業が続いているが、震災後、まん延している「自粛ムード」に観光業界が頭を痛めている。旅行の手控えや宿泊キャンセルばかりでなく、祭りやイベントの中止も拍車をかけている。「被災地が苦しんでいるのに…」という心情も理解できるが、「このままでは日本が停滞してしまう」と懸念する声も上がっている。「自粛ムードを吹き飛ばそう」「被災地以外から元気な声を」とばかり、営業再開に踏み切る観光・レジャー施設も出てきており、訪れた親子連れやカップルの笑顔が印象的だ。各施設の動きを追った。

 映画「フラガール」の舞台となった温泉レジャー施設、スパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)は東日本大震災の影響で、4日現在、休館を余儀なくされている。しかし、市災害対策本部と連携して、1日から避難者が温泉大浴場を無料で利用できるようにした。炊き出しも実施しており、被災者支援に力を入れる。

 温泉入浴は「当面の間」(常磐興産)としており、利用時間は午前10時から午後3時まで。市内の避難所利用者限定で、一般開放はしない。炊き出しは市内のまちづくり団体と連携して行う。一般向けの営業再開については「施設点検と安全確認、周辺の状況を踏まえ、当社のホームページなどで知らせる」と言う。

 被災地に近い山形県上山市の遊園地、リナワールドは1日に再開園。2〜3日は通常の2割程度の来園者数だったが「CMなどを打たなかった割にたくさんの方に来園いただいた」。今後、被災者支援につながるサービスなどを展開していく考えだ。

 大きな津波被害を受けた茨城県大洗町。再開のめどが立っていない観光施設がある中、アクアワールド県大洗水族館は1日から営業を再開した。10日まで入場無料としたためか、3日は今年最高の2万人を超す来場者があったと言う。

 水族館の生き物、建物、設備、水槽などにも大きな被害はなく、電気や水道などのライフラインも回復、建物や設備機器の安全も確認されたため再開に踏み切った。休館中は励ましの電話も数多くあり、「救援物資や義援金などもいただいた」と言う。

 鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)は3月19日から営業を再開。「動物や建物、水槽などに大きな被害はなく、点検による安全確認も済ませている」という。節電対策を実施しており、営業時間は午前9時から午後4時までに短縮。園内では部分的な消灯、遊技機器や自販機などの一部を休止している。また、鴨川シーワールドホテルも1日から営業を再開した。

 一般消費者ばかりか、旅行業者も大きな関心を寄せるのが同県浦安市の東京ディズニーリゾート(TDR)だ。「4月上旬にも再開」との報道もあり期待が高まったが、運営するオリエンタルランドは3月30日、この報道を否定する文書を発表した。文書は、「なるべく早期での再開を目指しておりますが、再開日や方針等、現段階で決定している事実はございません」としている。

営業時間短縮 被災者無料
 りんどう湖ファミリー牧場(栃木県那須町)は1日から営業を再開。県は計画停電エリアに入っているが、牧場のため電力を使わない遊具やイベントが多いことから、営業時間を短縮して再開した。2〜3日の入園者数は例年の3分の1程度。「普段は隣県のほか、東京からのお客さまも多いが、東京ナンバーの車は少ない」と同牧場。5月31日まで茨城、福島、宮城、岩手の4県在住者の入園料を無料にしていることもあってか、特に福島ナンバーの車が目立つ。

 同牧場までのアクセスは道路、鉄道ともに通常通り。入園料とアトラクションなどを通常の5割程度の価格で利用でき、義援金の募金もできる「日本がんばろうプラン」=写真=を4月28日までの期間限定で打ち出しており、より多くの子ども連れなどにアピールしていく考えだ。

 開館時間を短縮して営業しているのは鉄道博物館(埼玉県さいたま市)。閉館時間は通常午後6時だが、当面の間、午後4時にする。館内は節電のため、空調の抑制や一部照明の減光、機器を停止している。

 展示物については、おおむね通常通り見学できる。体験プログラムもミニ運転列車、鉄道模型ジオラマ、運転シミュレーターなどは実施しているが、その他は休止。「いつもと比べ、人手は少なく感じる」と言う。

 3月17日から臨時休園していた多摩動物公園(東京都日野市)は今月1日から再開園に踏み切った。ただ、使用電力節減のため開園時間を短縮、午前10時から午後4時までとしている(通常は午前9時半〜午後5時)。

 「土、日、祝日と無料開園日である4月4日は計画停電予定にかかわらず、開園する。平日は計画停電の実施が予定されている場合は閉園」という。開園時間中に計画停電が実施された場合、一部の動物舎やレストラン、ライオンバスなどについては展示や営業、運行を制限する。

 また、10日までの期間、被災者は入園料(一般600円)を無料にする。入園の際、改札窓口で受け付ける。「身分までは確かめられない。信用するしかない」という。

 再開園となった1日は天気も良かったせいか、「皆さん待ち望んでいたようで、開園前から行列ができた」とホッとした表情だった。

 富士急ハイランド(山梨県富士河口湖町)は3月12日以降、機材点検や計画停電による臨時休業などをはさみながらも営業を続けている。入園者は例年に比べ大きく落ち込んでいるが、電力使用量の削減のためにアトラクションごとに時間制限を設けて運転したり、開園時間を短縮したりするなどして営業する。

 また、近隣施設に避難している被災した子どもの無料招待を検討しているほか、今後、入園料の一部を義援金として関係機関に送ることも予定。

 各地のレジャー施設とも入園者数の減少に苦しむが、「(レジャー施設として)できることを」との思いから開園、被災者支援などに取り組んでいる。しかし、原発問題の長期化に加え、夏には一層の計画停電の実施が避けられない状況だ。まだ越えなければならない課題は多い。

 
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