【withコロナ時代の旅館経営への提言】本当の危機は2年後から 元跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授 オフィス・アトランダム主宰  松坂 健氏


松坂氏

 初めはぎくしゃくし、どうなることかと思っていたGo Toキャンペーン。それなりの成果を出しつつ、この9月15日には東京都発着の旅行プランの予約も開始、都民の県外ツアーも10月1日解禁ということで、まずは喜ばしい。

 しかし、売れているのは宿泊単価で3~5万といった高級カテゴリーの旅館ばかり、といううわさ話も聞こえてくる。

 実際に、このキャンペーンでいちばん集客したいのは、規模も小さく、それこそ家族経営で、資金繰りが苦しい宿なのに、そちらに予約が回っていかないというのが残念だ。

 といっても、買う側の立場になれば、同じ35%引きになるなら、3万円の宿の35%引きの方が、1万円のお宿よりもお得用の感じがするのはやむを得まい。いつもテレビや雑誌で見るばかりで手が出ない旅館さんが35%引きなら、3人で行けば1人分ただになるじゃないと需要が発生するのは当然だと思う。

 何か、中小大衆価格のお宿にもメリットが出る方法はなかったものかと思うことしきりだ。

 しかし、今、このキャンペーンで予約が殺到している旅館さんも、このお祭り騒ぎが終わった後のことを今から考えておかないといけない。

 というのも、本当のコロナ禍の余波は、今年の末、そして来年末3月の企業決算期に向けて、雇用調整、パート・アルバイトの解雇、派遣の解約、正社員だってボーナス削減、給与ダウンになるところが増えそうだ。

 つまり、日本の中間層の貧乏化は避けられないと、僕は思う。

 今、Go Toで出ている需要は長い間の自粛、閉じこもり生活のフラストレーション解消で出ている発作的ブルジョワ的消費と思っていた方がいい。意地悪な予想で申し訳ないが、一度割引価格で買えたものは、元の本来の上代で買ってくれないものだ。たとえ、割引分が政府の負担だったんだよ、と説明しても、お客には関係ない。元の価格で出せば必ず「前はいくらだったのに~」と言われるがオチで、やはりリピートしてこない。そして、必ず割引価格のままやるぞ、という店が出てくる。そうしたら何年もかけて築いてきた高品質高価格の付加価値体系があっさりくつがえされてしまう。これはスーパーや百貨店の業界で延々繰り返されてきた歴史だ。

 そして、最後に手短に。今は緊急対策で借りたお金の返済猶予、または政府系金融の1年間無利子据え置きという援助があっても、借金には違いないので、2022年には返済が始まる。コロナ前の水準の売り上げでかつかつの資金繰りなのに、それが2年後できますか、という話だ。

 キャンペーンも政府による優遇措置も、その先が実は怖い。本当のコロナ危機は今じゃない。2021年末から2022年にかけて起きると、今から覚悟してものを考えていてほしい。


松坂氏

 
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