
山形県観光物産協会専務理事兼DMO推進室長 安孫子義浩氏
コロナ禍を経て
コロナ禍を経て、団体旅行から個人旅行へのシフトは加速度的に進んでいます。立ち寄り施設の経営者の話によると、「団体旅行は半分に満たないが、それを個人旅行の増加でカバーしている。トータルでコロナ前の8割から9割程度か」。
このような中、個人旅行者のハートをつかむには、受け入れ側も変わらなければなりません。千差万別の旅行者の要望に対応し、満足してもらうためには、たくさんの引き出しが必要です。その中でも重要と考えられるのが、一つは、旅中の対応として、宿、立ち寄り施設等のコンシェルジュ機能を充実させること。もう一つは、付加価値の創造、満足して気持ちよくお金を支払ってもらう仕組みづくり。ハードルの高さを感じていますが、その仕組みの一環として、当協会では昨年からアドベンチャートラベル(AT)に取り組んでいます。先般、北海道で東洋初のアドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)が開催されましたが、AT初年度となる昨年度は、北海道の先生を含め、多くのAT関係者に教えをいただき取り組んだものの、ダメ出しの連続。「山形には素材はたくさんあるが、高付加価値インバウンドのニーズに沿うような、彼らが満足するような受け入れ体制ができていない」とのご指摘。素材の磨きあげは、地域あげてより一層努力しなければなりませんが、一番の問題はガイド機能の不足。往々にして日本のガイドは真面目すぎ、ティーチャーになりすぎると言われますが、基礎的な知識は踏まえた上で、刻々と変わる旅行者のニーズを捉え、旅行者に楽しんでもらい、エンターテインメント的に応対できる機能が無いと満足度は高まらないとのご指摘が…。エリアガイドにしても、旅行期間をずっと通しで付き添うスルーガイドにしても同様です。
これら貴重なアドバイスを踏まえ、今年度は経験と実績のあるスルーガイド兼コーディネーターに教えをいただき、根底から旅行商品の見直しを行っています。いくら素晴らしい素材でも、一流のシェフなしでは感動するような料理は生まれない。さらにそのシェフから直接料理の説明を受ければ、おいしさは何倍にも膨らむ。観光分野も同じではないかと気付かされました。
こういったプロのガイドの確保は、一朝一夕ではできないことは承知の上で、高付加価値な旅行を提供する上では避けて通れない道。また、国内外を問わず個人や小グループでの旅行が主流になりつつある中で、これらガイドの視点を踏まえ、観光素材をもう一度磨き直すことも重要ではないかと感じています。観光コンテンツの磨き直し、エリアガイドの育成、スルーガイド機能の確保、やることはまだまだあります。
山形がより多くの人に選ばれる観光地になるよう、オール山形で頑張ります。
山形県観光物産協会専務理事兼DMO推進室長 安孫子義浩氏