アゴダ・インターナショナル・ジャパン 代表取締役 大尾嘉宏人氏に聞く


大尾嘉氏

旅館への送客を強化

先進技術を現地化して提供 国内客の宿泊実績は増加中

ホテルや航空券、アクティビティー予約を提供するグローバル旅行プラットフォーム「アゴダ」(本社・シンガポール)が国内宿泊客の取り扱いを伸ばし続けている。コロナ禍でアジアからのインバウンド客が見込めない中、独自のマーケティング最適化テクノロジーと知見で、宿泊予約の実績を上げている。アゴダ日本法人の代表取締役で、日本、韓国、台湾の宿泊施設担当トップも務める大尾嘉宏人氏に、アゴダの事業展開、旅館予約などについて聞いた

【本社企画推進部長・江口英一】

 

 ――アゴダの日本代表に就かれるまでのご経歴は。

 「2年前の2020年3月にアゴダに入社した。現在は、アゴダ・インターナショナル・ジャパン代表取締役兼、アゴダ北アジア統括アソシエイト・バイスプレジデントとして、日本と韓国、台湾の責任者を拝命している。宿泊施設様との契約、宿泊在庫の仕入れなどが担当業務だ。1994年に凸版印刷に入社し、米国西海岸の駐在員として現地ネットベンチャーに携わって以来、一貫してインターネットの仕事に関わっている。MBAを取得後、いったん帰国。凸版印刷でデジタルコンテンツの子会社を立ち上げた後、楽天に転職、アフィリエイト広告や電子ブック、モバイル事業の立ち上げに従事し、格安スマホ事業を国内シェア1位に導いた。今後はそうした経験をアゴダで生かしていきたい」

 ――OTA業界に身を投じた理由は。

 「インターネットを活用して、消費者の生活をより豊かにしたい、既存の産業をネットで改革してさらに良くしたいという思いでずっと仕事をしてきた。デジタルコンテンツ、ネット広告、通信などに携わってきたが、トラベル分野のデジタル最適化の可能性に大きな魅力を感じたからだ」

 ――アゴダとは、どのような企業なのか。

 「アゴダは、ブッキングドットコム、カヤック、プライスライン、オープンテーブルと同じブッキングホールディングスの一員。本社はシンガポールだが、最も大きい運営主体はタイにある。アジア企業ではあるが、世界中の国と地域から来た社員が働いていて、ダイバーシティとエネルギーを強く感じる。アゴダの強みはアジアマーケットにあるが、アジアも国によって当然マーケティングのアプローチは異なる。グローバルのテクノロジー(先進技術)を各国の事情に合わせてローカライズ(現地化)し、現地OTAとして各地に浸透させる。ここはアゴダが最も得意とする部分だ」

 ――他の国内外OTAと比べて、アゴダの強みはどこにあるのか。

 「1点目は現地化。昨年夏に『国内施設向けカスタマイズプラン』機能をリリースした。食事付きの各種宿泊プラン、県民割、ロングステイプランなどの設定、販売を日本のOTAと同様にできるようにした。これは全アゴダの中でも日本だけの機能だ。グローバルOTAが日本だけに特化した機能を開発、実装するのは珍しいケースだと思う。それだけ日本の宿泊施設や宿泊客に対して真剣に取り組もうとしている。2点目はマーケティングインテリジェンス(デジタルマーケットの最適化)の絶対的な優位性。アゴダのプラットフォームに宿泊施設を掲載していただくと、アゴダはその宿に最も適した宿泊客(ユーザー)を探し、先方にリコメンドする。アゴダ独自のAI、アルゴリズムでマッチングを行う」

 ――技術力は外からは見えにくい。

 「アゴダは日本に上陸して14年がたつ。ホテル業界での認知度はそれなりに上がってきたが、旅館業界ではまだまだだ。旅館の方々には、まだアゴダがインバウンドOTAだと誤解されている。一方で、取り組んでいただいた旅館さんからは、『こんなに予約が入ってくるんですか』とよく驚かれる。コロナ禍においては、国内予約を取り込んでいただけるよう、われわれもさまざまな取り組みを行った」

 「アゴダの強みの3点目は管理画面の使いやすさ。世界で270万施設が契約しているOTAでありながら、日本の宿泊施設に向けてさまざまな改良を施している。『国内施設向けカスタマイズプラン』もその一例で、それに伴い、日本に特化したマーケティングキャンペーンを増やすこともできた」

 ――宿泊施設に対するサポート体制はどのようになっているのか。

 「パートナーサービスの事業拠点を東京、大阪、札幌、福岡、那覇に置いている。また、カスタマーサービスが横浜にあり、ユーザーと宿泊施設からの問い合わせに対応している。人員は総勢150人を配置し、今後、大幅増員を予定している」

 「各地域にいる専任のアカウントマネージャーがデータに基づき、各宿泊施設に応じた最適な施策を提案する。カスタマーサービスはチャットボットではなく、スタッフが日本語で対応している」

 「最新テクノロジーに裏付けされた旅行トレンドの知見やデータ分析は、宿泊施設からも好評だ」

 ――コロナ禍の日本国内における予約実績はどうか。

 「全世界同様、20年前半は落ち込んだが、夏にGo Toトラベルが始まり、それ以降はずっと右肩上がりに伸び続け、その伸び率は日本のマーケットや産業平均と比べて、はるかに高い」

 「マーケティングインテリジェンスのエンジンが機能した結果だと思う。コロナ禍前のアゴダは、アジアからのインバウンド、アジアへのアウトバウンドで特に強みを発揮していた。グローバルテクノロジーをそこに生かして実績を伸ばした。今はこの技術を国内客の国内施設予約のために使って予約実績を伸ばすことができている」

 ――JTBの「るるぶトラベル」は、アゴダから技術提供を受けていると聞いている。何が違うのか。

 「アゴダが目指しているのは、便利に旅ができるようにすることで、業界内に同じ志のある会社があったらサポートもする。アゴダ本部がるるぶトラベルにご提供しているのは、ウェブサイトの機能、つまりUX(ユーザーエクスペリエンス)。ユーザーがログインして、施設を比較して簡単に予約ができるような機能をご提供している」

 ――宿泊在庫の共有は。

 「るるぶトラベルの契約宿泊施設1万2千軒の予約はアゴダでもできる。そこは連携している」

 

大尾嘉氏

 
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