日韓路線1月に完全回復 日本へのイン誘致に貢献
アシアナ航空常務で日本地域本部長の姜柱溶(カン・ジュヨン)氏に同社路線のコロナ禍後の状況、今後の営業戦略を聞いた。
――アシアナ航空の現在の日本路線のコロナ禍からの回復具合について。
「弊社はコロナ前に日本へ11路線、週143便を運航していたが、今年11月現在、10路線で週140便を運航している。日韓路線はコロナ前の98%まで回復している」
「日韓線の需要はコロナ前の100%を超えており搭乗率も高い状態が続いている」
――韓国人観光客の日本訪問が増えている。
「日本政府観光局(JNTO)の統計によると、今年1~10月の累計で、韓国から日本へのインバウンドは約550万人で、コロナ前の2019年よりも7%上回る水準となっている。19年には日本全体のインバウンドに占める韓国人の割合は約18%だったが、今年は約28%。およそ4人に1人が韓国人という状況だ。韓国と中国の間の需要回復が遅れており、円安もしばらくは続くと見込まれるので、韓国から日本への需要が旺盛な状態は来年も続くと予想する」
――コロナ禍以降の日韓間航空需要の特徴は。
「コロナ禍以降、日韓線は韓国発の需要が旺盛な状況が続いており、日韓比率は日本3に対して韓国が7程度で推移している。北海道、九州、沖縄はさらに韓国発の需要が多くなっている。今年に入り、日本の地方空港の路線も再開の動きが広がっており、地方へのインバウンド観光客の訪問増加が期待される」
「一方、日本発アウトバウンド需要は、円安の影響で海外旅行費用が高くなり、回復が遅れているが、韓国については若年層を中心に底堅い需要がある。また今年に入り、日韓関係が大きく改善をし、インセンティブ団体、教育旅行などの需要も回復の動きを見せている」
――今年の日韓線で運航上、最も大変だったことは。
「運航再開の過程において、最も苦労したのがグランドハンドリング人員の調整。コロナによって離職が進み、昨年以降、急激な需要の回復に伴う供給拡大のスピードに、必要な人員が追い付かない状態となってしまった。お客さまのニーズにお応えできない状況がしばらく続き、大変心苦しかったが、いよいよ来年1月には弊社の日韓線全路線でコロナ前に運航していた運航便数を回復できる見通しだ」
――日韓線の運航で、最もやりがいを感じていることは。
「最も近い隣国とを結ぶ路線を運航しており、相互交流の架け橋としての役割を担っているという自負心を持っている」
「20年3月に日韓線が全便運休になった直後の5月に成田―仁川便の運航を再開し、コロナ期間中も両国間の航空路線を絶やさずに維持してきた。今年は羽田―金浦路線就航20周年を迎えたが、両国の象徴的路線を弊社が運航し、ビジネス、レジャーともに相互交流の発展に寄与してきたと考えている」
――来年度の日本地域における重点推進事業計画は。
「弊社の日韓線全路線で、来年1月からはコロナ禍前に運航していた便数を完全に回復させる。日本発韓国行きのアウトバウンド需要を喚起すると同時に、仁川空港を基点とした弊社の57都市62路線のグローバルネットワークを活用した乗り継ぎ需要の誘致も強化していく考えだ」
「ロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・ガザ戦争などによって日本発ヨーロッパ方面への路線の回復が遅延する中、ソウル経由の弊社便の利用メリットも高まっている。アウトバウンドのみならず、ヨーロッパ方面からソウルを経由した日本各地へのインバウンド需要誘致にも弊社便が貢献できると考える」
――日本観光のさらなる発展に向けてアドバイスを。
「日本は豊かな自然、伝統、文化に根差した観光資源に大変恵まれた国。最近のインバウンド需要が旺盛な状況を見ても、いかに日本が海外から人気のデスティネーションであるかが分かる」
「一方で、急激に増えすぎた観光客を受け入れきれなくなると、いわゆるオーバーツーリズムと呼ばれる状況に陥ってしまい、受け手側も訪問する側も残念な気持ちになりかねない」
「弊社はフルサービスキャリアとして、安全で高品質のサービスを提供しながら、日本での消費意欲の高いお客さまを積極的に誘致したいと考えている。持続可能なインバウンド誘致のために、繁忙期、閑散期にそれぞれどのようなお客さまに来ていただき、どのように日本旅行を堪能していただくか。業界が連携して、バランスの取れた誘致に取り組んでいければと考えている」
カン・ジュヨン氏 韓国高麗大学英文学科卒。アシアナ航空広島支店長、福岡支店長を歴任。現在、アシアナ航空日本地域本部長。
【聞き手・観光経済新聞 編集長 森田淳】