【VOICE】都市と農山漁村を結ぶ農泊 農林水産省農村振興局都市農村交流課 課長補佐 平林秀紀 氏


農林水産省農村振興局都市農村交流課 課長補佐 平林秀紀 氏

農泊は地域課題解決のゲートウェイ

 わが国の農山漁村では都市部よりも速いスピードで人口減少・高齢化が進んでおり、人手不足により食料生産活動の継続が危ぶまれるとともに、地域の清掃やお祭りといった集落活動の停滞、買い物や医療等へのアクセスといった生活環境の悪化の懸念が高まっています。農山漁村を適切に維持する上で、最も大事なことは地域に人が住み続けることだと考えます。

 そのためには何をすればよいか。取り組みの一つとして農林水産省が進めているものに「農泊」があります。農山漁村に宿泊・滞在し、滞在中に地域の新鮮な食材を使った郷土料理や家庭料理、農家の皆さんとの農作業体験だけでなく、緑豊かな里山の景観や自然の中でのアクティビティなどを楽しむ農泊の取り組みは、これまでの旅行とは一味違う農山漁村での暮らしや自然を体験できるなど、旅行者だけでなく、農山漁村に暮らす人々にとっても、地域内での消費額が増えるとともに、宿泊施設等での雇用が生まれるなどのメリットがあります。

 さらには、地域住民や旅行者が交流することで地域活性化のためのさまざまなアイデアや新たなビジネスが生まれ、また人が集うといった好循環が期待されることから、農泊は農山漁村地域への移住・定住も見据えた関係人口の創出や地域課題解決のゲートウェイになると考えます。

 一方で、人が集うための好循環を作り出すために取り組むべきことは多くあります。農山漁村地域を旅行先として選択してもらうためには、人を惹(ひ)きつける魅力が必要であり、コロナ禍のニーズを捉えた一棟貸しや古民家といった宿泊施設の整備のほか、それぞれの地域の特色を活かした食事メニューや体験プログラム等の観光コンテンツの磨き上げなどに農林水産省としても支援しているところです。

 農泊の取り組みを進める中、新型コロナウイルスの発生と感染拡大により農泊地域の宿泊者数は令和元年度の589万人泊から令和2年度の391万人泊へと大きく減少しましたが、関係者一丸となった農泊のリスタートに向け、令和7年度までに700万人泊とする農泊の新たな目標を現在策定中の観光立国推進基本計画に盛り込むこととしています。そして、新たな目標の達成に向けて、平成29年に創設した農泊推進対策の今後の方向性について有識者による検討を昨年12月に開始し、本年5月をめどに新たな農泊推進の実行計画としてとりまとめたいと考えています。

 都市と農山漁村を結ぶ、新たな「農泊」に今後ともご注目ください。

 
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