【VOICE】コロナ禍の観光  船清 女将 伊東陽子氏


伊東女将

おもてなしとホスピタリティ

 国内初のクラスターが当社の屋形船で起きてしまったことは、全国的に周知のこととなってしまいました。当時はまだマスクもしていない時で、感染がどのような経路で拡大するのかも解明されていない時でもありました。

 その不安からでしょうか、憶測で換気が悪いなどと連日報道されてしまいました。そのイメージがいまだに払拭(ふっしょく)されておらず、メディア報道の怖さを痛感いたしました。

 イメージ回復のために、4分程度で船内換気できる検証動画を作成。感染対策を兼ね船内ではお客さまごとの間仕切りを整備し、9部屋の半個室に改装しました。プレミアム屋形船の写真をホームページ上にアップしたりもしました。換気も良く、感染対策もしっかりできていることをお客さまにご理解いただけたことが、ご予約へとつながっております。

 コロナ禍によって私たちの生活様式が変化して、以前のような生活には戻らないと言われております。また、日本では少子高齢化が進行し、人口減少が起きています。

 今後、社会全体が縮小を余儀なくされた時には、観光産業も淘汰されていくと考えられます。日本は「観光立国」を宣言して以降、インバウンド誘致に成功し、観光が日本のリーディング産業となり、日本経済を支えるまでに発展しました。現在のパンデミックの状況からインバウンドの復活にはまだ時間が掛かることが予想されますので、今は復活期に向けた準備期間と捉えております。

 数年でVRバーチャル(仮想現実)が商品化されるとか聞き及びますが、本当にこのようなことが現実となる日が来るのでしょうか。自身に置き換えてみた時、VRで世界中とメタバース(他の人と交流する空間)がどのように見えるのか、想像することができませんでした。やはり、リアルでの体験の方が記憶に残るような気がしております。

 IT化が進んでも、人の心を動かせるのは人だけです。特に自然、文化遺産などの観光資源から得る感動、喜びは、人との出会いやおもてなし、ホスピタリティを持った接客によるものです。

 コロナ禍の殺伐とした今だからこそ、お客さまに寄り添ったおもてなしとホスピタリティが求められています。それは、「疲弊した心が癒やされる」からです。日本の伝統文化である屋形船を、おもてなしとホスピタリティの心をもって、守ってまいりたいと思っております。

伊東女将

 

 
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