忙しい夏の季節が過ぎ去り、一段落中ではあろうが、今度はすぐさま行楽シーズンまでの閑散期対策に追われるという施設も多いのではなかろうか。そこで、今号では秋の集客対策について考えてみたいと思う。
以前にも述べたが、閑散期とはいえ、価格を下げるだけの集客方法には限界がある。お勧めしたいのは秋の食材を用いた商品の造成である。もちろん、秋の食材を用いた商品造成の経験は誰でもあるであろうが、ここでは戦略的な価格の値付けも含めて考えてみたい。
秋は海も山も食材が豊富になるので、秋の食材を用いた商品自体を作ることはさほど難しくはないであろう。ポイントは値付けである。原則として、基本商品より高い設定にすることをお勧めする。
チェーンの喫茶店やレストランに行き、季節限定メニューを見れば分かると思うが、基本的に通常のコーヒーやレギュラーメニューより高くなっているはずである。かつ、レギュラーメニューからプラスされているものの、手が届きやすい価格設定にされているはずである。つまり、季節限定メニューで集客しつつも客単価を上げる仕掛けがなされているのである。ぜひ、宿泊業界もこの手法を取り入れてほしいと思う。
ただし、この基本料金より高く値付けする際に注意したい点として、売価の原価積み上げ方式がある。原価から算出して粗利益が獲得できるように売価に反映させて販売しようという考え方である。これ自体は間違った考え方ではないが、売価設定には、マーケットイン的な思考がないと結果的に売れず、作成した意味がない商品となってしまう。したがって、まずは思わずお客さまがつられて買ってしまう「売れる価格設定」をすることが大切である。
例えば、ある旅館では1人原価千円かかる食材に対して、+3千円の値付けをするのではなく、あえて1人+1500円で設定し、お買い得感を演出し集客に努めていた。今まで、集客対策として1人2千円割引して販売していたのを考えれば、旅館全体としてそちらの方がプラスになるとの判断である。
どれが合っているとか間違っているというわけではないが、せっかく食材豊富な秋であるので、単価を上げつつ集客するという方法にもチャレンジしてみてほしい。
(アビリティコンサルタント・プライムコンセプト取締役 内藤英賢)