サステナブルな埼玉を 埼玉県物産観光協会会長 朝霧重治氏に聞く


埼玉県物産観光協会会長 朝霧重治氏

観光サポートデスク開設 世界にコンテンツを発信

 ――埼玉県物産観光協会の会長に今年6月12日に就任された。抱負を。

 「2008年に埼玉物産振興協会と埼玉県観光連盟が合併して設立した埼玉県物産観光協会は、これまで多くの方々に支えられ、今年で15周年を迎えることができた。観光業界に大きな打撃を与えた新型コロナウイルスも収束に向かい、埼玉県の物産・観光分野も新たな時代に向けて進んでいかなければならない。埼玉県には、私たち県民が想像する以上に魅力的なものやことが数多く存在する。物産観光に携わる全ての方々とともに、この時代の価値観に照らして世界に通用するコンテンツを発信し、埼玉県の物産観光業界のさらなる成長を実現させたい」

 「私自身、旅行が大好きで、学生時代はバックパッカーとして世界を巡っていた。そして私は埼玉生まれの埼玉育ち。物産・観光の振興を通じて、県民が誇れる埼玉、県内外から愛される埼玉、サステナブルな埼玉を目指している」

 ――県は観光に対して積極的なのか。

 「現在の大野知事は、間違いなく積極的だ。今年度から県では初となる『観光局長』が誕生。6月には当協会内に『埼玉観光サポートデスク』を開設した。ネイティブのスタッフが英語、中国語、韓国語、日本語で観光相談に応じている。窓口や電話、メールでおすすめの観光地や行き方などをご紹介する。訪日外国人旅行客、日本在住の外国人に対する情報提供体制を整えた。県内にも外国人が働いているオフィス、工場は多い。県内で働く外国人や県民に埼玉の観光をもっと知り、体験していただき、国内外の友人、知人に薦めていただきたいと思っている。国内外の旅行博へも積極的に出展していきたい」

 「米カリフォルニア州のディズニーランドは、実際はロサンゼルスではなくアナハイムに位置する。東京ディズニーランドも千葉県にある。埼玉県を『グレーター東京(広域の東京観光圏)』の一部だと捉えれば、インバウンド客誘致のハードルは決して高くない。東京からの近さをアピールして、気軽に埼玉を訪れる外国人を増やしたい」

 ――確かに、会長がご出身の川越は『小江戸』として有名で、国内外からの観光客であふれている。浅草が気に入ったら次は川越へという紹介もよいかもしれない。ところで、コロナ禍で埼玉県の観光客はどのように推移したか。

 「『埼玉県観光入込客数パラメータ調査』のデータによると、『観光客数』は19年1億3459万人、20年7349万人、21年8593万人だった。また同調査による『観光消費額単価(県外客)』は、宿泊が19年2万3564円、20年1万5955円、21年2万2709円。日帰りは19年6923円、20年5695円、21年6376円だった。観光庁宿泊旅行統計調査によると、埼玉県の延べ宿泊者数(観光目的の宿泊者数が50%以上)は19年75万9110人、20年55万8400人、21年65万4040人、22年64万9720人となっている」

 ――埼玉県には大温泉地がない。北関東の他県と比べて、観光集客面で競争力が劣るのではないか。

 「確かに大温泉地はないが、秩父・西部地域を中心に温泉旅館はあり、特にコロナ禍中は近隣からのハイクラス・高単価客が多かったと聞いている。またこのエリアは自然が豊かで、キャンプ場も多い。アウトドアブームでにぎわっている」

 ――「古墳」や「足袋」で知られる行田市は「田んぼアート」でも有名だ。

 「23年の行田市田んぼアートは、11月23日に公開が予定されている映画『翔んで埼玉』続編のコラボ企画として実施。6月10日の田植えイベントには俳優の加藤諒さん、益若つばささんも参加した。7月下旬から10月中旬が見頃となる。映画の撮影には埼玉県が全面協力している」

 ――今年7月、世界農業遺産に埼玉県武蔵野地域の落ち葉堆肥農法が認定された。国連食糧農業機関(FAO)が兵庫県兵庫美方地域の伝統的な但馬牛の飼育システムと共に認定。日本の世界農業遺産は15地域となった。

 「21年10月に認定申請を行い、今回認められた。自然や農業と観光は非常に相性が良い。地域と行政が連携し、今ある宝をさらに発展させ、シビックプライドにつなげることで、人と土地をより豊かにすることができる」

 

 あさぎり・しげはる 1973年埼玉県川越市生まれ。県立川越高校、一橋大学商学部を卒業後、三菱重工に入社。1998年協同商事入社、2006年、ビール事業部門を再構築し、「COEDO(コエド)」のブランドで新たにスタート。国内外のコンテストで多数の賞を受賞。09年6月同社代表取締役社長に就任。20年6月、埼玉県物産観光協会副会長に就任。23年6月、同協会会長就任。
【聞き手・kankokeizai.com 編集長江口英一】

 
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