【VOICE】アフターコロナの宿づくりへのヒント 立教大学 観光学部教授 東 徹氏

  • 2022年4月13日

東教授

「泊まる意味」を創り出す多様な業種とのコラボ

 先般、読売新聞西部本社(福岡)発行の夕刊に、JR九州ステーションホテル小倉に地図をテーマにした客室ができたという記事が掲載された。地図のゼンリンが客室の「命名権」を取得し、地図にこだわった演出を施した「地図さんぽの部屋」を来年2月まで提供するという。

 この試みは、コロナ禍で需要減に苦しむホテルが命名権の販売という新たな収入源を求めたという以上の意味がある。ホテルにとっては、個性的な客室によって「名指しで選ばれる価値」を訴求し、差別化による客室単価の向上を図ることが可能となり、企業にとっては、自社ブランドの世界観をホテルの客室空間を通じて表現し、訴求できるという意味で、「新たなブランド・コミュニケーション・ツール」として活用できる。

 さらに顧客にとっては、単に「泊まる場」というだけでなく、ホテルでの「時間消費を楽しむ場」として客室の便益を享受することができる。

 個性的なホテル空間演出という点ではディズニーの世界観を表現したホテルがあるし、客室単位では、鉄道ファンの心をくすぐる空間演出と体験機会を提供する客室の例がある。全館を特定の世界観で演出するのに比べれば、ルーム・ミックス(客室のバリエーション)の一部として客室単位で期間を限って展開するのであればリスクも少ない。

 今後は、自社ブランドの世界観を訴求する場として客室を活用する有効性に気づいた企業と宿泊施設とのコラボが進む可能性は十分に期待できる。

 より本格的なものではアウトドア用品の企業が演出したキャンプ場、ホテル・旅館でも、アパレルや化粧品ブランドの世界観で演出された客室やサービス、映画や小説の世界を表現した客室空間や体験機会、さらには食品、芸能、スポーツなど多様な業種とのコラボが実現する可能性があるように思われる。

 今後、個人がネットで選ぶ傾向が進むと、一方で価格競争に生き残れるコスト構造と稼働率を高める販売力が求められ、他方では自らの特徴を打ち出し「名指しで選ばれる価値のある宿」を目指すことが求められる。

 個性的な客室を多様な業種とコラボすることによって創り出すことは、「奇策」の感はあるものの、宿での時間消費を楽しみ経験価値を高めるというコンセプトを基に、宿独自の魅力、ウリ(USP)を獲得し、「訪れる理由、泊まる意味」を創り出すことで、「名指しで選ばれる価値のある宿」を目指す取り組みとして、アフターコロナの宿づくりに向けた重要なヒントと可能性とを示しているように思われる。

東教授

     
 
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