みちのく潮風トレイル、3月末に全線開通 環境省、記念式典を6月開催


みちのく潮風トレイルの中核施設となる名取トレイルセンター

全長900キロ、観光振興に期待

 2011年3月11日の東日本大震災で被災した東北太平洋岸に自然歩道を設け、歩いて復興を支援する環境省のプロジェクト「みちのく潮風トレイル」。青森県八戸市から福島県相馬市まで全長900キロ超に及び、日本最長のトレイルコースとして3月末にも全線が開通する。同省は6月9日に宮城県名取市で記念式典を開き、全線開通宣言を行う予定だ。

 みちのく潮風トレイルは震災後、同省の「グリーン復興プロジェクト」の一環として、13年に整備が始まった。全長900キロ超は青森、岩手、宮城、福島の4県28市町村にまたがる。トレイルは日本ではまだなじみが薄いが、ぐんま県境稜線トレイルや信越トレイルなどが整備されるなど、徐々に注目が集まっている。

 みちのく潮風トレイルにはさまざまなルートがる。その一つ、岩手県宮古市浄土ヶ浜・田老ルート(1泊2日、約30キロ、所要時間約10時間)は体力のあるハイカー向けで、浄土ヶ浜や潮吹穴などの景勝地と、津波の被害を受けた施設を遺構として保存する「震災遺構公園」がある。

 また、国の復興交付金を活用した震災遺構の第1号に認定されたたろう観光ホテルもルート上にある。田老地区では震災時の様子や復興の状況を伝えるため「学ぶ防災」プログラムが実施されている。ガイドによる防潮堤の案内やマスコミ非公開のDVD上で、生々しい震災の惨禍を目にすることができる。

 式典が開かれる名取市の閖上地区には「名取トレイルセンター」が建設中で、4月にオープン予定だ。ハイカー向けに情報発信などを行う施設が青森、岩手、宮城の3県に5カ所設置されているが、名取のセンターはこれら施設を統括する一大拠点となる。

 閖上は仙台空港に近く、外国人ハイカーの利用も視野に入れる。何より、震災で700人以上が犠牲になった場所であり、同省は震災の記憶をハイカーらに伝承する場として活用されることも期待する。

 記念式典は同省と名取トレイルセンター運営協議会が主催する。シンポジウムも行われ、俳優で日本トレッキング協会理事を務める市毛良枝さんが基調講演を行う。

 パネルディスカッションではタレントのなすびさん、田辺市熊野ツーリズムビューローの多田稔子会長、ロングトレイルハイカーの土屋智哉さんらが出席、歩く旅の楽しみ方やみちのく潮風トレイルの活用の仕方などについて意見を述べる。

 また、全線開通を記念して、関係するトレイル沿線上の自治体が中心となって、一般参加者を対象としたウオークイベントも行われる。

 南三陸ホテル観洋(宮城県南三陸町)女将の阿部憲子さんは「4県が(歩道で)つながるのはとてもいいこと。歩いて景色の素晴らしさに触れ、東北に住む人々との交流を深めてもらいたい。そして津波の痕跡を見て、改めて震災のことを考えてもらうきっかけになれば」と話し、観光復興への期待をにじませた。

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