【withコロナ時代の旅館経営への提言】「新リーダーシップ力」 浜松・浜名湖ツーリズムビューロー 事業本部長  前田 忍氏


前田氏

 デジタル時代の現代において、リアルを提供する宿泊業は、人を介してのサービスが提供される労働集約産業の代表的存在。従前より効率性を狙いとし、食事のビュッフェ形式も増え、それをブランディング要素とする施設も増えてきた。一方で、直近のコロナ禍においては、不特定多数の人と接しない3密対策が必要とされ、ビュッフェを中心とする食の提供について多くの施設が対策を講じる必要が出てきた。

 従前のお客さまが施設を選ぶ基準は、口コミ評価などを通じて、接客や食などの「ソフト」に関するものが多かったが、現在はコロナ対策という受け入れ環境整備の「ハード」がプラスされることになった。つまり、消費者の施設選択の基準が変わったということである。

 しかしながらハードに特化した差別化では多くの企業との同質化競争になるため、従前とは違うレベルのソフトにおける差別化戦略が必要となり、ウィズコロナ時代の新サービス構築に向け、経営者は今まで以上にリーダーシップを発揮しスタッフを導く必要が出てくる。そのためには、この転換期に新たな経営理念や方針の策定が必要になるはずだ。ウィズコロナの経営の羅針盤をスタッフに明示し、意識と行動のベクトルを改めて統一する必要があると私は考える。

 私は破綻したホテルの再生をした経験から、厳しい経営環境からの脱却には、並大抵の努力でなし得ないことを知っている。企業としての経営基盤が崩れた中で組織改革や事業収益の最大化を行い続ける。足元の観光業はそれに近い状況で、クライシスマネジメントとして経営者のリーダーシップが問われる時代になった。

 経営者は社長業として多くの経営判断をする中、コロナ禍において別次元の意思決定をしなければいけない。また労働集約産業として多くのスタッフを新たな方針のもと導かなければいけない。ソフトの競争の中で、新たな教育の仕組みも必要になってくるであろう。つまり「ウィズコロナ時代の人づくり」。今まで以上に変化するお客さまニーズに対応する「変化対応業」として、サービスの本質を改めて考えなければいけない時期なのである。

 今後は今まで以上に高い質のレベニューマネジメントを行い収益の最大化を図らなければいけない。現在のお客さまの期待値を超えるサービスは何かをトップが考え抜きながら、経営理念や方針の転換と、人づくりのソフト戦略に注力する。自分たちの強みと弱みを理解し、ウィズコロナの新たな戦略を策定する。この世の中にブルーオーシャンなどない。リーダーとしての本質的な力が試される昨今、新たな人づくりに注力する経営者が増えることを願っている。

前田氏

 
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