グリスロを自治体に提案 日本自動車連盟(JAF)理事・会員部長 野口浩寿氏に聞く


野口氏

観光周遊や商店街巡回に アフターサービスも対応

 日本自動車連盟(JAF)は6月から、小型電動車両を活用した新しい移動サービス「グリーンスローモビリティ」(グリスロ)の提案を自治体に向けて開始した。その狙いを理事・会員部長の野口浩寿氏に聞いた。

 ――グリーンスローモビリティとは。

 「移動するための手段だが通常の車とは違い、時速20キロメートル未満と定められている点が特徴で、公道を走ることができる小さな移動サービスのことだ」

 「地方では今、公共の交通機関が衰退しているが、この移動サービスでそれを補うことを目的に国土交通省、環境省が旗を振り、全国の必要な地域への普及を目指している。また、低速電動車なので環境への負荷が少なく、乗る人にもやさしいといったこともあり注目されている。電動キックボードやE―bikeなども最近、話題となっているが、そういった車両とは違い、複数名が乗車できる点が特徴だ」

 「道路運送車両法という車の規制があるが、グリーンスローモビリティは時速20キロメートル未満のため、その規制が一部緩和されている。通常であれば設置が義務付けられているドアや窓、シートベルトがなくても走行が可能。開放感があるので自然などを満喫できるのではないか。また、歩いている人ともコミュニケーションがとれるといった利点もある。地方のローカルエリアでは移動手段が限られるが、そういった地域で事前にルートを決めて運行すれば十分に安全も確保できると思っている」

 ――今なぜグリーンスローモビリティなのか。

 「地方では今、過疎化もあり、地域住民の足となっているバスなどの運行がなくなりつつある。また、高齢になれば運転免許証の返納で、移動が難しくなる方が増えるといった問題もあるだろう。自動運転の技術開発が進められているが、実用化されるのはまだ先だ。それらを補うために新たな移動手段を確保する必要に迫られている」

 ――以前から地域振興に熱心に取り組んでいるのか。
 
「JAFは従来から地方自治体と連携しながら、地方の魅力的な観光資源を生かし、車を上手に使った地域活性化を提案している。全国655(2022年9月末時点)の自治体と観光協定を締結し、JAFの機関誌やホームページで、地域のPRを行っているが、協定先の自治体から公共交通機関が少なく困っている、という声を多数いただいたことが今回の新サービスを開始したきっかけだ」

 ――地方自治体に向けた提案内容は。

 「JAFでは全国でロードサービスを展開しており、各地に提携する整備工場があり、地域とのつながりが非常に強い。その整備工場を通じたメンテナンスやトラブル時のロードサービス対応などアフターサービスも一括して提案させていただいている」

 「提案先の一例として、例えば山間部でアップダウンがある場所に高齢者がたくさん住んでいるところでは、駅などに車両を置いて商店街なども含めて巡回してもらう方法もあるだろう。また、温泉街、城下町といった観光地では一定の距離の範囲でルートを作り、観光スポットを周遊してもらうためのツールとしての運用方法も考えられる。来年になると思うが、実証実験ができるように準備を進めているところだ」

 ――電動車両の特徴は。

 「ヤマハ発動機が開発したゴルフカートをベースにした車両を使う。4~7人乗りで、(狭い道しかないなどの)道路環境によって使い分けてもらう形を想定している。基本的にドアや窓はないが、寒いところ、風の強いところを走行する場合は、専用のカバーも用意している」

 「自治体の運用方法としては、例えば1回の乗車で100~200円程度を利用者からいただく方法もあるだろう。料金をもらえば旅客運送事業になるが、特殊な事情、例えば過疎地域のため公共交通機関が運行されていない場所で移動手段を確保するためなら、特例の『自家用有償旅客運送』が適用される。この制度は、(タクシー運転に必要な)二種免許がなくても運行が認められているものだ」

 ――観光業界へのメッセージを。

 「JAFは一般社団法人で、一般の事業会社とは異なる。つまり利益を出すことが目的ではないので、お気軽に問い合わせてほしい。JAFの主要事業であるロードサービスは365日、年中無休でサービスを提供しているため、『困ったときのJAF』というイメージが定着していると思う。JAFでは自治体の困りごとがあれば助言も含めてご協力をさせていただく。地方が元気にならないと、日本全体も元気にならないといった気持ちで臨んでいる」

 

のぐち・ひろひさ=愛知県出身。愛知大学卒業後、1983年JAF入社。2015年連盟本部・会員部部長。20年理事就任。62歳。

【聞き手・西巻憲司】

 

 

 
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