
2022年度「観光白書」が指摘
新型コロナウイルスの影響が長期化する中、国内外の旅行需要は低迷し、観光事業者の経営は厳しい状況を強いられている。観光産業がもともと抱えていた構造的な課題も浮き彫りに。政府の2022年度版「観光白書」は、コロナ下における宿泊業の経営課題として、低い労働生産性などを指摘した。労働生産性など宿泊業の経営に関わるデータを「観光白書」から紹介する。
【経営者における課題】
経営者における課題は、高齢化、後継者不足が挙げられる。
■高齢化
厚生労働省の審議会に提出された「旅館業の実態と経営改善の方策(抄)」で紹介されているアンケート調査結果(厚労省、16年度生活衛生関係営業経営実態調査)によると、旅館・ホテルの経営者の年齢層は、60~69歳が36.5%と最も高い。70歳以上も25.9%だった。60歳以上の割合が60%以上を占めており、全国の社長の平均年齢60.1歳(21年2月、帝国データバンク調査)と比較しても、高齢化が進んでいることが分かる。
■後継者不足
後継者不足の現状については、日本政策金融公庫「生活衛生関係営業の事業承継に関するアンケート調査結果」(22年3月)によると、ホテル・旅館業で「後継者がいない」という回答は12.7%で、生活衛生関係営業の中では飲食業(15.8%)に次いで高い。また、「事業承継の意向なし」は7.6%で、そのうちの75.0%は「後継者がいないため」が理由だった。
【雇用者における課題】
雇用者における課題は、人手不足、離職率の高さ、賃金水準の低さなどが挙げられる。
■有効求人倍率
人手不足に関連する指標として、厚労省の「職業安定業務統計」の有効求人倍率の推移を見る。職業計の有効求人倍率はおおむね約1倍強で推移してきた一方で、宿泊業に関わる旅館・ホテル支配人、旅館・ホテル・乗物接客員、飲食物給仕係が含まれる「接客・給仕の職業」の有効求人倍率は、13年の2.26倍から18年の4.01倍まで一貫して上昇した後、20年、21年は新型コロナの感染拡大で観光需要が激減したことで、21年には1.89倍まで低下している。
■離職率
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