【2023新春 宿泊4団体トップインタビュー】日本旅館協会 会長 大西雅之氏


日本旅館協会 会長 大西雅之氏

コロナ禍後も業界への支援必須 デジタル対応、食品ロスの解消を

 ――2022年の宿泊業界を振り返ると。

 ほぼ3年に及ぶコロナ禍で、観光産業は大きなダメージを受けた。長期間の休業によるスタッフのモチベーションの低下、経営の悪化による過剰な債務、そして不安定な業種イメージの拡散と人材の流出など、まさにわれわれ業界の信用は大きく失墜した。

 しかし、2022年はこの長いトンネルの先にやっと希望の光が見えてきた年といえる。転機は、第7波がピークを迎えた8月下旬ごろで、「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」等の言葉はほとんど出てこず、経済を動かしながら感染対策を進めていこうという流れとなり、先般、ついに厚生労働省から「屋外でのマスク着用は原則不要」と正式に発表された。

 こういった動きの中で、ようやくわれわれの業界が動き始めたのが、この10月。ご承知の通り、念願の全国旅行支援が開始され、外国人観光客の受け入れも、パッケージツアーに限ることなく再開された。まだまだ本格的な回復には程遠い状況だが、復活への第一歩を踏み出せたと実感している。

 一方で、「コロナがあったからこそ」大きく前進したこともある。ご存じの通り、旅館業法の改正案が10月に閣議決定された。これまでは伝染病等に感染していることが明らかでない限り、われわれには宿泊を拒否する権利がなかった。今回の改正案では、特定感染症が国内で発生している期間に限り、旅館業の営業者は、新型コロナウイルスを含む特定感染症に罹患(りかん)している疑いがある場合に、「かかっていないこと」を証明してもらうよう、求めることができるようになる。

 加えて、何の症状もない方に対して、検温などへの協力要請を行うことができるということも、旅館業法第5条にしっかりと記載される。そしてこれらに応じていただけなかったときには、宿泊を拒否することができるようになる。

 これから先、このような事態がいつ起こるか、もはや誰にも予想できない。いくつかの問題点は残っているものの、お宿や従業員を守るための制度が確立されるのは、われわれにとって大変意味のあることだと思う。残念ながら、本法案は昨年の臨時国会では成立に至らず継続審議の扱いとなったが、次期国会における早期成立を強く願っている。

 

 ――2022年の協会事業は。

 6月に会長に就任してからは、陳情、要望活動に力を入れ、雇用調整助成金特例措置の期間延長や全国旅行支援の早期開始、水際対策の撤廃など、国会議員の先生方をはじめ多くの関係機関に訴え続けてきた。

 8月末に開催した金融懇談会では、政府系金融機関や関係省庁に対して、重層的な金融支援や資本制劣後ローンのさらなる活用に関する要望を行い、定期的な開催も確約いただいた。

 度重なる災害対策や世界的な観光競争の中で、われわれ宿泊業界の政治との関わりはますます重要度を増している。政府や国にとって「無視できない」宿泊業界になるべく、積極的に活動する。

  各委員会についても、発足してから半年ほどだが、既にそれぞれ3~4回の会議を開催し、活発な議論を重ねてきた。コロナ対応の緊急的な対策を担う新型コロナウイルス対策本部と、少し長いスパンで組織課題に向き合う4委員会にしっかりと役割を担っていただき、協力しながら事業を進めているところだ。

 特に、今年度新設した未来ビジョン委員会は、「夢のある宿泊業界になるための目標とロードマップ」をこの2年間で作り上げてほしいとお願いしている。

 

 ――2023年の宿泊業界の展望を。

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