“コト消費”拡大ヘ、観光庁が検討会議


検討会議の初会合。3月に提言をまとめる

 訪日外国人の消費を拡大するには、質の高い観光メニューを提供する必要がある。買い物などのモノ消費から、体験などのコト消費への変化が指摘される中、観光庁は、野外アクティビティや文化・生活体験、芸術鑑賞、スポーツ観戦、ナイトタイム(夜間)の娯楽などを充実させる施策の検討を始めた。10月24日には、有識者や観光団体、省庁の担当者を集めて「『楽しい国日本』実現に向けた観光資源活性化に関する検討会議」の初会合を開いた。(下段に関連データ)

 訪日外国人の2016年の1人当たり旅行支出15万5896円(観光庁統計)のうち、現地ツアーや芸術鑑賞、スポーツ観戦などへの支出を示す娯楽サービス費は4725円で、支出全体の3%に過ぎない。米国やフランスなどに比べると、外国人観光客の娯楽サービスへの支出が低い水準にある。

 政府は、20年に訪日外国人の旅行者数4千万人、その消費額8兆円の目標を掲げている。消費額の目標達成には、1人当たり旅行支出を平均20万円に引き上げる必要がある。体験メニューの魅力を高め、娯楽サービスの消費を促進することで、滞在日数を伸ばし、宿泊、飲食、買い物などへの支出も増やし、消費額全体の拡大を目指す。

 観光庁の田村明比古長官は、検討会議の初会合で「体験型の観光への消費を促していく必要がある。新たな観光資源の開拓、訪日外国人向けコンテンツの充実、受け入れ環境の整備、対外発信の強化などについて課題を洗い出してほしい」と委員に検討を呼びかけた。

 検討の具体的なテーマは、野外アクティビティ、日本文化・生活体験、ビューティー・ヘルス体験、スポーツ観戦などの体験メニューの流通を含めた充実の在り方。旅行者の満足度アップに向けて、文化、芸術、スポーツに関するイベントの情報提供の一元化やチケット購入の容易化、ショーやクラブの利用といったナイトタイムの活性化なども検討する。

 初会合では、有識者として委員を務める小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏が、エンターテインメントの鑑賞やスポーツ観戦について「海外からの事前予約、多言語対応ができていないものが多い」、文化財についても「見てもらうだけでなく、多言語でのガイドによる解説、歴史を再現する工夫などをすれば、その体験はアクティビティになる」と指摘した。

 同じく有識者委員で、ウェブや出版物で東京の情報を国内外に発信するタイムアウト東京代表取締役の伏谷博之氏は、ナイトタイムエコノミー(夜間市場)の創出を提言。音楽やダンスを楽しむクラブなど夜の娯楽の多様化、地下鉄やバスの深夜運行などで、経済活動を活性化させたロンドンの事例を紹介した。

 伏谷氏は「東京も、クラブの終夜営業を可能にした昨年の風営法改正を起点に、新規参入の増加が見込まれ、市場が活性化し始めた。ナイトタイムエコノミーは、世界を舞台に都市間の競争になっている。日本でしかできない独自性のあるナイトタイム体験の提供が必要だ」と提言した。

 検討会議は今後、関係事業者などへのヒアリングを実施して議論を深め、来年3月に提言をまとめる。観光庁は、検討会議の提言を踏まえ、施策立案や予算要求に反映させていく。 

 
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