【VOICE】瀬戸内のサスティナブル小豆島 小豆島観光戦略会議 本部長 有本裕幸 氏


有本氏

撮りたい景色がそこにある

 瀬戸内に浮かぶ小豆島には五つの港が開かれ、昔より島の物流を担う船はこの島に活力と経済発展をもたらしてきた。幕府に献上していた塩、大坂城築城などに運ばれた石、400年以上の歴史を持つ醤油(しょうゆ)、素麺(そうめん)、戦後伸びた佃煮、そして日本初の発祥の地として脚光を浴びるオリーブ。しかし、近年はコロナの影響とともに過疎化が深刻な地域である。島には土庄町、小豆島町の二つの町があり、合わせても人口は約2万6千名。労働の担い手は高齢化が進んでいる全国の田舎が抱えている問題と一緒だ。

 この小豆島が観光地として全国に知られたきっかけは、1954年公開映画「二十四の瞳」である。岬に赴任したきた一人の女性教師。分校に通う1年生12人の子供たちが成長していく過程で自分の力では抗うことのできない戦争や貧困などに教師は生徒と一緒になって向き合う。女性教師と生徒との深い絆が色濃く描かれている不朽の名作である。誰もが小説を読み、映画を見て小豆島を訪れ、島が活気づいた時期もあったと聞く。にぎわいある一時代が終わるとその地域は終焉(しゅうえん)を迎えるのか? いや違う、地方にはまだまだ未発掘の魅力が多数あり、それらを可視化できていないのが現状である。「二十四の瞳」も深掘りすると反戦だけではなく、平等、差別、平和などSDGsにつながる新しいフックがある。小豆島には素晴らしい文化、歴史、産業が存在しており、近年、映画、ドラマ、CMなど映像ロケが後を絶たない。映画を作るには昔から「一筋二抜け三芝居(動作)」といわれる。本の出来はさることながら次に重要な抜け(風景)の素晴らしさがこの小豆島に在る。コストがかかっても、小豆島で撮影したいと言ってもらえるのは、この島の最大のポテンシャルに違いない。

 昨年、今年と小豆島町は持続可能な観光地として、グリーン・デスティネーションズ認証「世界のトップ100」に選ばれた。昔より島の先人たちが続けてきたさまざまな取り組みが一つ一つ編み込まれたひもを解くようにクローズアップされ、日本そして世界の人に知ってもらえることになり、訪れたい地域として認められ始めた。

 映画「二十四の瞳」主演女優の高峰秀子は、夫と一緒に「一本のクギを讃える会」を作り、映画は監督、俳優だけではなく、照明、小道具、大道具、衣装、配膳係など陽の当たらない人たち(一本のクギ)のご苦労があってのことだと言った。まさに小豆島で極々当たり前に生きてきた人たちにこれからはスポットライトが当たり、評価されることが観光地小豆島として生き残っていく道であると私は思う。

有本氏

 

 
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